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少しだけ

もう七ヶ月
母が旅立って

少しだけ
前を向けるようになってきた

母のことはいつも思う

旅立ちの時
わたしがそばにいて良かったと

まかり間違えば家で孤独死で
それだけは避けられて良かったと

本当はもっと一緒に居たかった

母は頑張った
必死に生きた
前を向いていた

母はわたしに「ありがとう」と言ってくれた
「わたしはしあわせ」と話してくれた

「いい人生」
そう言い残して還っていった

母の大切な写真を見る

父にしがみついているものばかり

お父さんが恋しかったんだね
今はお父さんの横で嬉しそうにしている写真の母を見ていると
こんなに夫が大好きで
夫を尊敬している妻

あぁ、いい夫婦
お父さんも慕われてしあわせだね

でもお父さんは晩年に
お母さんのことを
こっそり「怖いだろう」と言っていた

まっすぐに向かって来る
素直さに…

それでもちゃんと迎えに来ていた
わたしには父の声が聞こえた

その時に「まだ待って、連れていかないで」と頼めば良かった

でも言えなかった
誰の声なのか分からなかったから
何を言われているのか
理解出来なかった

心のどこかで
必死に生きた母を
父のところへもう返したかったのかもしれない

母の望んだこと
母の希望を叶えたかった
…のかもしれない

母にもっと生きて欲しいは
わたしの我だと…

昨日の夕方には「かなかなかな」と哀愁をおびたひぐらしが鳴いていた

あれから
母がいなくなってから
季節はめぐる

暦の上ではもう晩夏

#創作大賞2023

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