8月21日「みんなで考えるバーチャル業界」のイベントレポート

バナー (3)

8月21日に開催した「みんなで考えるバーチャル業界」のイベントレポートをお届けします。1回目は「VTuber × テレビ」をテーマにTV局で実際にVTuber事業に携わっている方々に、運営の際の注意事項やVTuber活用のメリット、今後の展開などをお話ししていただきました。

冒頭はインサイド副編集長 矢尾氏と「どこでもVTuber」でUnityちゃんとなった私がVTuber市場をカオスマップ等を利用して説明し始まりました。

画像2


テレビ東京 「四月一日さん家の」プロデューサー 五箇公貴氏、「バーチャルアナウンサー相内ユウカ」プロデューサー 赤木央哉氏画像3

テレビ東京は報道キャスターのバーチャル化「相内ユウカ」や活躍しているVTuberをキャスティングしてのドラマ化の「四月一日さん家の」や男性VTuber「七瀬タク」など多数のVTuber事業を運営している。

<報道での活用>
・報道キャスターの相内優香としては報道キャスターとしての振る舞いがありできないことも、デジタルアナウンサーの相内ユウカになるとその制約がなくなり、年上の識者の方にあだ名で呼んで突撃インタビューするなど、同じ人物が複数の一面を持って活動できる。

・また、運用としても実際のアナウンサーでは番宣一つとる場合に必要なスタジオ・照明・衣装・メイク・カメラマンなどが、VTuberでは不要なため追加の撮影が簡単にでき、立ち上がってしまえば実は運用コストが低い。

・相内ユウカはアナウンサーという特性もあり、他のVTuberのようにIPとしてマネタイズしていくのではなく、テレビ東京の広報キャラクターとして運用を行なっていく。
・また、前回の選挙では池上彰氏をバーチャル化した。その際は地方ロケに池上彰氏が同行出来ない際も、スタッフだけでロケを行い、その後の編集でバーチャル池上彰氏を加えて解説するなど新たな活用ができ始めている。

<VTuberドラマ>
・「四月一日さん家の」はVTuberドラマを作るにあたって予算、技術的な制約からシチュエーションコメディを選択して制作が始まった。
・制作にあたっては、TV局のこれまでの作り方と、VTuberの作り方や技術的制約のギャップが大きく苦難の連続であったが、制作を進めるにあたってテレビの制作ノウハウはVTuberドラマにも活用できることは多く、また、技術スタッフも皆新たな取り組みに対してのキャッチアップが早く最終的にはチーム一丸となって苦難を乗り越える土壌が生成された。

日本テレビ Vtuber事業プロデューサー 西口昇吾氏画像4

日本テレビでは情報番組やバラエティ番組でVTuberを起用したり、「THE MUSIC DAY 時代」や「歌唱王〜歌唱力日本一決定戦〜」ではVTuberが出演する地上波番組連動のネット番組の制作などを行なっている。また、グループ会社のタツノコプロではアニメ「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」のキャラクターのボヤッキーとカミナリアイのVTuber化も行っている。

・日本テレビでは映画「レディ・プレイヤー1」のオアシスのように、様々な制約から解放されて、誰もがコンプレックスなく理想の姿で自由に生活できるバーチャル空間で、バーチャルタレントが活躍するバーチャルエンターテインメントが主流になる時代がくる未来を想定して社内にノウハウの蓄積を行なっている。

・市場としてはニッチ、サブカル(アニメ、ボカロなど)、マス(アイドルなど)とカテゴライズする場合は現状VTuberはニッチ。VTuberがサブカルに昇華するためには、文化として根付くための「継続性」と、さらなる「ファン数の増加」が必要。今後、VTuberが現状のニッチから初音ミクのようなサブカル、そしてマスになっていく過程で、市民権を獲得していくためには、一般層にもリーチできるテレビの力は有効。

・ テレビがVTuberを起用する方法を以下の4パターンで紹介。
1 既存の番組でニュースとして紹介 → VTuber自体の情報の新規性は薄れてきている。VRライブやYouTube動画以外での新たらしい取り組みであればニュースになる。
2 既存の番組にタレントとして出演 → VTuberという物珍しさがなくなった時にVTuberのタレント力が既存のタレントと勝負できるものなのかは現状疑問。VTuberのタレント力の向上と人間にはできないVTuberならではの戦い方見つけるべき。
3 VTuberをメインに据えた新規番組 → BS日テレの「月イチのてぇてぇTV」や、本日テーマとして上がる「四月一日さん家の」や「サイキ道」など新コンテンツが出始めている。
4 地上波番組連動のネット番組 → YouTube Live、Twitter、Facebook、ニコニコ生放送などで地上波連動のネット番組を配信し、そこでVTuberを起用。テレビではリーチし難いM1層を中心にSNSで番組のリンクが拡散され、番組の認知が広がる。「THE MUSIC DAY 時代」ではネット番組の視聴率と地上波本編のM1層の視聴率が大幅に向上した。

・今後VTuberがテレビに出演する際の障壁の一つとして、VTuberを動かすための技術的なコストの高さがある。従来はモーションキャプチャの基地のスペース確保、そこからスタジオへの配線の引き回し、電波干渉のチェック、リップシンクのケアなど番組の技術チームへの負担が大きかった。またDiscordなどを使って映像と音だけを遠隔地から伝送する方法もあるが、ネット回線速度の影響やトラブル発生時の対応を考えると生放送では選択し辛い。最近は簡単にVTuberを動かせる仕組みが出てきており「THE MUSIC DAY 時代」ではバルス社の「どこでもVTuber」を利用したことで、限られたスペースの中でコストを抑えて簡単にVTuberの出演を実現できた。このような技術が普及すれば、ますますテレビ局でVTuberを起用しやすくなると思う。

テレビ朝日「サイキ道」プロデューサー 前田健太郎氏画像6

テレビ朝日はVTuberを起用した地上波レギュラー番組「サイキ道」、「ガリベンガーV」や、VTuberイベント「音楽時特異点」・「ガリベンガーV」等を実施している。

・「サイキ道」はVtuberをMCに起用した地上波初のテレビ朝日の番組やイベント等を紹介する情報番組で、「ガリベンガーV」は司会に小峠英二氏(バイきんぐ)、パネラーにVTuber3名を起用した教育バラエティ番組である。
・また、自社VTuberの運営も開始しており、番組企画で「まいっちんぐマチコ先生」のVTuber化や、ガリベンガーのAD役として「V子」を運営している。V子をプロデュースしていくにあたってV子が新人ということもあり、いきなりメインやゲストとしてTVに出演するのではなく、AD的立ち位置で露出を重ねるうちに少しずつファンに受け入れられ始めている。

・VTuberをTVに起用するにあたっては以下の点に注意した。
人間のタレントよりもキャラクターならではの強固な世界観があるため、世界観を崩さずにTVに持ってくることが大切であり、立ち上げ時は世界観をどう番組に組み込むかで苦労した。
・具体的には「サイキ道」に出演中の電脳少女シロは、電脳世界に住んでおりリアルの世界に住んでいないため、どこまでがリアルでどこまでがシロの世界である電脳世界かの整理が必要であった。この過程を飛ばしVTuberの世界観を無視してしまうと、既存のVTuberファンに受け入れられなくなってしまう可能性があり、注意が必要である。

・今後の番組の展開としてはリアルイベント(8月24日に豊洲PITで実施)や動画配信事業の拡大、VR空間での番組冠バーチャルイベントなどを実施予定である。
・また、VTuberを流行り廃りではなく、文化やビジネスの分野に根付くものに出来たら良いなと思い、盛り上げることに寄与できればと思って取り組んでいる。

フジテレビ 総合コンテンツ事業部 デジタルデザイン部 橋本礼次郎氏
画像5

フジテレビは現在VTuber事業は行なっていないが、VTuberという言葉が生まれる前の2012年という5年も前に、VTuberと同様なプロジェクトを実施していた。

・事業内容としては、ボーカロイドの派生でデジタルアナウンサー社員を制作・運営するというもの。漫画家の江川達也さんのキャラクターデザインで杏里ルネというバーチャルアナウンサーを作成(入社)しニコニコ超会議で披露した。
・2012年当時は技術的な制約からインタラクティブな要素が不足したりと課題が多く、満足な運営ができず8ヶ月で終了(退社)することとなった。
・その他に当時実現に至らなかったものとして、自社の所属のアナウンサーを全員デジタル化する企画など、現在実現されていることを構想として持っていた。アナウンサーのデジタル化は夜中の2時に生放送に出演など過酷な現場を見ているため生まれた、バーチャルによりメイクや衣装などの負担減を活かした企画である。
・今後の展開としては、個人的には茨ひよりちゃんのような自治体Vtuberを共同プロデュースや、テラスハウスやあいのりのようなフジテレビの番組のフォーマットをVTuberでやってみたりするのも面白いかもと思っている。


新しい形のタレント(技術)なため、各局ともに思考錯誤しながらVTuberの冠番組制作からネット連動企画まで多岐にわたる取り組みを行なっています。
VTuberは実際運営が大変だと思われがちですが、VTuberならではの見た目はいつも一定であるという手軽さや、タレントがロケに行かなくても番組制作が成立するなど、運用しながらの利点も出てきており、今後の広がりが期待できるお話が多数登場しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?