ノルマ

詩・短文・妄想

ノルマ

詩・短文・妄想

最近の記事

時候の挨拶

いつもお世話になっております。 コンセントに差す電源プラグって、二本の電極がありますよね。 子供のころ、一方が入り口で、他方が出口だと思っていました。 血液が全身を巡るように。各器官に血液が入り、出るように。 何かが入って何かが出る、その流れの中からエネルギーを取り出しているのだと、そう思っていました。 家庭に届く電源は交流電源ですから、そういう単純なものではなかったわけですけどもね。 でも、一人暮らしを始めて、毎月の電気使用料金の通知が来るたび、 あの考え方もあながち間

    • 途中経過のご報告

      桑田様 ご依頼いただいた調査について、途中経過のご報告をいたします。 先週お送りくださった息子さんのメモの内容と完全に一致する文書は、現時点では見つかっておりません。 しかし、類似する記述を含んだ書籍が一件だけ見つかりました。 高木丸の『文書観察入門』(2038)です。以下に抜粋しておきます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (中略)  しかし、以上のような調査手法が主流となった時期は、トンボ景気による物価高騰の影

      • 対称性鑑定士

         対称性鑑定士の講義のため、電車を乗り継いで知らない街までやってきた。会場は高架下となっている。それも、狭く長い通路をどうにか通ってたどり着く場所のようだ。  黒ずんだエアコンの室外機やボロボロのモップが放置された通路を抜けると、急ごしらえらしい張りぼての講義会場にたどり着いた。いびつな楔型をした狭い部屋の中に、木箱(椅子だろうか)と長机が雑に並べられただけの質素な会場だ。前方の壁には薄汚れた白板がかけられている。本当にここで合っているのだろうか。対称性鑑定士の講義会場とは思

        • 悪魔

          ついさっき口から出てきたばかりの悪魔が、目の前でへらへらと笑っている。 酒を飲んでいたわけでもないのに気持ち悪くなり、吐いていたらずるんと出てきたのだ。大変気持ちが悪い。 自分の口から出てきただけあって、自分とよく似ていた。容姿ばかりか、一つ一つの仕草から言葉遣いまで、すべてが自分と瓜二つだ。本当に気持ちが悪い。 どうしていいかわからないが、どうしようもないので少しの間だけおいてやることにした。 こちらの考えていること、特に一番気に障ることを的確に言ってくるのが非常に不快だ

        時候の挨拶

          これは私の家じゃない

          楽しい夢を見た 好きな歌を歌う夢 目を覚ます 周りに人がいない 夕暮れの川のほとり 誰か 誰か 雁の声と共鳴し 雲を湿す 私の小さな家 郵便局のすぐ隣 巨大な蔦に埋もれた 家、私の これは私の家じゃない 浮遊感、何かを失う音 目を覚ます 東京の中心にある 人を吸う千鳥格子 誰か 誰か 信号機の音響 錯覚の富士 私の小さな部屋 古アパートの二階の端 黒いヒビが張り付いた 家、私の これは私の家じゃない 浮遊感、何かを失う音 下る うねる 螺旋階段 灯る 灯る 玄関灯 ます

          これは私の家じゃない

          新種の生物

           子供のとき、家の前の地面を奇妙な生き物が這っているのを見つけた。ナメクジのようだが触角が一本しかない。図鑑で調べても、それと思しきものは見つからなかった。  虫に詳しい叔父さんに調べてもらうことにした。新種の生物を発見したかもしれないという期待と興奮を抑え、叔父さんからの連絡を待った。  長い四日間が経ち、叔父さんから結果を知らせる電話が来た。叔父さんによれば、あれは新種の生物ではなく、殻と表皮と尾と口と片方の目が注意深く削ぎ落とされた蝸牛だったという。

          新種の生物

          身代わりタカ子

           ある玩具雑誌の小さな記事。 *** -「身代わりタカ子」  昭和40年代、無名の玩具メーカーが人形を発売した。名前は、『身代わりタカ子』。普通の人形につける名前ではない。「身代わり」など、かなり禍々しい雰囲気を醸し出している。しかしながら、その見た目にも名前に劣らぬインパクトがある。 (人形の画像。カラフルな服を着せられている、白髪の日本人女児。顔は灰色で、目には生気がない。) 当時の人形といえば、リカちゃんやバービー人形といった、金髪で目の大きい、外国人風のものが流行り

          身代わりタカ子

          物置の本泥棒

           わずかに開いた物置の扉の隙間から腕が伸びてきて、僕の手から本を素早く奪って再び物置の中に消えた。直後に扉は固く閉ざされた。  どんなに力を入れて引いても開かない。爺さんにもらった、大事な本なのに。僕は物置の前に陣取って、犯人が出てくるのを待った。物置の中からは、何かがごそごそ動く音や、相談するような低い話し声、不愉快な笑い声が聞こえてきた。しかし、犯人が出てくる様子はなかった。  一時間も経とうかという頃、突然物置が静かになった。僕は身構えながら、扉に手をかけた。少し引

          物置の本泥棒

          初投稿

          適当な散文を書いていこうと思っています 書くことの大部分は妄想の産物です 最近は曲の歌詞みたいな詩を書いてます よろしくお願いします