マルチ商法の勧誘を見抜く手はあるのか

実際にマルチやグレー、あるいはブラックな勧誘というのは見抜けるものなのか。

それは100%可能とは言い難いが、ある程度共通する特徴がある。
まず合法のマルチの場合、最終的に加入してしまうと多くの場合損しかないことはグレーやブラックなアルバイト募集と何ら変わらないが、一応合法であることからそれなりに気を使って勧誘している。

例えば本格的な勧誘前には勧誘であることを提示することや、「絶対儲かる」みたいなNGワードを使用しない。なぜか妙にリアル感があるなどである。

マルチの組織に関わらず、共通する事項を書いていく。
もちろんすべて当てはまるがマルチではないもの、あるいはその逆もあるためあくまで参考で見ることをお勧めする。

◆師匠とか「すごい成功者」がいる


勧誘する者とは別に、成功者が別にいることが常である。
「すごい人を紹介する」という流れはマルチを警戒した方が良い。

どのマルチもこれが共通している理由は、法律的な運用上の問題と、組織上の問題ももちろんあるが、最大の理由は「権威付け」を行うためである。

権威付けとは、第三者意見と同じくかなり強力なパワーがあるのに、第三者意見を利用したステルスマーケティング(ステマ)と異なりほとんど規制されていない。権威付けはほぼすべての広告活動で実施されている。例えば〇〇大学教授と共同研究、TVでタレントが紹介したなどなど。ようは偉い権威がある人が話した内容はすごく感じるという当たり前と言えば当たり前の効果である。

勧誘のマニュアルには、必ず上位者を同席させるタイミングを設け、具体的な成果やすごさを説明する場合はかならず上位者が行うということも記載されていることがある。

これは、勧誘者は勧誘される人と同じ目線にいるからである。飲み会や大学のサークルなどで勧誘するため、勧誘者はされる側と同じく一般的なレベルの人に設定されている。凄いと言われる人がそんな誰でもいるところで勧誘活動にいそしんだり、友達になるなんてことは無いようにしないといけない。

しかし、同じ目線の人間は勧誘し親しくなりやすい反面、その人が言うことに何ら権威などない。例えるなら路上ミュージシャンが集まり「一緒に芸能界目指そうぜ」と友達になるようなものだから、そんな路上ミュージシャンが「10億円稼ぐ芸能界トップレベルではこういうことがあるから注意しなさい」などと説明したところで、引かれるだけだろう。

そこに大手有名プロダクションの社長が紹介されてやってきて、同じことを説いたとしたら、聞き入れる可能性は断然高くなる。

これが権威性で、些細なことかもしれないが多大な効果がある。そしてマルチや宗教の勧誘では、ほぼ権威付けが必須なため、「成功者」とやらを仕立てて用意しないとならないのだ。

◆説明が抽象的


よく「金持ち父さん貧乏父さん」という本を紹介されたら大抵マルチ。という話を聞く。これは確かに正しく、この本を無性に勧めてくるのは大抵マルチである。もしくは株式投資に関するボードゲームを行うなど色々な手はあるが、とにかくわりと使い倒されている手法だ。

ところでこういった本を紹介してくる勧誘者階層の人間は、マルチの組織のことや、そもそも稼ぐための手法のシステムやら構築方法について、かなり曖昧な説明しかしない。あるいは精神論、夢や夢想、将来設計を投げかけてくることは多くとも、具体的な手法については説かないことが多い。

例えば株式でこの銘柄がこういうニュースがあるからいつ伸びるとか、不動産知識が必要そうなマルチ組織なのに東京の不動産価値の上昇について情報が曖昧だったり、具体的にどうやって稼いでいるのか、その仕組みを具体的かつ詳細に語る者はいない。上位者に説明を任せてしまったりと、やたら人任せである。

というのも、これはそもそも勧誘階層に知識がある人がいない、知識があっても勧誘能力が高いだけであって稼ぐ能力が高いわけではない。説明はできるが、勧誘の法律規制や権威付けの問題から自分から語ることができない(許されていない)など様々な理由があるが、とにかく自分のビジネスのことなのに説明ができないのも特徴的だ。

さてここまでは勧誘レベルの話である。
じゃあ実際に上位者とあって「お呼ばれ」した場合、どのような特徴があるのか。
なお、マルチを利用したブラックな手法でも、ここら辺は共通している。ただのマルチかアウトかは単に合法か違法かの違いしかなく、やっていることと、下位の者が受ける効果は同じと言っても差支えない。

◆都内タワマン「ワンルーム」


上位者は稼いでいることが必要である。「これをやれば稼げますよ」とか言ってるくせに、その上位者が貧乏生活していたら夢もくそも無い話である。

とはいえ、実際にそこそこの上位者でも稼げていないのがマルチの実情であるから、上位者は稼いでいることを装う必要がある。つまり良いクルマにイイ服、イイ家は広告のための必要経費とも言える。ここら辺はマルチに限らずコンサルなどでも用いられている。

実際には稼いでいないのに、めちゃくちゃ稼いでいるように見せる手腕としては、都内の安いタワマンの使用、中古の高級車の保有などがあり、場合によっては時計等の装飾品もレンタルであり、中にはブランドモノの箱だけを購入し、部屋に置いておくことで、良い品を多数持っていると思わせる手もある。

さて、こうなると以下のような特徴が出てくる

・自宅が都内ワンルーム


都内の特に港区のタワマンである。ただワンルームだったり1LDKだったり、確かに1人で住むには十分なのかもしれないが、めちゃくちゃ稼いでいるにしては疑問が浮かぶ内容だ。

よく利用されているのは港区の高級タワマンで、エントランスが大理石だったり広かったり、コンシェルジュがいたりする。特にコンシェルジュがいるタワマンは、マルチに好まれる。それだけで凄そうと思わせられるからだ。

都内である理由は「師匠の近くに住むべき」という信条を持つマルチが多く(実際は監視監督するため)自分も師匠に学ぶにあたり、地方に住んでいるのは理由が付かない。ということもあるが、やはり権威を持たせやすいという理由がある。

エントランスが豪華で、エレベーターが綺麗で、廊下の床も絨毯使用だから、凄さに圧倒されてしまい多くの大学生等は特に疑問に思わないのだが、入ってみると部屋が割と狭かったりする。狭いとはいえ一応タワマンのワンルームなのでそれなりに広さがあるしても、必要最低限、見た目重視なので結果的に狭いところが多い。

・SOHOや共同利用とかしている


マルチの若い指揮官たちはとにかく稼いでいると見せることだけが重要である。ワンルーム以外でもタワマンを安く使う理由がある。それはSOHOや共同所有である。ちなみにタワマン以外でもバーや店舗を共有している人も結構いる。

現在はシェアリングエコノミーの時代だが、くしくもマルチの方々もシェアリングして凌いでいる。タワマンに事務所を構えることができるが、そこは利便性や広さはともかく実はふつうに事務所を借りるより安いこともある。少なくとも店舗のテナントに入るよりは安い。

さらにそんな事務所を実質的に「共有」することで、1人あたりのコストを下げることができる。そして人を呼びつけたり、あるいはマルチがよくやる「友達を呼ぶパーティ」の会場にするのだ。初見の来訪者は「タワマンに事務所がある凄い人」と思うだろうが、実際はシェアだったりする。

・バーを経営している


もちろん大半のバー経営者はこれに当てはまるわけではない。ことは事前にお断りしておく。

マッチングやMLM(連鎖販売)をしている人々は「俺の店」とでも言いたいのかバーなどを所有していたり、経営していることをやたら自慢する者もいる。「赤坂や銀座のバーを経営している」と言えば肩書として良く聞こえる。

そしてそれを実現するためにやっぱりバーを共有したりする。実は銀座の物件はそんなに高くない。大通り沿いのオフィスビルは1カ月の家賃が1億円するが、その裏にある飲み屋街の雑居ビル階上の物件は1カ月10万円台もある。

仮に1カ月家賃30万円のバーを10人でシェア(契約者は1人だけであくまで”所有している風の会員”が10人)すれば月3万円で済む。経営している場合もあるが、場所だけ借りて経営実態が無い人らもいる。とにかく「銀座でバーを経営している」肩書きを得ることはできるわけだ。

もちろん普通に経営している場合もあるが、身内だけしか来ない、呼ばないパターンもある。いずれにしても大体が普通の飲食店ではなくバーである。なぜかというと、コストが安いからである。

例えばこれがレストラン飲食店だったらどうか。客入りがないと流行った店とは見せられずむしろ魅力は低下する。他の物販も同様で、商品を用意したりしないとならない。一方でバーは店舗規模が小規模で済む上にそれで特に変でもないし、酒さえ置いておけば見栄えは良い。

居ぬきなら設備投資もほぼいらない。実際に経営するとしても最悪100万円からでも経営をスタートできる(とはいえまともに運営するなら500万円は用意したい)

いずれにしても一般店舗なら数千万円のところを、見せるだけなら月3万円でもできてしまうため、バー経営が多いのである。


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