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今日の気になる言葉123

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#日本語

「指に力が入っていない。」

と「ボソボソしゃべる」日本人を評した萩本欽一氏の言葉を小堺一機氏が紹介(先日の『TOKYO SPEAKEASY』)。夥しい平板読みもこれと同じか。指に力を入れ「私の言葉」という思いで言わず平板な音の羅列にして意味を薄めたい意識が背後にある気がする。

「『、』は半呼吸だな。」

と中嶋朋子氏(先日の『Color of Life』)。「北の国から」の脚本の句読点で会話の間合いを学んだと述べた。「半呼吸」は彼女の感覚的な言葉だが少し間を空ける意か。対して語りのプロ達は点も意味も無視し言葉を単なる音の連結と捉えて早口で平板に語る。

「雪のことば辞典。」
について少し前の「日本経済新聞」朝刊で紹介。雪は標準語では「ユキ」だが、新潟はイキ、エリ、リキが多く、秋田・山形・岩手ではイギ、富山ではイク、岐阜・長野ではウキ、福島・茨城ではズキと発音する人がいるとか。今日の都内も雪一歩手前のような氷雨だった。

「念のためでいいですので。」
と 言い「電話番号を教えてください」と要求した某宅配便の不在通知受付。「念のため」と思うのは私ではなく話す本人だ。しかも私は「いいです」(この言い回し自体奇異だが)という許しを得る立場ではない。最早、主語・述語も把握できないレベルに日本語は来たか。

「日本語能力の共通指標。」
を外国人材受け入れに伴い文化庁が作り始めたと先日の「日本経済新聞」朝刊。「敬語が話せる」「漢字が書ける」などを指標に反映と言うが、敬語が全て「いただく」になり「茄子」が書けず(NHK番組)、「は」と「が」の区別が消えた日本語の何を基準にするのか。

「語彙力辞典。」
が人気と先日の「おはよう日本」。「はっきり言語化できないものを辞典が助ける」と主張するが、表現できない気持ちを認知されていない単語で書いても伝わらない=言語ではない。恋人に「幸甚」と書く陳腐さを晒しつつ、だからNHKは発音も劣化させるのだと納得。

「刺さる。」 とは辞書的には「刺されたような強い衝撃を受ける」意で使われるが、単に感銘を受けた感覚を表す場合もあり「違和感がある」という意見がインターネット上に14年に見られる。日本語は断言を避ける曖昧化の傾向の一方「~し切る」など鋭角的表現も目立ちつつある。

「あざとい。」

が悪い意味だけでなくなったと昨日の「田中みな実 あったかタイム」で田中氏。ゲストは“あざとかわいい”女優として人気の松本まりか氏。田中氏は「抜け目なく貪欲で小利口」なる辞書的意味も披露。「小利口」ではなく「利口」で如才ない知的さが付加されてきたか。

「四文字熟語。」

を最近の人は使わないと「鶏鳴狗盗」を例に挙げた武田鉄矢氏(日曜の『ワイドナショー』)。この後、不思議な縁で人が巡り合う意味の「合縁奇縁」をさらりと入れた古舘伊知郎氏の発言を果たして何割が聞き分け意味を感じ取ったか。日本語はかくの如く非言語化する。

「謙遜的傲慢。」

と「させていただく」の乱用を批判した林望氏(『日本語へそまがり講義』)。氏は「日本語は(話し手)相互の相対的上下関係を勘案し話す」相対的敬語で「それを使いこなすのが洗練」と語る。全てに使うのだから謙遜に非ず自分の両親にまで使う浅はかさには呆れる。

たくさんの卒業生を送りだしました
と某脱毛サロンの車内広告。一定期間、何かを成し遂げ去る事を「卒業」と最初に呼んだのはいつか。TV番組の降板も卒業と呼ぶが、婚姻関係を維持しつつ干渉し合わない夫婦関係を卒婚と言う。永遠の愛を放棄しつつ便宜的に法的関係を残し卒業を匂わすとは図々しい。

「読解力15位。」

に日本が低下したOECD学習到達度調査(先日の『LOVE CONNECTION』)。ゆとり教育が否定された03年の14位より低い。他国・地域の平均に比べ読書頻度が低く一人用ゲーム機で遊ぶ時間が長い事実が原因を語る。整理し考え話す批判的思考が劣化か。

龍4つで「てつ」と読むこの漢字は64画で「大漢和辞典」内の最多画数と米国出身で山形大学のジスク・マシュー助教に教えられる(先日の『ワタシが日本に住む理由』)。「おしゃべり」の意味で金代の「五音篇海」に初出とのことだが、知への情熱の前に国境はない。

雪まつりは札幌初のイベント。 と書かれていれば違うのでは?と疑うが、最近の局アナは殆ど「東京発」も「東京初」と平板読みする。リテラシー低下を嘆く日本人に前後の文脈から類推せよとでも言うか。我々は通販で「日本初のワイン」と聞いても「日本発のワイン」とその都度、翻訳が求められる。