特許的には?だが 売り方が超絶上手い事例
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許的には?だが 売り方が超絶上手い事例」をお伝えします。
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/contact
1.ネットニュースで見かけたナノバブルシャワーヘッド
先日、ネットニュースでナノバブルシャワーヘッドを見かけました。
ナノバブルとは、直径が1マイクロメートル未満の微細気泡です。
このナノバブルを含む水が色々な効果があるとのことで、以前から注目されています。
例えば、水産業界ではナノバブルを含んだ水を用いて魚を飼育するとか、高速道路のPAのお手洗いの掃除に使用されるとかです。
人の身体を洗うシャワー水にもナノバブルを含ませることで、洗浄力の向上が期待できますね。
2.ネットニュースの内容
私自身、過去にナノバブルに関する特許出願を代理したこともあり、このネットニュースを読んでみました。
すると、クラウドファンディングをしているようで、そこのランディングページで「シャワーの穴に特許技術が採用され・・」と書かれており、ますます興味が出て読みいってしまいました。
記載されていることはとても素晴らしく、「ナノバブルが、毛穴の中にある脂汚れを洗浄してくれる」などと書かれており、これは売れそうだなと感じました。
実際、クラウドファンディングにおける支援金額も順調に伸びているようです。
3.特許技術はどこにある?
さて、ランディングページの出来がすばらしく、効能もありそうということで良い商品と思うのですが、肝心の特許技術とは何だ?との疑問が出てきて調べてみました。
ランディングページ内のどこにも特許番号が書かれていません。
ランディングページに特許証の写真は掲載されているのですが、特許番号や特許権者のところがぼやかしてあり、読めません。
ページを拡大しようとしても、特許証のところだけは拡大できません。
(営業妨害になってはいけないので、具体的なURLは記載しません。)
ランディングページに記載の、東海地方にある販売会社やその責任者等で特許検索してもヒットしません。
商標登録されている文字を検索してみると、当初は上記の販売会社とは関係なさそうな個人で登録されており、その後、他の会社に移転されています。
商標に関する個人と会社でも特許検索してみましたが、こちらもヒットしません。
残念ながら、当該シャワーヘッドに関する特許技術が何なのか、私が調べた限りでは特定できませんでした。
4.微細気泡(ナノバブル)に関する特許
微細気泡に関する特許はけっこう前からあります。
微細気泡を製造する方法はいくつかありますが、その代表的な方法に「旋回液流式」があります。
「旋回液流式」の原理を、2015年に私が代理人として出願して特許になった案件を用いて説明します。
気液混合液を下の図のような装置に流入させます。
すると、図3(C)のように円筒形の内部を気液混合液が旋回します。
このとき、円筒形の内周面近傍の液は内周面との摩擦により流速が遅くなり、その内側では摩擦がないため速くなります。
この流速の差で気泡をせん断して小さくします。
実は、この「旋回液流式」の基本的な特許は、既に出願から20年以上経過しており、存続期間が満了しております。
5.勝手な推測
ここからは勝手な推測です。間違っていたらごめんなさい。
上記のことから、ランディングページに記載の「シャワーの穴に特許技術が採用され・・」の文言は、実は「シャワーの穴に(既に権利が切れた他社の)特許技術が採用され・・」ではないのかと疑ってしまいます。
(実際は特許を取得していると思います)
念のため申し上げておきますと、権利が切れた他社特許を模倣するのは合法です。
そのために、所定期間の独占排他権を与える代わりに技術を公開しなさいという特許制度があるのです。
無からものを作るのは難しいですが、既にあるものの利用や改良は比較的簡単にできます。
新商品の開発には過去の特許を活用するのが上手なやり方です。
6.売れる販促活動のヒント
特許的には疑問があるものの、上記のシャワーヘッドは好評なようです。
これは、ランディングページの出来がすばらしいのに加えて、「特許技術」という文言が効いているのではないかと考えます。
特許という文言を用いることで、商品の信頼性が高まります。
これらのことから、新商品の販売には、良質の販促活動+特許(特許出願中)という組み合わせが、効果が高くなる可能性があるかもです。
ということで、新商品の開発で過去の特許文献を参考にして開発すればよい商品が作れますし、そこで新たな特許出願をすることでよりよい商品が作れそうです。
さらに、その特許出願を販促活動に役立てていただければ、商品がたくさん売れそうです。
そうなれば、弁理士としても嬉しいですね。
この記事が御社の発展に寄与することを願っております。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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