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小梨平の夜は、熊にバレないようにステーキを【初めての上高地④】

上高地の小梨平キャンプ場は、昨年ソロキャンプ中の女性がテントで熊に襲われる出来事があり、その後しばらく閉鎖していたらしく、私が行った今年の9月は、かなり厳しく熊対策をされている印象だった。
まず、アメリカのロングトレイルなどでよく聞く、食料を保管する熊対策の大きなコンテナ倉庫があった。さすがの熊さんでも開けられない。なぜなら私も開けるのに毎回苦労をしたくらい扉が重くて少し複雑だったから。
食料は、ここに必ず保管しないといけないルールだった。「封を切っていないレトルトカレーでも缶詰でも熊は狙うんで」とキャンプ場のお兄さんから聞いたため、私は徹底してここに飴ちゃんも含めた食料全てを入れた。
「夜中どうしても喉が渇くかもしれないので、魔法瓶にお茶を入れておきたいけど、それもダメでしょうか?」とキャンプ場のお兄さんに聞いたら、「お水やお茶なら大丈夫ですよ」とのこと。紅茶はどうだろう…、はちみつ紅茶は?と聞きたかったがやめておいた。香りのあるものはきっとダメだ。
そのため、いつものように、よなよなテントの中でチョコレートをかじったり、ぼんち揚げをかじったり、ポテチをかじったりがここではできない。ああ、やせ細ってしまうよ。大丈夫だろうかと心配だった。 

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しかし、我が家のベランダにもこういったコンテナ倉庫を置いて、毎晩18時半に食料をすべて保管することをしたら、ダイエットが成功するのではないか、と思いついた。ナイスアイディアだ。
しかし我に返り、大阪市内の9階のマンションにも時々熊が出ると誰かが私に催眠術をかけるなりしてくれないと難しい。誰か、私に人を信じる心をください、と途方に暮れた。

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小梨平キャンプ場では、昨年の熊の人身事故があって以来、バーベキューにも制限をかけている。出発前情報として分かっていたのは、セルフでのバーベキューは自粛するようにとのお達しだけ。
何がアウトなのか分からなかったので、今回はステーキ肉と、最近ハマっているセブンイレブンのポテトサラダと、米とアマノフーズの味噌汁しか食料は持ってきていない。
だが、キャンプ場内の売店には冷凍の焼き肉用の肉やウィンナー、焼きそば、野菜なども売っていて、そもそもバーベキューって何?と疑問がわいた。
そこでキャンプ場のお兄さんに尋ねてみた。「バーベキューとは何のどこまでを指しますか?」私は真面目な生徒である。
「焼きそばとか野菜炒めとかはOKですよ」とのこと。ふむ。
「それじゃ小型のガスバーナーで一人分の肉を焼くとかは?」と聞くと「いいですよ」とのことで、
「米を炊くのは?」と聞くと「全然OK」とのこと。
うーん。
バーベキューの定義が掴みづらいが、おそらく、複数名で炭に火をつけて、煙をモクモクさせて、肉やら野菜やらウィンナーを焼く行為が熊的にアウトで、パパっと地味に小さく焼いてサクッと食べる分には熊的にセーフなのかなあと判断した。


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(それにしても小梨平キャンプ場の売店は何でもある。本当に手ぶらでやってきても毎日の自炊は問題無いと思う。餅、1合分の米、小分けしたしょうゆや油などから酒酒酒。値段も良心的。あ、私は何が売ってたかを後で思い出せるようにこういうのをよく撮るけどお店の人に確認済みです。)


そんなわけで、私はテントから少し離れた木のテーブルに移動し、自宅から凍らせて持ってきた1枚のステーキ肉をひっそりと熊に見つからないように気をつけながらスピーディーに焼いた。血も肉汁も1滴たりとも垂らさない覚悟で取り扱った。
火もすぐに消して、アルミホイルで匂いと共に肉を閉じ込めて包んで、しばらく余熱で火を通すという技まで使って頑張った。また、ウィンナーはいつものジョンソンヴィルを持ってこなかったので、売店で5種類の味のウィンナーを買って焼いた。
米はいつも通りメスティンで炊いて、炊き立てごはんとセットでステーキディナー開始。

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今宵もなかなか良い。
美味しい。
肉の味が皿に染み付かないようにラップをしてタレを入れたりした。
そして、暗くなったのでヘッドライトでデコから強烈な光を照らしながら、急いで食べた。
暗闇早食い選手権参加者1名といった感じだろう。
アルミホイルで包んで中まで火を通したおかげか、安物ステーキも柔らかくて美味しかった。
ちなみに、今回のソロキャンプは、BE-PAL9月号の付録のOPINELのまな板にもなる木のボードを持ってきていて、お皿代わりに使ってみた。汚すのが嫌でアルミホイルをかましているので別にわざわざ木のボードを使わなくても良い代物だが、そこは雰囲気重視で。箸を置く場所が窪んでいるのが地味に良かった。

ステーキを秒殺で食べて、ごはんの残りを大急ぎでおにぎりにして、お片付け作業開始。
食料だけでいいのに、食器もさっさと洗ってコンテナに格納することにした。使った木のテーブルもヘッドライトで隅々照らして、においが消せるのかは謎だが、徹底してアルコール消毒をした。
早くしないと熊に見つかってしまう。それくらいの気持ちで急いでいた。
ああ、ほんとに自宅にも熊が出るという催眠術にかかれば、すぐに食器を洗えて台所もきれいに保てるのになあと、普段のいい加減な生活を嘆く。いや、嘆いてる暇はない、お片付けだ。
実際のところ、キャンプ場は、「18時半までには夕食を終えてね」「21時頃までにはコンテナに食料をすべて保管してね」くらいのルールなのだが、厳粛に守る。命を守る。
途中で、はちみつ紅茶をテント前に3滴ほどこぼしてしまい、「ひえー!」とパニックになった。
はちみつってクマのプーさんの大好物だし、熊を誘ってるみたいになるのでは?と勝手に恐怖を感じて、小川の水を汲んで流したりこぼした場所を土で埋めたりしてみた。
大袈裟かもしれないが、何が何でも熊に襲われたくないので徹底した。
映画「レヴェナント」で熊との戦い方はディカプリオから学んでいたが、勝てそうにないのでとにかく現れないで欲しい。その一心である。
コンテナにて食料全てと一旦お別れする前に、真っ暗なコンテナの中で、歯も磨いたと言うのにバリバリと板チョコを限界まで口に入れていた私の姿は、熊よりも恐ろしかったかもしれない。口の中をチョコだらけにしてテントに戻ったのだが、果たしてこれはセーフなのかは謎だった。とりあえずお湯を冷ましてから口はゆすいだ。
それからいつもはイヤホンで聴く深夜ラジオも、テントの中で小さめの音で流し続けた。ダイアンのゆるいトークや有吉のド下ネタや、オードリーのトークなどで熊を寄り付かなくさせる作戦で夜は更けていった。

なお、翌朝は無事に熊に見つからずに、私は生きて朝を迎えることができた。
しかし、小梨平内に昼頃、熊が現れたらしかったから油断はできない。
とりあえず、私の徹底した対策は一応セーフだったようで一安心である。

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