怪物


 観ました「怪物」!是枝裕和監督の第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション作品、脚本家、坂元裕二さんが脚本賞を取った怪作、傑作、心を激しく揺さぶらされる、こんなの観たかった!という傑作映画。役者陣は皆いいし、やはり、監督ありき、脚本ありきが映画なのでしょうか?役者がよくても脚本と監督がマネージしきれないと、、と、ど素人ですが、シネマ愛は深いので、「怪物」のミラクルにどっぷりと浸らせていただきました。
 
 男の子2人、小5を演じた2人の魅力が全開。どうしてそんなに小5の男の子の気持ちがわかるの!!というシナリオを、少年役の黒川想矢と柊木陽太が、この出来事はまるで本当の現実ではないかと思わせる程、彼らのありのままの姿が場面場面から激しく迫ってくるように感じられる作品でした。
 
 ストーリーは、子供同士のいじめやケンカのいきさつの程を成すものの、シングルマザーを演じる安藤サクラ(さすが!クリーニング店で働いているシングルマザーに見える)のお母さんが息子を愛する視点から、小5の男の子達の担任の先生、今時の若い先生ってこうなのかもね、と思わせる、永山瑛太演じる先生からの視点、そして少年2人の数々の出来事から見える視点を結び、場面場面を通して重ねて、パチパチとパズルがハマっていくように、物語の行方を見せてくれるもの。最後までのハラハラ感、どうする感、切なかったり、胸が苦しくなったり、愛しかったりの半端でない感情が高レベルで維持され、映画後はしばし呆然してしまいまいました。

 本当にどれも欠かせない印象深い場面ばかりでしたが、自分自身から見ると(私は小3男子の母でありますので、より一層興味深く、これから大きくなっていく息子がちらほら垣間見えてきてオロオロ)、2人の小5男子の思春期に差し掛かっている微妙な時期のお話を見ることができました(ある意味、小学生男子を持つお母さんオススメの映画でもあったり)。そうしていないつもりでも、母は子を自分の色眼鏡で見てしまうのよね、と、安藤サクラが演じる母に共感して泣けてきたり、、担任の先生は若いのによくやってくれていても、事がこじれてああなってしまうのもわかるなぁと思わせてくれたり、、。そしてやはり光に光っていた2人の男の子たちが登場する、学校やクラスの中での日常の風景の数々(ごくごく自然でよかった)にはアリアリ感が漂い、2人でタンバリンをしまいに行く場面や、トイレの出来事、教室での図工の時間のいざこざの顛末に、そうか、そうだよねとうなずけて、、。
  
 少年らが住んでいる住宅地からあ自転車で行く、森のような所にある、捨てられた廃墟となった電車の中で遊ぶ2人は、生き生きキラキラ感が半端なく湧き出ていた、かわいかった(小5男子もまだかわいい)!!楽しいでしょうあれは!に加えて、ここで「怪物だーれだ」の意味合いのひとつも見せての、次から次へと2人の魅力に打ち負かされる場面が出てきて、息が止まりそうになりそうなくらい映画の中に入っていけました。夜にトンネルの中で少年2人が待ち合わせをしようとしていた場面、自分の感情に追いついていけず、そんなことも自分にあるから(ニュアンスがこういう風に言っていた)、と、お互いを上手く表現できないけれど心を通して理解しているところも、最後に小学校の校長先生を演じた田中裕子(問題ありの人の役)と男の子が誰にも言えない気持ちをどうすればいいのかを話して、トロンボーンとホルンを吹く場面(学校のシーンで遠くで聞こえる管楽器の音にも最後に納得)も、思い出すだけで、じわーとくる、どの場合も欠かせないパズルのピースひとつひとつでできているような、そのどのピースも全て光っていた映画でした。
  
 「怪物」って、誰の中にもいるもの、きっとそうだろうな、と。自分の「怪物」要素はうっすらわかっているから、、、。今後自分自身で上手くハンドルを切っていかないと(いい大人ですが、できてない)。。自分自身に情けなくも悲しくなりながらも、この映画からは大いなる力を与えてもらえ、幸せの方に少しは舵取りできたようにも思えました。今、小3の息子も、どんな風に「怪物」めいてくるのか、不安ながらも楽しみにしておこうと、自然に“ありがとう”が湧いてくる大傑作の映画「怪物」でした。

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