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気付いたらいわゆる「教育移住」を決意していた②

私はイギリス育ちで、国際結婚もしているので、いずれは海外にまた住むだろうとは思っていた。そのきっかけがまさか「教育」になろうとは…
そして出てくる出てくる数々の悩みや考え事。

本記事は後編なので、まだの方は是非前編↓を先に読んでね:


英国の教育と子育て文化

私は、小学校から中学校3年生直前までの8年間、イギリスの義務教育を経験した。現地校且つ私立の女子校だったため、特殊な部分もあると思うが、特徴をまとめると:

ディベートや実践を通して学ぶ:数学ですら「どのように問題を解くのか」などのアプローチを教室内で議論した。もちろん歴史は暗記することはゼロ。「ヘンリー8世が6人の歴代妻の誰を一番愛したのか」を通してチューダー王朝を学んだり。科学や音楽も卓上の理論を学ぶ時間は少なく、ほぼ「はい、実践」形式でしたね。おかげで戸惑いも間違いもたくさん経験しました。が、それで人は学ぶんだと思います。

芸術も本気でやる:私の学校だけかもしれないが、楽器を習うことが推奨され、授業を抜けてまで校内のマンツーマンレッスンで学んだ。毎週同じ授業を抜けないように、各楽器の先生は各生徒に毎月シフト表のようなものでレッスン時間の管理をしていました。アートもアプローチ方法に応じて2種類。いわゆる自由な感じの「アート」と、デザインを企画してから制作する「デザイン」に分かれていた。

暗記は化学記号だけ:全教科を通して8年間で暗記したのは化学の記号だけ。暗記して何になるの?くらいの雰囲気でした。

さて、義務教育から大学進学までのルートに関する教育システムがどうなっているかというと:

小学校:義務教育

GCSEs:General Certificate of Secondary Education の略で14-16歳の間に取得するディプロマのようなもの(中学校後半から高校にかけて)。取得科目は進学や進路に合わせて幅広く選ぶのが基本。内容は2年間かけて論文を書いたり、併せて試験を受けたりと、卒論やゼミに類似した形式だ。大学はもちろんだが、場合によっては就職先でもこの時の科目や評価を気にするところもある非常に大事な教育イベント。A-Levelを取得したいなら取得は必須。

A-Level:Advanced Levelの略で16-18歳の間に取得する。取得科目数は一般的には3, 4個で、評価は大学進学や就職に大きく影響する。こちらも2年かけて特定の科目について理解と知識を深掘りする方式だ。

大学入試:日本のような共通試験ではなく、GCSE'sやA-Levelの評価の比重が高い。大学や科目によっては実技や筆記試験もあるが、その結果の比重は日本の大学入試のような「一発勝負」ではない。

こう見ると、イギリスは考える力を大いに育む教育システムだと思う。

日本の教育と子育て文化

私が日本に帰国したのは中学校2年生の最終学期だったので、そこから大学卒業までは日本式教育を経験している。中学校3年生は公立中学校、高校と大学は私立だ。私の感じた特徴としては:

授業は全て一方通行:先生がひたすら喋って、ごくたまに生徒にあてる。そりゃ寝るよね。イギリスでは睡魔を経験したことなかった私ですが、日本では毎日授業中に寝てました。

正しい答えが一つしかない:そもそも日本の教育機関で「あなたはどう思う?」と聞かれたためしがありません。もちろん、大学まで行けば少人数授業などで議論する機会はあったが、基本的には受け身授業で、教わる内容も常に「答えはこれ!」と言ったスタンス。学ぶ喜びを奪われた7年間だったように思います。(ちょっと大袈裟か。)

暗記が「正」:何年に鎌倉幕府が設立されたとか覚えてどうするのでしょうか。「祇園精舎の鐘の声」から始まる古文もなんとか暗記しましたが、今の私の何になっているか未だに解せません。ネット検索ですぐ出る情報を頭に入れた分の労力と、脳内メモリと、時間を返してほしい。

さて、私の個人的な感想はさておき、日本における義務教育から大学進学までのルートをさらっと比較のためにおさらいすると:

「エレベーター式」のシステムで大学まで進路が確保できている学校を除き、小中高大の各ステップで受験がある。

高校入試でも大学入試でも「センター試験」のような共通筆記試験の結果に比重を高くする場合の学校と、私立で多いのが各学校が筆記試験などを提供して受験生に受けてもらうパターン。いずれも、入念な受験勉強と、当日の瞬発力が物を言う。

言うまでもがな、日本は忍耐力と暗記力と努力が勝つ教育システムであるという印象を受ける。

イスラエルの教育と子育て文化

イスラエルに関しては自分が経験していないので、イスラエル育ちのヘブライ語を教えてくれているマオズ先生と、一部の教育を経験した夫から聞いた話しを元に特徴を挙げると:

静かな一時がない:授業中であろうと教室は常に騒がしく、秩序がない。「落ち着いて議論」というよりは自己表現の爆発という状況のようだ。

天才やよくできる子は躊躇なくどんどん伸ばすのが当たり前:アインシュタイン級の天才ではなくとも「地頭が良い」「理解が早い」「特定の教科が得意」な子供は素早く学校が対応し、能力に合わせた教室に移動したりする環境がある。できる子はどんどん伸ばす。

さて、気になる教育システムはどうかというと、実は宗教や言語によって分かれている(アラビア語かヘブライ語かの軸と、宗教観が強いか否かの軸)ので下記に書くのはヘブライ語 x 宗教観が薄いグループ(ビジネス界や科学に進む人が行く道)となります:

小学校:義務教育。この時点でロボット工学やプログラミングに興味ある子供はそれに特化した科目が揃った小学校も選べる。(Wow)
そうでなくても、数学を用いてタブレットで絵を描く、など普通に行われている模様。いわゆるSTEM以外でもアートや音楽にも力が入っている様子。
(余談だが、イスラエル•ユダヤ系の世界的バイオリニストの多いことよ)

中高:自分の学級とは別に、数学と英語に関しては各生徒の理解度やレベルに応じて教室に分かれて勉強する。できる子はどんどん進める方式だ。レベルアップも降格もありうる世界観。シビアと言えばシビア。英語はこの時点でトップのクラスをキープしないとイスラエルの大学入試は厳しくなるんだとか。
また、2009年から「科学」と「テクノロジー」は別教科になり、テクノロジーを中学校から学ぶというすごい世界。

大学入試:アメリカやイギリス同様、海外からの生徒も多く受け入れているため、日本式ではなく、高卒の認定があれば、エッセイ、筆記試験、実技など大学に応じて入試方法は異なる。

これを見ると、イスラエルは各個人の強みをどんどん伸ばす教育システム・環境のように見える。

ちなみに、こちらの記事でも話したが、イスラエルは子供を国の宝物として動いているのがひしひしと感じる国である。教育システム以外の場でも非常に子育て環境が良い。

公園は、郊外の静かな住宅街の「小さな」公園でも遊園地並みの遊具が揃っていて、その隣には野外ジム(懸垂バーなど)があるので、親子で体を動かせるほか、テント生地の「屋根」が設置してあるので、直射日光や軽度の雨は気にせず思いっきり遊べる。

また、公の場で「静かにしなさい!迷惑でしょ」を聞いたためしがない。むしろ「子供は子供の仕事をしているとこうなるよねぇ」くらいに周りが共感の声をかけてくれる。

周りにどんなに迷惑でも、うるさくても、大変でも「子供らしさ」を伸ばすことに重きを置いている国民性や文化が私は何よりも好きだ。どんなに「進んでる」教育システムや大学への進学よりも貴重なんじゃないかと感じている。

親としての子供達への願い

なぜイスラエルでの子育て・教育が私たちに合っていると思ったか。

私たち夫婦は二人とも恵まれて育ったことを重々承知している。衣食住において惨めな経験はせず、やりたいことや習い事はやらせていただき、良い教育を受けさせてもらった結果、見る人から見たら「エリート」と言われたり「デキる人」と言われることは少なくない。

夫はイスラエルで弁護士としてキャリアをスタートし、私は日本の就職氷河期の最たる底辺の2009年の就活生ながら第一志望だった外資系金融機関からあっさり内定をもらってキャリアをスタートさせた。

そんな二人が議論なく合意した子供達への願い:

どんな状況下においても己を知り、それに忠実に何にも臆せずハッピーに生きること

それだけ。教育、職業やキャリア、お金、結婚や子供の有無など、何も気にしていない。人間らしい、自分らいしい幸せが何にも変えられない宝物だと思っているからだ。

ちなみにこのあり方、大人の私たちだってまだできているとは言い切れない。それほどまでに己を知り、全うするのって日々の探究や努力、自己実現が必要なことだと思っている。

そのためには育つ環境で何を養う必要があるか。私たちの考えでは下記が必須、とよく夫婦間で話している:

  • 自己を言葉で表現する力と自信

  • 他己の表現する言葉に振り回されない自己認識

  • 他の人と共創できる表現力と共感力

  • リスクを必ずしも「リスク」と思わない物の見方

  • 他人任せではない幸せの探求

  • 論理的思考と疑問力

  • 自他ともに「受け入れる」愛・共感力

日本語で言葉にすると大層スピリチュアルやな(笑)
余談すぎるが、夫婦間の普段の会話が英語なので、こうしてその内容を日本語にすると、ぶっ飛んで見えるのは、我ながら面白い発見である。

行ける選択肢があるイスラエルの方が、今いる日本に比べると上記を養える環境が揃っているように思える。これが教育移住をすることにした決め手になる。大学は日本でも、他の国でも行けば良いし、私は個人的に大学は行かなくてもいいと思ってすらいる(またその話はいつか…笑)

日本の教育のすごいところ

ここまで書くと、まるで「日本オワタ」となるかもしれませんが、実はそうでもないと思っている。下記は、私が感じる日本教育の素晴らしいところであり、海外ではなかなか養えないものだと思っている:

食育:旬の食べ物と、含まれる栄養と、その食べ方。お魚の正しい食べ方、一汁三菜をバランスよく食べる所作。どうでも良さそうに見えるが、生きていく上でバランスの良い食事との付き合い方を身につけるのは就く職業以上に大事だと思っている。(実は私、菜食育アドバイザー資格を持っているほど食に対しては想いが熱い)
資本主義大国、エリート大国、教育大国のアメリカの食文化や食生活の貧相なことよ。それは食育で学べる数々の基本的な食の知識の無さや、無頓着の産物だと思っている。日本の食育は世界に誇れます

1日の終わりの教室や廊下の掃除:W杯で話題になった自主的に会場を清掃した日本のサッカーファン。「発つ鳥跡を汚さず」ほど美しい精神があるだろうか。海外は清掃員が学校の汚れを毎日清掃するのが当たり前。日本ではみんなで使った道具をみんなで綺麗にする。モノや場所を永く大切にするマインドの第1歩だと思っている。

最後に

夫も上記の日本の良いところは世界一だと思っているそうで、今の私たちの「作戦」としては:

保育園で日本のマインドや生活に対する良い面を吸収してもらい、それを土台にイスラエルで自分らしさをどんどん伸ばしてもらう

でしょうか。
日本語、英語、ヘブライ語(多言語育児)をどうするのかとか、私の改宗問題、どうやって我が家の犬も移住させるのか、など課題は山積みですが、ひとまず大枠が決まればあとはなんとかなるのではと思ってます。

相変わらずの大雑把ですが、参考になれば幸いです!

Fin

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