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要介護五

前々から息子にせっつかれていた母の介護認定を慌てて申請する

わたしの骨折の退院から五ヶ月後

そんな時、母の具合が悪くなる

区役所から認定員がやってくる日、母は緊急入院をしたのである

認定員は慌てて病院へ

母は立ち上がれもしないでベッドに寝たきり状態

後日、認定員から連絡があり
「要介護認定は五です」

それはそうだ
寝たきりだもの

母の退院までに
介護用ベッドを用意して
トイレには置き型手すり、杖も置いて行く福祉用具レンタル屋さん

「要介護五なんて本当の寝たきりだよ」と息子に言われる

その後、病院では歩いてリハビリをしていると聞かされる

少しは元気になったのか…

介護用ベッドは
「ツーモーターにしますか、スリーモーターにしますか」

いやいや何にも分からない

息子が医療従事者で良かった

「ベッドはツーモーターで大丈夫です」と息子はお願いをしていた

多分母は退院してきて
「こんなもん、要らん」って怒るだろう

案の定、杖を振り回し怒っていた

暫くしてトイレの置き型手すりも返してくれという

使ったのはベッドだけ
それもモーターを使わずに最期まで自力で起き上がっていた

「偽物の要介護五」
 
息子とわたしはそう呼んだ

ケアマネさんも「こんな元気な要介護五の人は見たことない」と驚いた

「もうすぐ介護認定の見直しだったから…次はどうなるか楽しみにしていたのに」

ケアマネさんに母の旅立ちを知らせるとそう話してくれた

今、この話しを書きながら
わたしはまた涙する

それはちょうど二年前の今頃のこと

母を大切にしなければと思っていたのはその頃だけだった

それでもみんなは言ってくれる
「よくやった」と

ずっと後悔ばかりが残るのに


湯河原の親元へ連れて行くことを何よりも喜んだ

こころ学びを懸命にする

赤毛のお母さん、母の愛称
結構人気者


「偽物の要介護五」だった母はあちらの世界ではどんな暮らしをしているのだろうか

肉体のない世界、魂だけの世界
身体の具合も悪くない
楽しげに暮らしているに違いない


今日は強い風が吹いている
窓から見える山の木は大きく暴れて怒っているようだ

あの時の母と同じように

もう春の気配

春一番が吹いた

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