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旅先でバスに通り過ぎて行かれた件

2日前にバスに通り過ぎて行かれた朝のつぶやきが、なぜか7万回近く見られていて、「もっとも多く読まれた記事」になった。私のこれまでの丹念に書いてきた280のnoteの中でもダントツに多く読まれてしまった。

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何が起こったのかさっぱり分からない。
どこでどういう話題?
Twitterでこの出来事をRTして「国交省通報事案」だと言ってる人がいた。読んでくれて、そして代わりに怒ってくれたのかな。ありがとうございます。

ただ、補足したい。

私はあのつぶやきで怒りを伝えたかったわけじゃない。
村上春樹風の「やれやれ」でそれを表現したつもりだった。村上春樹の「やれやれ」なんて、しょっちゅう出てくるワードだからそういう意味合い。
普段の生活の中や仕事中に同じことが起きたら、きっとブチギレていた。
バス会社に電話したかも知れない。
いやそれはしないとしても、次に来たバスの運転手に「さっきのバス、通り過ぎて行かれたけど!どうなってんのよ。」くらい言ったと思う、罪のない別の運転手に八つ当たりくらいはするかも知れない。
そして、人に言うだろう。「めっちゃムカつくことあってんけど!」とかなんとか。まあ私のことだから怒りつつ面白おかしく話して、それから別の面白おかしい話へと話題は移っていくだろうけど。
だだ、2日前のつぶやきで、そういうことを伝えたいのではなかった。
都会から離れてこんな雪深い場所にやってきたよ、ということ。
こんな雪深い場所をバスが通ってるんだよという驚き。
そこでもまたちょっとドンくさいことをして朝からハプニングが起きたよ、という、私の旅でよく起きるちょっとした予想外の出来事の一つとしての報告。
ただそれだけの事だった。
旅の最中で、旅をめちゃくちゃ満喫していて、今回はただnoteの毎日更新が途切れないように140字以内でぱぱっと瞬間で書いてアップして、そのまま旅の時間に戻ることをしていたから、よく読み直さなかったけど、このぱぱっとと書いたことが、国交省通報案件だと私が怒っていると思われたり、「いやお前、怒れよそこは!」と読んでいる人に思わせたりしてしまったのかも知れない。
どちらにしても、この旅のこの場所でのこの出来事に関しては、私は何も怒っていないのです、珍しく。
旅先でバスに通り過ぎて行かれるのは初めてではない。
海外でそれをされて、ヒッチハイクをしてしのいだり、とぼとぼ2時間かけて歩いたりしたこともあり、その時はもちろんブチギレたが、結果的にどうにかなって、代わりにバスに乗っていたら得られなかった出来事が起こっていてブチギレ通さずに済んだし、ブチギレた思い出としては残っていない。
コメント欄にすぐ、雪国でのバス事情を書いてくれて、次のバスには乗れるように祈ってくれたフォロワーの椎羅さんにすごく救われる思いになったし、雪の中でバスを1時間立って待っていたら死ぬかもと思って、いくつかバス停を歩いて進んで待つことにしたおかげでゆっくり見れた景色もあった。
泊まっていた旅館付近の道や、観光客を呼び込むためのライトアップされた場所には足跡が私のものしかなく、他の人のものはほとんどなかった。

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だけど、バス通りを歩いて進んでいると、いくつも足跡や車のタイヤの跡があり、足跡で道の雪が固められていたり、除雪車を動かしていたり、いくつかの足跡がついている小さな神社があったり、JAがあったり、聞いたことのない名前の小さなスーパーマーケットがあった。

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ここには当然のことながら、生活があった。
それを感じながら歩いていると、暖かくも温かくもなった。
コロナ禍でこんなに旅行者がいないとこの町はどうなってしまうんだろう、大変なんじゃないか、と勝手に前日に思っていたが、確かにコロナ禍で大変かも知れないが、雪の大変さを毎年乗り越えてここでの生活を続けている逞しさを、またも勝手によそ者が感じた。
昨夜晩ご飯を食べに入ったお店のおばちゃんが、久しぶりの客らしい私に「ありがとうねー」としきりにいい、冬にしかここに来たことがない私に「ここは5、6月もいいよ。山が綺麗だよ」と教えてくれた。
歩きながらその言葉を思い出して、ここのこれだけ美しい景色は失われないのだから、必ずまた人が戻ってくるよなぁとも思ったりしたのだった。
そして、スーパーで暖をとって、無事に1時間後のバスに乗れたから、バスが通り過ぎて行ったことなんてのは、私にとって、おしっこが漏れるかと思った程度の出来事。漏らしてはいない。

高山へ行く電車で読んだ若林正恭の「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」の本の中のアイスランドの章に、とても好きな言葉があった。
アイスランドで楽しい思い出を作り、帰りの空港で対応の悪い人にあたってしまった時、若ちゃんはこう書いていた。

こういうことで旅先の国の印象を変えてはいけない。
どこの国でもいい人もいれば嫌な人もいる。
それだけのことだろう。

多分、若林正恭は私と同じように、日々の生活での不条理な出来事を流して生きていないタイプだと思う。現に東京に帰ってきてから些細な出来事で「チッ」と舌打ちをしていたりする。
私もそういうマインドの人だが、旅では、彼の言葉と同じように思えるというか、そう心がけようとしているというか、自然とそうなるというか。
バス道を歩きながら、若林正恭のその言葉を思い出し、雪国を旅する電車内で、寒い雪国のアイスランド旅のエッセイを読むことをチョイスした私って我ながら天才的センスだったなぁと自画自賛していた。
あのつぶやきを読んだ7万人の人のうち1000人くらいにはこれを読んで真意を理解してほしいなぁと願う。


補足の補足:次のバスに乗ってから、バス停を通るたびに誰かを見落としていないか私が勝手に運転手の代わりに確認していた。雪で真っ白で、腰くらいまで雪が積み上がっていたりするので角度によっては見えないこともあるだろうなぁと思ったし、メジャーなバス停以外は停まる雰囲気もなくスピードを緩めず走っていた。ちなみに、1時間半の乗車時間で、スキー場前のバス停から3人が乗り込んできた以外は誰も乗ってこなかった。乗客は私を含めて4人。仕方ないような気もした。

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補足の補足の補足:飛騨のすくなかぼちゃの濃厚生スイートポテトはめちゃくちゃうまい。

(今ふと思ったが、関東地方は緊急事態宣言中なのに、呑気に雪景色見て旅行してんじゃねーよという人が多いのかな。
もしそうなら、謝りはしないけど、緊急事態宣言済んでもまだ雪が残ってるはずだから、ぜひ行ってみてください。奥飛騨温泉郷、オススメです。)

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