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読書感想文              杜子春よ

 杜子春よ、わしがお前をなぜ、仙人にさせなかったかわかるか。いやその前に、お前はなぜ仙人になりたいと思ったのだ。聞きはしなかったが、わしには理由はわかっていた。
 お前は初め金持ちになりたいと言った。わしが金持ちにしてやると、お前は贅沢の限りを尽くした。お金を他人や世の中のために使おうとは決してせずに、自分の欲望の限りを尽くし、財産を使い果たした。類は友を呼ぶという。そんな人間のところには、同じことを考える人間が集まってくるものさ。
 それをお前は2度繰り返した。それでもお前は自分の愚かさに気づかず、他人の冷たさを責めてばかりいる。他人をそしる前になぜ自分のわがままを嘆かぬ。お前が仙人になりたいといった理由は、仙人になれば何でも自分の自由になると考えたからであろう。そんな人間が仙人になったら、この世界はどうなる。自分のことだけを考えて、自分の親のことさえ考えない人間が、仙人になったら、この世は破滅する。
 しかしお前の心の中には、自分の親は大事にしたいという気持ちは、まだ残っているらしい。ちょっと安心したよ。その気持ちを大事にして、さらに大きく、広げていくがよい。その時こそ、わしはお前を仙人にしてやろう。


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