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Twitterじゃ書けない文量と熱量の映画・映像作品についての感想や自分なりの考察を書く場所に。映画から着想やテーマを得た短編小説も書くと思います。ゆっくりやって流麗な文字をサッと書ける日を目指してコツコツ思うがままに書きたいを日々練習中。小説家を夢想してゆっくりとがんばる

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「愛がなんだ!ってんだコノヤロウ!!!」プロローグ&第一話【長編小説】

・プロローグ  SNSでバズってるカップルの痴話喧嘩動画を、カフェのテラス席に頬杖ついて、クリームとソース盛り盛りのフロートの山に刺さったストローに口をつけて、彼女はボンヤリ眺めてる。すっごい剣幕で罵詈雑言捲し立てて彼氏を引っ張たくのかな? って感じにゆっくり近づくとお互い渾身の力で抱きしめ合う。ベタだけどつい見ちゃう系のネットにありふれた展開。  彼女はそんな動画を見ながら黄昏気味に、こんな感じの激しい恋愛したいな……。なんてぼやくから、俺は「ないない。そんな言い合い生涯

    • ヴィンテージ:7

      たぶん吐息。横開きのドアの向こうからする音。私は食器の片付けや洗い物をして聴かないように努めていた。でも、時折聴こえる‘音’は心臓をソワソワさせる。何か言ってるのも聴こえる。あのこはだめ。その分2回するから。妹なんだから大切にしたいの。その間にもフッフッと息づかいが聴こえる。荒っぽいその音のせいでワタシは艶がかった白いパン皿を何度も何度もハンドルを回すみたいに洗っていた。ボンヤリと理性がぶつかりながらゆっくり片付けを済ませていると、扉がスーっと開き、モモカが顔だけ出していた。

      • ヴィンテージ:6

        「ここは…もっと翳入れた方が良くなる。後はアーケード奥の人物まで仔細に書き過ぎだ、わざとらしくなる。記憶や写真に頼ってムリしなくていい。観てもらいたいモノ、伝えたいモノをカタチにする様に描け。奥はそう見える様に、手前は感じ取れる様に」  早坂が清原の絵に口出ししてるの初めて見た。俺は2メートルくらい背後からやり取りをボンヤリ眺めていた。 「奥の…コイツは丁寧に描きたい。コイツはこの後に手前の男に殴り掛かるの。だから、目線は男を追ってる。手前の男はそれに気づかず女の肩に手を掛け

        • ヴィンテージ:5

           リッコとモモカは、はしゃぎながら互いの髪をバスタオルでくしゃくしゃっと拭き合っている。  朝日がちょうどいい具合にレースカーテンの隙間から彼女達を照らす。 「おい! オマエら下着ぐらいつけてやれよ!近所から変な目で見られるんのはごめんだからな!」  すえた匂いがこびり付いた服の山と、生乾きの洗濯物を部屋の端に払う様に投げ分けながら、手間のかかるペットの粗相を呆れる主人の様な声色で二人を叱りつけた。 「見えねーって。まぁ見えたって減るもんじゃないんだから。だよねぇリッコ」 「

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        「愛がなんだ!ってんだコノヤロウ!!!」プロローグ&第一話【長編小説】

          ヴィンテージ:4

          「ハルくんそろそろ上がる時間じゃない?」 「レジ締めしたら上がります」  ケンジさんはヤマトの集配の荷物の整理をしながら声をかけてくれた。俺は左手で札束を挟み込み右手親指と人差し指でそれを弾いて、ボンヤリとソレを眺めながら枚数を数えて返事した。  一枚くらいくすねてもバレないんじゃないかとか下らないこと考えながら、価値があるとされてるオッサンの顔をパチンと弾いて売り上げを計算してレジに打ち込む。ウチも全自動レジに代わったらこんなアナログな事しなくて済むんだろうなとか、それなら

          ヴィンテージ:4

          ヴィンテージ:3

          「そんでそっから話してないの?」 「そう」  茉理は薄目で俺を睨んだ。 「そんなんで飛香と上手くいくわけないじゃん。彼女人見知りなんだから」 「上手くやりたいとかって訳じゃないから困ってる」  イーゼルに両手で凭れ掛かり、下を向いて顔を隠しながら言った。 「アイツの絵。興味あるんだよ。なんであんなの描いてんのか。って聞きたいの」 「教えてくれるわけないじゃん」 「だから、困ってんだろって。話しにくいじゃんあいつって」 「でも、そこがいいから話しかけたいんでしょ」  キャンバス

          ヴィンテージ:3

          ヴィンテージ:2

           ゴミみたいに地べたに蹲ってたまに過ぎるインバウンド旅行者の群を見ては視線が合わない様にまた薄汚れたアスファルトに視線を落とす。死ねばいい。そう思ってるのは私だけど過ぎる何人かはそんな感情で視線を送ってるんだろう。憐れみも何割か。そうやって何時間かヒマを潰していると前をモモカが通り過ぎたのが見えた。偶々。私は吸い寄せられ視線と一緒に彼女の背を追いかけた。 「ももか」 「ん? ああなんだリッコか」 「あんさ」 「もしかして泊まるとこないの?」 「うん」  モモカはふっと軽く溜息

          ヴィンテージ:2

          ヴィンテージ:1

           廊下の隅。職員出入り口の近くで彼女はデッサンをしていた。俺は何気なく声をかけた。 「こんなとこで何してんの」  彼女は一言。 「デッサン」  そう答えた。  イーゼルには横40センチ縦は1メートルろどのキャンバスを乗せていて、彼女は職員通用口のガラス越しに見える四角に切り取られた景色を見ながら、都会の喧騒の中に映るささやかな混沌を描いていた。 「何でそんなん書いてんの」 「別に」 「郊外の学校の庭と道路見て、渋谷の電柱に寄りかかって吐いてるガキ描くやつなんていないだろ。ふつ

          ヴィンテージ:1

          宮沢賢治のことはわからないけれど、たぶん自分はそんな風に生きられない。けど、いいのかも。

          あまつゆとてちてけんじや 雨ニモマケズ イーハトーブ そんな直線的に生の呪縛を受け止めることはできない。でも、いいじゃんとも思ってる。 無理して自己犠牲と創作の多重螺旋構造を紡がなくても、表層的な機微なんて山の様にあるのだから。 名前だけ知ってる文豪とかさ。いっぱいいるし、んなもんでやってけるんだよ人生の闇雲なんて。 でも、不誠実の風雨に打たれ一点を観測しながら流れゆく星々に己を重ね綺麗であり所詮点でしかないと肩肘ついて涙ぐむわたしにわたしはなりたいと願う。純朴だけではフ

          宮沢賢治のことはわからないけれど、たぶん自分はそんな風に生きられない。けど、いいのかも。

          『ふと猫さんが通る』 五話。 猫も杓子もなんとやら。

          「俺の目を見て言えるか?」 「言える」 「ちゃんと見ろよ」 「見てるわ」 「そうじゃない。心の眼で見ろっていってんだよ」 「そういうのがムカつくんだって」 「どうでもいい。俺のアイス食った? ってさっき聞いた答えを俺の目を見て答えろって言ってるだけだから」 「それがめんどいんだよ」 「だから、こっち見ろって」 「うるさっ」 「ってことは食ったな。間違いなく食ったな。ハーゲンダッツ。抹茶。マカダミアナッツ。レーズン。お前はどれ食べた?」  テーブルの向かいに座る彼女を睨みつけ

          『ふと猫さんが通る』 五話。 猫も杓子もなんとやら。

          岨手由貴子『あのこは貴族』“あのこ”とは一体誰の事なんだろう【映画感想文】

          原作は未読。けれど、素晴らしいんだろう。 ちょっとした文を書く為に2000〜2010年代の恋愛映画を観ていた時期があったのだけれど、どの映画も隔絶されながらも衝突して恋愛とは如何なる物か描いていた。でも、収まるのは決まって同じ類の人物。閉じた自分を掬うのは勇気を持って手を差し伸べてくれる人。似ている様で勇気がある人だったりする。ロミオとジュリエットの様な命懸けの覚悟と絶望や、花より男子の様な飛び抜けた隔世の無垢な愛嬌で壁を飛び越える話でもない。平凡な世でどうやって恋愛するか?

          岨手由貴子『あのこは貴族』“あのこ”とは一体誰の事なんだろう【映画感想文】

          『ふと猫さんが通る』四話。

           ハッハッハッハッ。息を吐き切って酸素吸入度を上げる。リズムは一定。とにかく駆ける。けれど、我を失ってはいけない。  思えば来る日も走り続けた。畦道。何も無い道。何となくそれとなく自己ベストを目指して走る。青々とした田園。遮蔽されることなく降り注ぐ陽光。光を浴びて我を忘れて走った。ただただ。ひたすらに。頭はやられてしんどくなった。その度にその日を思い描く。昨年は入賞もままならなかった。悔しさ。今年は更に暑くなるだろう。アスファルトが熱気でゆらめくのが目に写る。心地いい程の地

          『ふと猫さんが通る』四話。

          『ふと猫さんが通る』三話。

          「あのさ」 「んー」 「この前、おじいちゃん家に行ったのね」 「おん」 「んしたらさ、あのー、なんだ、プラスチックの容器? ビニ弁とか入ってるあのあれ」 「あー、あの捨てんの困るやつね」 「そそ」 「それで?」 「ンッ……。 それをさ、丁寧に洗ってんの。めっちゃ丁寧に。捨てる時ね」 「すごい偉いじゃん」 「偉いんだよ。でもさ、凄く丁寧に洗ってるからワタシ聞いたの? だってさ、水道代かかるよ。捨てる物に金かけるってなんかってちょっと思って。何でそこまで洗うの? って」 「細か。

          『ふと猫さんが通る』三話。

          「ふと猫さんが通る」二話。

           大和撫子七変化。  お馬がとおるしゃんしゃんしゃん。 「だる」 「れしか言わんなお前」 「しゃあねぇだろ。だるいもんはだるんいんじゃ」 「なんかあったんけ?」 「なんも。べつに」 「ねぇならいちいちぐちぐちいいなさなんや」 「ぷふぁー! ないとは言ったが。ある」 「ならいうてみ」 「れがさ。うちん嫁がいうんよ。はよかえはよかえれってな。うるさくてかなわんの」 「ええことじゃないの」 「よかぁなぁい。そんせいでおみゃぁと呑めんくなったら俺は悲しか」 「んなの知るかぼけ」 「

          「ふと猫さんが通る」二話。

          宮崎駿『君たちはどう生きるか』時代の終焉と命の終わり。表明と決意を船に乗せて荒ぶる残酷な現実と対峙する。作家性が漂いそれを観る。映画感想文。

           観た。情報なしで観たい方は閉じてもらうかして欲しい。何故ならめちゃくちゃ内容に触れると思うから。すんごく言いたい事があるし、自分は今回の作品に強く心惹かれたから。無茶苦茶長文で思いの丈を書き殴る準備は出来ている。  結論は凄かった。かもしれない。何が? と問われるとおしまいなんだけど兎に角凄かったのは間違いない。裸のランチとツインピークスリミテッドシリーズを合成したキメラみたいなものと言ってよいかもしれない。怖ろしく直接的な方法論で物語を繋げていく剛腕っぷりには脱帽せざる

          宮崎駿『君たちはどう生きるか』時代の終焉と命の終わり。表明と決意を船に乗せて荒ぶる残酷な現実と対峙する。作家性が漂いそれを観る。映画感想文。

          『ふと猫さんが通る』一話。

          「神様っているのかな?」 「いないよ」 「なんで?」 「いたら机の脚とかに小指ぶつけないもん」 「何それ?」 「神の規定理由。QED」 「逆にバカっぽ。ならさ、脚の小指ぶつけ神はいるってことじゃない? 人の小指をぶつける様に誘導する神様。なんかいいじゃん」 「なにそれw ならアタシとかじゃなくて、もっと悪いことしてる奴の小指ぶつけさせろやー」 「そこが神様の平等性でしょ。お空の上から平たーく世の中を見てるから誰にでも“小指ぶつけ神”は現れるから」 「今、小指ぶつけ神強調したよ

          『ふと猫さんが通る』一話。