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かなしい朝焼け

母が旅立ったのは夜中の三時過ぎ

気づいてすぐに救急車を呼ぶ
もう遅いけれど

冬の寒くなる入り口だった

初めての病院に運ばれる

まだ真っ暗な闇の中

もう目覚めることのない母を見送って
わたしは病院の外に出る
母が還ったことを従姉に知らせるために

朝焼けがとても美しかった

雲と朝日のコントラストが見事だった

母の旅立ちにしっくりきた

母は還って行った

従姉に電話をする

彼女は子供のようにわんわん声をあげて泣いていた
「倶(とも)ちゃんがいなくなった」と泣いていた

わたしは泣けもせず
ただボケっとするだけ

本当にかなしいと思考が止まり
泪も出ない

電話をかけながら見た朝焼けに
「あぁ、きれい」と心の中でつぶやいた

父の時もそうだった
真夜中に旅立ち
明け方に病院を出る

父の脱け殻を葬儀場まで運ぶ

わたしの運転で母と息子たちを連れて
父を乗せた車について行く

朝焼けに背を向けて

あれは夏の暑い日の明け方だった
そのことも思い出す

家から少し遠い葬儀社の冷凍庫
火葬するまで毎日毎日
母をつれて父に会いに行く

母はどんな思いでカチカチの父の脱け殻を見つめていたのか

ふと、そんなことを考える

明け方はかなしい時

朝日を浴びると元気になると教えられるが…

やっぱりさみしい気持ちになる



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