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あらすじで読む日本の名著 (小川 義男)

 買ってまでして読もうとは思わなかったのですが、図書館の書架でたまたま見つけたので手に取りました。
 賛否両論(否の方が圧倒的に多いのですが、)ある「あらすじもの」です。(私にとっては、先に「世界の名著」という本を読んでほとんどついていけなかったリベンジでもあります)

 論説文とかであれば、その論旨をコンパクトに理解するという目的での「ダイジェスト版」はそれなりの意味があると思います。しかしながら、「小説の『あらすじ』を知ることが何の意味があるか」というのが、この本に対する基本的な疑念でしょう。

 とはいえ、たとえば、
  「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。・・・」という超有名な書き出しを知っているのと、
  「雪国(川端康成)」を実際読んだのと、
  その「あらすじ」だけでも知っているのと、
さて、どのレベルがどれだけの意味があるかとなると、人それぞれの本(読書)に対する姿勢(目的)にも拠りますね。

 もちろん、優れた著作はその作者の筆力が命ですから、他の人の筆による「あらすじ」はその分身とすら言えないものです。が、他方、優れた著作はその「プロット」だけ取り出しても得るところがあるかもしれません。そういう点を目的とするのであれば、「あらすじ」もそれなりに意味があるとも言えます。
 映画の予告編は「原作」の「切り張り」ですが、この本に載っている「あらすじ」はその部分の筆者のサマライズ力とある程度の文章力の発現でもあります。

 「あらすじを知って何の意味があるのか」という本質的な命題をちょっと脇におくと、優れた文芸作品は、そのあらすじだけでもそれなりに面白いかも・・・というのが、正直、私の実感でした。



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