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ブランディングの場はSNSから「マイクロコミュニティ」へ。量より質・プライベートを重視?【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】

海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。

今回はブランディングの場はSNSから「マイクロコミュニティ」へ。量より質・プライベートを重視?の回を文字起こししました。

SNS時代、企業は容易に多くの人に向けて情報を発信できるようになりました。一方、このところ注目を集めているのが「マイクロコミュニティ」の存在。興味や趣味嗜好を共有する人たちの小規模なグループのことで、海外の人気ブランドもより効率的な情報発信手段として力を注いでいます。そこではどのようなやりとりが行われているのでしょうか?

Spotifynoteでのフォローもお待ちしています!(Photo by Charisse Kenion on Unsplash

なぜ今「マイクロコミュニティ」なのか?

大津 ステイホームでネットショッピングの売り上げが伸びたって言われていますが、ネットで買い物とかしましたか?

 そうですね。買うかどうかはともかく、家にいる時間が増えるとついネットでいろいろチェックしてしまいますよね。

大津 そうですよね。好きなショップとかブランドって「お得な情報ないかな」ってSNSでフォローするじゃないですか?

 はい。

大津 私のFacebookのフィードとか、もうほとんどそういう商品の情報しか流れてこないんです。

 ああ・・・ 最近、プライベートをFacebookに投稿する人も減ってきてますもんね。

大津 でも、どんどんいろんなブランドとかレストランとかフォローしていくと、とにかくいろんな情報が大量にフィードに流れてくるんですよ。

 分かります。でもそれだと、セール情報とか新商品情報とか、ほしい情報が来ても見逃してしまいますよね?

大津 そうそう。

 それに、Facebookは最近アルゴリズムが変わって、フィードに流れる投稿がかなり選ばれるようになったって聞きますし。

大津 そのあたり、たぶん企業からも問い合わせが多かったからなのか、Facebookが公式サイトでアルゴリズムの変更について説明していて。

 はい。

大津 それによると、現状、1人の利用者がログインするたびに、平均1,500本の記事が表示枠を争って、結果、表示されるのは約300本程度にすぎないらしいです。

 それだと、せっかく自社ページのフォロワーが増えても、商品に関するPRの投稿が見られてない可能性が高いってことですよね?

大津 そうなります。なので、とにかくフォロワーを増やして、たくさん投稿をして・・・ というより、熱心なファンのコミュニティをつくって、そこをターゲットにする方向で考える企業が増えているらしいんです。

 というと・・・ リピート購入者とか、SNSへの投稿に最も反応している人たちとかですか?

大津 そう。投稿によくコメントくれる人とか、そういうブランドやお店を本当に好きな人たちを集めた小さなコミュニティをつくると。「マイクロコミュニティ」と呼ばれているようです。

マイクロコミュニティの成功例「Glossier」

 そのマイクロコミュニティは、Facebookグループなんかを使うんですか?

大津 やっぱりそういう既存のツールを活用するのが一番取り組みやすいからなのか多いみたいですね。あとはインスタの鍵アカとか、Slackとか。

 ビジネスツールのSlackも使われるんですか?

大津 はい、意外にも。アメリカの美容ブランド「Glossier」ってご存知ですか?

 はい。それこそインスタでも見たことあるような。

大津 アメリカのミレニアル世代ですごく売れているスキンケアブランドで「美容ブロガーが立ち上げて10億ドルのコスメブランドになった」っていうのでCEOも注目されていて。

 ブロガーからコスメブランドのCEOとして成功するっていうのは今っぽいですね。

大津 そうなんです。そのGlossierがまだ起業したてのころ、Slackで熱心なファン100人を集めて、彼女たちが企業に直接、「こういうコスメがほしい」みたいなフィードバックをできるようにしたんだそうです。

 なるほど。双方向のコミュニケーションができる場にしたわけですね。

大津 今でも「顧客と一緒に創り上げるコスメ」を掲げていて、それもあって人気みたいです。

 マイクロコミュニティの成功例なんですね。

大津 はい。

 インフルエンサーにしても、これまでみたいに芸能人とかだけじゃなくて、フォロワーとコミュニケーションを積極的に取る「マイクロインフルエンサー」が起用されるようになってきているっていいますし、やっぱりコミュニケーションの双方向性みたいなのが大事なんですね。

大津 消費者も一方的な発信を好まなくなってるのかもしれないですね。実際、ブランドからの顧客へのメッセージ発信もパーソナライズ化が人気で、アメリカの「Attentive」というAIでメッセージをパーソナライズするスタートアップは、昨年顧客数が347%増加したそうです。

 それはすごい。ミレニアルとかZ世代ってオンラインコミュニティへの帰属意識が高くなってきていますから、ブランドに対しても「商品を購入するだけ」の関係じゃなくて、一つのコミュニティ的なものを求めているのかもしれませんね。

大津 ブランド側もダイバーシティとかエコとか、テーマ性を強く打ち出しているところが増えてますし、自分と同じブランドのファンやその企業の社員と「価値観を共有するコミュニティ」を作っていくイメージなのかもしれません。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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