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ヴィンテージ:5

 リッコとモモカは、はしゃぎながら互いの髪をバスタオルでくしゃくしゃっと拭き合っている。
 朝日がちょうどいい具合にレースカーテンの隙間から彼女達を照らす。
「おい! オマエら下着ぐらいつけてやれよ!近所から変な目で見られるんのはごめんだからな!」
 すえた匂いがこびり付いた服の山と、生乾きの洗濯物を部屋の端に払う様に投げ分けながら、手間のかかるペットの粗相を呆れる主人の様な声色で二人を叱りつけた。
「見えねーって。まぁ見えたって減るもんじゃないんだから。だよねぇリッコ」
「俎板見て興奮するならコッチから通報すればいいじゃん」
 顔を見合わせて笑う。
「糞野郎共追い出すぞ。さっさと服着て家事掃除内職手伝い。働け」
 言いながらミヤギはフローリングに似せて作られたビニルマットにモップをかける。彼女達が歩きはしゃいだ道筋を丁寧になぞる。横目でボンヤリと見てミヤギは意外と神経質な人間なのだと思った。
 服を一枚着ては戯れあって一通りはしゃぎ終えた後、すっかり疲れ果ててリッコとモモカは昼食を要求したが、ミヤギはリッコにはモップをモモカには洗濯物カゴを手渡すと向かう先を指差して用を片付ける様に促した。目を細め嫌々そうに互いは持ち場へと足を運び、ミヤギはキッチンへと向かった。ミヤギはこのテの人種を扱い慣れてる、前にモモカがうっすらそんな話をしてた。今のカレは女慣れし過ぎててヤバい、でも顔がタイプだから抜けられないんだって。ミヤギは確かに格好良いなと思う。全体に波状にうねったパーマをかけて肩まで髪を伸ばして身長は182はあると思う。私は147センチの身長を目で足まで追って力づくならなんにもならないな、と思った。
「後、15分でメシできっからそれまでに終わらせろよ二人とも」
 やっぱりミヤギ世話慣れしてる。まるでペットに餌をやるみたいに昼食の支度をしてみせる。棚に置いてあるおしゃれなデジタル時計に目をやると午後5時と書いてある。やっぱりわたしたち狂ってる、って思いながらモップに衣類様洗剤を揉み込んだ。

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