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「ルー、パリで生まれた猫」  「熊は、いない」

先週の雨の祝日、サッカーの練習も学童もお休みなので、1日中息子(9歳)の相手は面倒なので、私の好きな本屋さん→映画(映画→本屋)コースへ。新宿へ行けば紀伊國屋さんも映画館もあるし、何十年かぶりに中村屋のカレーをランチにもいいかなぁと新宿へ。中村屋のカレーは大行列で、1時間は十分に待ちそうなので却下。頭の中がカレーになった息子のリクエストでカレー屋さんを求め、映画の時間も迫ってくるし、新宿に疎いし雨降りでウロウロ。外国人しかいないような、中村屋のカレーの4分の1の値段で食べられるようなお店に入ってしまい、あっ、しまったと思いつつ昼食と取った(うどんやそば、ラーメンなど何でもある、外国人向けっぽい食券のお店。外国人従業員が一生懸命に作っていて、厨房の方々から息子へ優しい声がけもあり、艶のない米とルーだけのカレーだったけれど、働いている外国人の仕事ぶりが前向きで懸命さがあり、それが良くて、ちょっと嬉しくなった)。いざ映画館へ。

猫の大アップの宣伝に惹かれて、「ルー、パリで生まれた猫」(Mon chat et moi, grande aventure de Rrou. 2023年。ギョーム・メダチェフスキ監督)を観た。映画直後は内容がソフト過ぎて少し物足りないと感じていたけれど、キジ猫のルーや猫の飼い主の10歳の女の子、クレム役のキャプシーヌ・サンソン=ファブレスが抜群よかったから、じわじわと今頃になって映画に浸っている。主人公を演じたキャプシーヌが役中のクレムに見えて、息子も映画と思いながら、本当のお話かと映画直後は一瞬錯覚をしていた。西洋人に時によくある、鼻の先が少し上がったその横顔が美しくチャーミングで、髪を全て帽子に入れて、ズボン姿も特にかわいかったキャプシーヌ(女の子の普段着もフランス的な色合いでかわいい)。この役にピッタリ。お姫様タイプの美少女でないけれど、どこかにいそうだけれど、佇まいも顔立ちも美しく品があってかわいくて、演技が上手!後からくるじわじわのこのいい感じが、クレム役のキャプシーヌと、無垢な猫、ルーをいじり過ぎずに撮ったメダチェフスキ監督の賜物か。物語は、パリを舞台に、愛猫ルーの存在に助けられながら、日常の問題(両親の離婚など)を乗り越え成長していく少女クレムのお話。猫好きは気に入る映画かも。
 

猫のルーのソフトさの真逆、一見ソフトそうで超ハードな
イランのジャファル・パナヒ監督の、「熊は、いない」(ジャファル・パナヒ監督、脚本、制作、主演。2022年)。こちらは内容や年月歴史がいく層にも折りたたまれていて、一筋縄ではいかないズーンと重く響いてくるような映画。イランという国の背景を詳しく知らないと、映画のその重みを全ては理解できないけれど、去年、イランでのヒジャブに関する事件などからでも、日本や欧米諸国と比べるまでもなく、イランの人々、特に女性の人権や自由は低いのだろうとだけは推測できる。この映画が去年のヴェネチア国際映画祭映で、審査員特別賞を受賞した時も、パナヒ監督は7ヶ月服役したそうで、その屈指の孤高な精神は、映画を撮ることで抵抗している。イランの国にも潰されない偉大な存在。魂が揺さぶれ、私でも小さなところからでも、少しでも社会が明るい方にいくように、行動をわずかでも変えていこうとする力を与えてくれた。劇中の2組の愛し合う男女にふりかかる問題を、どう解決していけばいいのか、、未来が見えない。撮り続けるパナヒ監督に敬服。

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