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信州戸隠紀行 2023秋~⑤ 太々神楽と神秘を映す鏡池

これまで、中社 → 九頭龍社 → 奥社 → 宝光社 と四社を参拝しました。残るは火之御子社ひのみこしゃです。

”神さまが中社から宝光社へ行き来する道”との言い伝えがある、戸隠古道の神道かんみち、名前も雰囲気もとてもすてきな山道です。地面に敷き詰められた落ち葉から、まるで茶香炉を焚いているようなとても香ばしい匂いがしてきました。ほっと安らぐ香りです。

神道を歩く

歩きだしてしばらくすると、人の顔ほどの大きさのベルが道端に設置されていることに気付きました。キラキラしていてまだ新しそうな手動式のベルです。アート作品かと思ったのですが、歩いていくとまた同じものがあり、

これは、ひょっとして・・・熊対策のベルでは?!

前回はなかったものが設置されたということは、それなりに熊さんが出現したということですね! 一気に体に緊張が走りました。そしてもちろん、鳴らしました。笑

神道の途中
四方八方に伸びる枝

このあたりは、伏拝所ふしおがみしょと言われる場所です。その昔、奥社まで参詣できない老人や女性などが、この場所から戸隠山や奥社を遠望し”伏し拝んだ”そうですが、いまは木々が生い茂っているのでそこまで見通すことはできません。

宝光社から神道を歩いて15分ほど、案内にしたがって右方向へ入っていくと火之御子社へ到着です。

◇ ◇ ◇

火之御子社ひのみこしゃ

社殿よりも先にまず目に入ってくる大きな木は、樹齢およそ500年の夫婦杉。戸隠神社には巨木あり、ですね。

夫婦杉


あれ以降、柄杓は姿を消しました


社殿

創建は1098年、神仏習合時代においてもこのお社だけは、現代まで一貫して『神社』として在り、神職によって戸隠神社太々神楽をまもり伝えてきました。

御祭神は『天岩戸伝説』で天照大神を誘い出すために艶やかな舞を踊った女神、天鈿女命あめの うずめの みこと。この踊りが、神楽の始まりといわれています。

〇 戸隠神社太々神楽だいだいかぐらとは?


戸隠神社はその御由緒ゆえか神楽と縁が深く、『天岩戸開き』にちなんだ舞など10種類の神楽が伝えられており、これらを太々神楽と呼んでいます。(長野県指定無形民俗文化財)

もう10年以上前になりますが、今回のように泊りで訪れたとき、偶然にも翌日が太々神楽が奏上される日でした。宿の女将からそのことを伺い、それはぜひ見たいと、中社へ昇殿して拝観することができたのです。

お祭りではなく、神事としての神楽を見るのは初めてで、4月早朝の寒さと慣れない正座ですこし緊張しましたが、始まるとすぐにその世界にひきこまれました。

可愛いらしい少女たちの巫女舞、青年たちの剣舞、そしてやはり一番目が釘付けになったのは『岩戸開きの舞』

岩戸に見立てた(岩の絵が描かれている)置物の前で、神話のあの有名なシーンが再現され、笛と太鼓の音で盛り上がりが最高潮となるなか、最後は天手力雄によって岩が開けられる・・・

あの神楽をもう一度みたいなぁと、なつかしく思いながら火之御子社をお参りしました。

アメノウズメさん

ところで、境内でまるでアメノウズメのごとく歌って踊る、ピンクパンツのご婦人に遭遇しました。芸能の神さまの御神気の影響でしょうか?とても楽しそうです、そして賑やかです。まるで嵐のように来て去っていきました。

西行の逸話がのこる『西行桜』も
境内にあります

さて、これで五社すべてを巡ることができました。火之御子社には社務所がないため、宝光社へ戻って御朱印をいただきます。(そこで再びピンクパンツのご婦人に再会笑)

御朱印拝受のさいに五社参拝した旨を伝えると、『五社参拝記念しおり』が授与されます。布張りのしっかりとした栞なので、ぜひいただきましょう。

達成感に包まれながらしばらく宝光社のベンチで休憩。
次に向かうのは、今回どうしても行きたかった鏡池。こちらは少し距離があるので車で移動します。


下りの眺めも美しい

◇ ◇ ◇


鏡池は、左上


前回鏡池を訪れたのは、おそらく14年前。地元の方からおすすめの場所として教えていただいたので行ってみると、そこはとても神秘的で美しい場所でした。あの風景にまた会いたい。

今では、紅葉シーズンの10月は一方通行が実施されるほど人気の鏡池ですが、この日(11月6日)は既に紅葉も終わりに近く、平日ということもあって規制なく向かうことができました。

宝光社から10分ほどの道中、白樺とこれから散ろうとする色付いた葉の、白と黄の世界をしばらく窓から眺めていると、どこか別の国へ来ているような感覚になりました。

駐車場から池へ向かって歩き始めるとすぐに、戸隠山の雄々しい姿がはっきりと見えました。そうだった、こういう風景だった。

シーズン過ぎの鏡池は人もまばらで、ゆったりと散策できます。午後3時過ぎ、少し涼しい風が吹くなか、池の周りを歩いてお気に入りの眺めを探しました。

池にすこしせり出すように作られたデッキを見つけたので、そこへ立ってみます。

あ、ここだ。
人工物が一切視界に入らない、この場所。
このデッキは、ここから写真とるといいよ、ということだったのね。


晩秋の鏡池

静寂、神秘、この美しさにただ圧倒されました。
今日一日のおわりに、この風景に出会えてよかった。
戸隠へ来て、よかった。

つづく


次回は(ようやく)最終回
泊まって良かった宿坊を紹介します。お楽しみに!



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