車好きにはたまらないヤマハの特許~中小企業が見習うところは?~
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「車好きにはたまらないヤマハの特許~中小企業が見習うところは?~」をお伝えします。
車好きには興味津々のヤマハの特許を参考に、中小企業でのヒントになることを書いていきます。
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/contact
1.前書き
私は速い乗物が好きでして、以前にも「車好きにはたまらないトヨタの特許」という記事を投稿しました。
https://note.com/norio_sakaoka/n/n6fe5752f95f9
この第2弾としてヤマハの特許を取り上げます。
2.どんな特許なのか
以前のトヨタの記事では、車の表面に貼り付ける製品に関する特許でしたが、今回は車の車体に取付けるものです。
その名も「パフォーマンスダンパー(商標登録第5471329号)」です。
そもそも、「ダンパー」とはどういった製品なのかを説明しますね。
ダンパーといっても空調設備のダンパーとは違って、自動車のそれは流体抵抗を用いた振動減衰装置です。
分かりやすく言うと、水を張った洗面器の中に注射器や水鉄砲の先端を入れて、ピストンを引いたり押したりしたときの抵抗を作り出す装置です。
車のサスペンションで例えると、バネだけだといつまでも伸び縮みを繰り返して、ボヨンボヨンと上下動を繰り返しますが、ダンパーがあることで上下動がすっと収まるのです。
車の足回りには、バネとダンパーとがセットになって一緒に使用されます。
しかし、パフォーマンスダンパーは、下の絵のように、ダンパーのみを車体の前後に水平かつ車の左右を連結するように取付けるのです。
これによって、「車体の余分な振動が抑えられて、乗り心地がよくなり、コーナーがスムーズに曲がれ、直進安定性が増す」とあります。
2.中小企業が見習うポイントその1 常識を疑う仮説を立てる
上記の「車体の余分な振動が抑えられて、乗り心地がよくなり、コーナーがスムーズに曲がれ、直進安定性が増す」という効果を得るためには、シャシー剛性をあげていくのが常套手段だと思います。
車体の底面に筋交のようなものを取付ける、左右サスペンスの上部を横棒で連結する、ボディにスポット溶接増しをする等です。
普通に考えて、水鉄砲みたいな抵抗を付けてもシャシー剛性は強くならず、何が良いのだ?と思うところです。
しかし、ヤマハの技術者は違いました。
走行テストの結果、『「サスペンションは素晴らしいが、ボディがわずかに揺らぐ感じがする」と。そして、「それならボディのごく僅かな振動を吸収することができれば、もっと気持ちいいクルマになるかも?」とひらめいたのです。
“ボディの僅かな振動を抑えるには、ボディをいたずらに硬くせず粘性を与えることこそがポイントでは・・・”という仮説のもとで研究開発は進んでいきました。』
https://global.yamaha-motor.com/jp/design_technology/technology/chassis_hulls/010/より引用
普通はシャシー剛性を向上させるところ、逆の発想で粘性を与えるアプローチを取ったのです。
この非常識ともいえるヒラメキから仮説を立て、それを立証していく。
その結果、素晴らしい製品ができた!
いいですね、御社も是非とも参考にしてください。
2.中小企業が見習うポイントその2 改良発明を特許出願して権利を延長させる
私が極簡単に調査しただけなので、漏れがありそうですが、このパフォーマンスダンパーの最初の特許は、2001年出願の特許第4627389号です。
1番目の特許は符号1を見てください。上部を連結しています。
特許の存続期間は原則として出願日から20年ですので、この最初の特許は存続期間が満了しており、権利としては生きていません。
しかし、同じパフォーマンスダンパーでも改良発明を行い、2004年出願の特許第4754814号、2006年出願の特許第4970895号、2007年出願の特許第5248852号というように、類似商品を出願して特許化しているのです。
これらの文献をみてみると、最初の特許はダンパーそのもので取得して、その後は取付箇所を変えて、変えた取り付け箇所に応じた改良を加えているようです。
2番目の特許は、符号12を見てください。シャシーに取付けてあります。
3番目の特許は、符号26を見てください。サブフレームに取付けられてあります。
4番目の特許は、符号3を見てください。図ではわかりにくいですが、バンパー内部に取付けられてあります。
このような改良発明の特許取得により、実質的な特許の権利期間を延長させて、他社の模倣を防止しています。
この手法、大企業ではたまに見られますが、中小企業では中々するところがありません。
こちらも、参考にしてみてください。
いかがでしょうか?
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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