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人間と人生を味わい尽くす~神山典士作品集

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音楽、スポーツ、演劇、芸能、ビジネス、料理等、あらゆるジャンルの人間ドラマを描くノンフィクション作家神山典士作品集
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#クラシック

TheBazaarExpress116、『ペテン師と天才、佐村河内事件の全貌』7章、貧しくても好きな道を歩む幸せ~N極・早熟な才能

・驚愕のフルオーケストラ・スコア

―――この子の才能はどうなっているんだ。小学校6年生でオーケストラのフルスコアを書いてくるとは。しかも独学で20分もの曲だ。尋常じゃないな。

1982年のとある日、東京目黒にあるヤマハ音楽振興会目黒センターで指導教官をしていた作曲家の南聡は、千葉県船橋市の教室から送られてきたある子どものスコアを見て信じられない思いだった。

この頃南は東京芸大の作曲家コースの

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TheBazaarExpress115、『ピアノはともだち~奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』青い鳥文庫版、あとがき

拝啓 辻井伸行様

 日本では山滴る季節となりました。

 今日はどこの旅の空ですか? 演奏会は順調に進んでいますか? お客様の反応はいかがでしょうか。各地で美味しいものを食べているのでしょうね。

 君の本を書かせてもらってから、5年の月日が流れました。あの頃君は世界での演奏旅行が始まったばかりで、いろいろな国の音楽祭や小さな街のコンサート・ホールで演奏を繰り返していましたね。

 それが今では

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TheBazaarExpress112、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、第3章、2013年の軋轢、その2、大人は嘘つきだ

・新垣さんは来ますか?

大久保母から佐村河内に久しぶりにメールが打たれたのは、9月6日のことだった。

「第67回全日本学生音楽コンクールヴァイオリン小学生の部が9/7(土)8(日)とあります。まんまんは7日に出ます。課題曲はパルティータです」

この頃佐村河内は、新垣との「活動区切り騒動」は口止め料を強引に渡したことで一応一件落着し、「鎮魂のソナタ」のCD発売作業は進み、「交響曲第一番HIRO

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TheBazaarExpress111、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、第二章2013年の軋轢、その1~不協和音

・なぜ撮影に協力しないんだ

2013年の正月から2月にかけて、大久保家には一つの憂鬱が蔓延していた。

それまでずっといい関係を築いてきていた佐村河内の周囲から、不穏な話が伝わるようになってきたからだ。

―――みっくんがなぜ撮影に協力してくれないのか、佐村河内さんはかなり怒っている。

遠回しないい方であっても、そのような意味のことを、例えばNHKの撮影スタッフや周囲の音楽関係者が、何気ない会

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TheBazaarExpress72、神に選ばれし子~指揮者・佐渡裕編

 その時、真っ二つに折れた指揮棒が宙を舞った。

 座間市民合唱団約三五〇名と読売日本交響楽団約八〇名の演奏が大団円を迎えた時、私には、折れた指揮棒の先端が放物線を描いてステージと客席の中間に弾むのがはっきりと見えた。

 ベートーベン作曲「交響曲第九番」。お馴染みの合唱の最後の音がホールに吸い込まれると、客席からは嵐のような拍手が鳴り響いた。佐藤しのぶ、吉田浩之ら四人のソリストは、四度もステージ

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TheBazaarExpress71、夢を叶え、叶え続ける~ベルリンにて、佐渡裕編

 ショスタコービッチの「交響曲第五番」。軽快なメロディーの最後に重厚なティンパニの音がホールに吸い込まれた瞬間。万雷の拍手が指揮台で祈りのポーズをとる佐渡裕(50歳)に注がれた。5度目のカーテンコールを終え、楽団員全員が引き上げても拍手は鳴りやまず、手拍子すら起きた。独りぼっちのカーテンコール。めったにない光景だ。

 5月20日から3日間開かれたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会での

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