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アフターサン パリの名画座で

 パリに名画座は幾つもあれど、うん十年前の若い頃はいっとき足げに通い詰めていたけれど、先週から本業で足掛け28年(にもなっていた)のパリにやってきた(コロナが明けてきた昨夏は、2年半ぶりのパリだった)。と、張り切っていたところ突然の予定変更で時間ができたので、誰か友人に会うのもいいけれど突然だし、好きな美術館も行きたしだけれど、やっぱりシネマかな、と、気になっていた「アフターサン」( 監督、脚本:シャーロット・ウエルズ。2022年)を観に、パリ5区のムフタール通りにあるL’Épée de Bois という名画座(結構古くてかなり小さい映画館にでも、老若男女のお客さんがちゃんといた。素晴らしい!)へ。

 11歳役の女の子ソフィーが何よりチャーミング!子役のこれみよがしがない演技で、その魅力に一挙一動を目で追いかけた。父娘でトルコのリゾート地で2人で過ごしたひと夏の様子を、ソフィーやお父さんがビデオカメラで撮影。それを大人になったソフィーが観て、あの時のことをいろいろと思い出し、そしてそうだったのか、、と記憶を繋いでいく映像。

 映画の中の出来事は、もちろん自分が経験をしていないことだけれど、場面場合で自分の思い出や感情が引き起こされ、ジワッと心にしみてくる感触。全体的なトーンがイギリス方面なんだろうな、トルコへ父娘でバカンスなのね(トルコ方面の料理も大好きなので、私もより気持ちが踊る)、大昔の聞いたことある音楽もいいし、若いお父さん役のポール・メスカルもまるで役柄の人のように思えて、ソフィー役のフランキー・コリオと合わせて、2人のキャスティングがはまりにはまっていた。特に事件が起きるという映画ではなく、どちらか言えば退屈!?してしまう映画かもしれないけど、個人的にはマイナー色が心地よく、またひとついい出会いができた映画だった。



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