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ポケットへの侵入者処理に関するクルトワの回答

 もう今週末でW杯が終わりますね…。毎晩寝る間も惜しんで見てきた数々の試合(実は結構寝落ちしていることは秘密)、残すところあと2試合となりました。

 ここらでnoteに何かをまとめておきたいと思い書きはじめます。表題は「ポケットへの侵入者処理に関するクルトワの回答」です。”ポケット”とは「ゴール正面を除いたペナルティエリア内の左右のエリア」のこと(羊さんとシオンコーチさんに教えていただきました。ありがとうございます)。以下の図の通り。

 今日書きたいのはそのポケットへ侵入してくる相手に対してクルトワがどんな対応をしたのか、ということです。評価対象は準々決勝ブラジル戦の後半。ブラジルはこのゲームの後半、特に右サイドから(D・コスタが)ペナルティエリアへ侵入して決定機をいくつか作っていました。

 ニアのポケットへ侵入してきた場合、相手が次に選択するプレーとして考えられるのは①シュート②ゴールエリアを横断するクロス③マイナスクロス、の3つだと思います。このどれに対してもクルトワは一貫した対応を見せました。

 それは、なるべく高めに立ち位置を設定し(ゴールポストから離れて)、シュートに対してもゴールエリアを横断するクロスに対しても対応できるようにすることです。

 高めの位置を取るメリットは「シュートコースを削れる」「それに伴って相手にプレッシャーをかけられる」こと。
一方でデメリットは「背中でゴールが見えてないとポジションミスを起こす」「頭上のコースが空く」ことです。
ですが、クルトワの場合、199cmの長身と手足の長さがあるので、簡単に頭上のコースは防げます。たとえ一歩前に立ち位置を設定したとしても。そして左右のズレもほとんどありません。というかズレがあったとしてもその恵まれた身体でカバーできます。
なので、クルトワのような長身の場合、高い位置に立ち位置を設定するデメリットは抑えられる。反応速度と上手な身体の使い方を持ち合わせた長身GKははっきり言ってチートです。

 それでは実際のプレーを見てみましょう。6つのシーンをそれぞれ観察していきます(ここから動画がいくつか登場します。通信料を気にされる方はWi-Fi環境のあるところでお読みください)。

①ゴールに向かって斜めに侵入してきた相手に「シュートを打たせる」プレーをしています。ブレイクアウェイ(身体を横に倒しながらボールへ向かって滑ってキャッチするプレー)ではなくブロック(両腕を広げてシュートを身体のどこかに当てるプレー)を選択しました。現代サッカーではよく見るGKの振る舞いです(川島もこれが得意です)。


②侵入者のD・コスタは「ゴールエリアを横断するパス」を選択しました。ここでもクルトワはゴールポストから離れてそこから一歩前に立ち位置を設定。なので楽々そのパスを遮断しました。


③一見②のようなプレーですが、ゴール前に入ってくる味方がいないD・コスタはシュートを選択しました。ここでも同様に高めの立ち位置をキープしています。



④結果的にボールにプレーすることはありませんでしたが、ここでも「前への意識」が垣間見られます。D・コスタのワンタッチ後にクルトワも一歩前に移動しています。



⑤ここでようやくマイナスのクロスがやってきます。この時、クルトワはどうしたのか。下がらずに半円を描いて移動し、前で勝負しました。



⑥最後に、試合を決定づけたこのセーブ。一貫して「前で勝負」してきたクルトワがポジションを下げました(ネイマールにボールが渡った瞬間に)。相手が横からボールを受けてダイレクトでシュートを打ってくるなら、カーブをかけて巻いてくるシュートの軌道を予測します(これはもう自動的に判断しています)。そしてその軌道だと曲げて落とすシュートも考慮に入れないといけないので、普通は下がってポジションを取り、落ちてきたボールにアタックします。
しかしクルトワは最初の立ち位置が高いので、下がったとしてもゴールライン際までは行かず、2、3歩前でのポジションになります。そして曲がるシュートの最高到達点でボールをはじきだします。これはクルトワだからこそできる芸当。つまり「自分がどの辺まで届くのか」自分でちゃんと理解しているのです。


・ひとこと
 サイドからエリア内に入ってくる相手への対応に関するクルトワの回答は「ゴールポストから離れてポジションをとり、シュートとともにゴールエリアを横断するクロスの遮断を試みる」でした。いかがでしょう。試合を通して一貫したプレーによってゴールを防いだクルトワ、準決勝ではフランスを前に惜しくも破れてしまったが、3位決定戦も頑張ってほしいです。
(個人的にはもうそろそろミニョレが見たいですが)

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