見出し画像

【第67回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その8 原田ゆう『文、分、異聞』

候補者について

原田ゆう[はらだ・ゆう]
1978年生まれ。福岡県出身。日本大学大学院芸術学研究科舞台芸術専攻修了。劇団温泉ドラゴン 所属、劇作家。初の最終候補。

候補作について

旧臘、文学座12月アトリエの会として文学座アトリエにて上演。

■時代、場所
 1963(昭和38)年11月20日 午後8時過ぎ 文学座アトリエ ホール

■登場人物
第一期研究生
 シン(岸田森)
 ミノリ(寺田農)
 タダヒコ(菅野忠彦=菅野菜保之)
 チホ(悠木千帆=樹木希林)
 キョウコ(大塚京子)
 ダイゴ(草野大悟)
 マユミ(小川真由美=小川眞由美)
第二期研究生
 ヤギ(八木昌子)
 トオル(江守徹)
 ケイスケ
 カズコ

■物語
 昭和38年、年初に大量脱退者を出した文学座は、翌年の正月公演である三島由紀夫作『喜びの琴』上演の是非をめぐって、再び分裂の危機を迎えていました。アトリエで繰り広げられたドラマをアトリエでお客様に追体験していただきながら、演劇作品を上演することの意味や演劇活動に携わる者たちの葛藤を、表現芸術が「不要不急」という言葉で切り捨てられた今の日本で、改めてみつめ直す作品です。【公式サイトより】

総評

 本作は未見。岸田國士も創設メンバーに名を連ねる文学座の内幕を描いた作品が候補になろうとは。ちなみに娘の岸田今日子さんはこの年に脱退し、劇団雲旗揚げに参加、甥の森さんはシンとして本作に登場する(後の妻となる悠木千帆(樹木希林)さんも)。
 本作は三島由紀夫さんの『喜びの琴』上演を巡る騒動を描いているのだが、面白いのは幹部たちではなく研究生に焦点を当てている点。幹部たちによる総会は最初に研究生自身によって演じられる(ダイゴのみ本人役)。
 全体的には面白く読んだが、今ひとつ決め手に欠けるというのも正直なところ。原田ゆうさんは先月、温泉ドラゴンで上演された『悼、灯、斉藤』がよかったので、来年再度最終候補になることを期待。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?