雑談の功徳を思い知った件。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:ビジネスにおいて、教育において「雑談」の重要さ。教師はこどもた、いや学生たちともっと非公式なコミュニケーションを持つべきという、反省。
学生は教師と話したがってる
いつも授業開始のチャイムが鳴って、おっとり刀で教室に駆けつける、のろのろの僕なんですが(笑)、今日は前の授業が隣の教室だったので、そのままおとなりに移動しようとしたんですよ。
でも前の授業が終わらずに教室に入れなくて、外に立ってたんです。
そうすると、学生がいろいろ声をかけてくるんですね。
野球部の学生が「先生、俺この間新人戦で初勝利だったぜ」
「やったな!」
「えー、それだけかよ、もっと真剣にほめろよ!」
「わかった、次勝ったらご飯連れてくよ」
「やったー!」
剣道部の学生が、
「先生、来週の昼ごはん、ステーキ食いに連れってもらう件ですけど、
あと2,3人いいですか?」
「ああ、いいよ」
柔道部が、「俺たちも連れてってよ!」
「わかった、いつだよ?」
そんな具合で、なけなしの給料の我が身にはつらいですが、ご飯の約束が増えることに。
学生とコミュニケーションすることは、最も大事な教育だと思っているので、基本的に「メシ食わせろ」には応えるようにしています。
いや、違うんですよ、今日のテーマは、「学生におごること」どうのこうのじゃなくて、彼ら彼女らと雑談する時間が必要だなあ、という気づきなんです。
コーヒーブレイクの合理性
今日、初めて15分も開始時間より早く、教室に行ってみて、気づいたんです。
そうなんですよ、申し上げたとおり、教室に入ろうと構えていた学生たちと遭遇、彼らが色々声をかけてきたんです。
もちろん、学校を歩いていると声をかけてくる学生はいますけれど、今回はちょっと違って、彼らは堰を切ったように話しかけてきたんです。
これは、経営学的に言うと、制度とシステムが間違っているのです。
大学の価値は、学生と教員が触れ合うことにあります、いや、僕の考えでしかないですが。
でも、もしそれが一番大事だとすると、今の大学の制度やシステムは、それを中心に作られていませんね。
例えば、授業の中間地域に、別室におやつの時間をもうけて、教師と学生がお茶とお煎餅で歓談するような、制度を設けたらどうでしょう。
教室は、先生と教卓を部屋の真ん中において、教師を囲んでみんなで話し合いをできるような、格好にしたらどうなのか。
そして、教師は授業開始10分前には、教室に来て、なるべく学生に声をかけるように、就業規則を変えたらどうなのか。
学生の部屋になっちゃった
言い切ってしまいましょう。
とにかく雑談が大事です。
ビジネスもそうだし、学校もそう。
大学は、学生と教員がなるべく雑談をするような、仕掛け、制度、施設をしつらえるべきです。
僕は今日の出来事も含めて、最近とみに感じることがあるんですよ。
それは、「学生は教員と、他愛もない話をしたがってるな」、ってことなんです。
もちろん、最近大学にはオフィスアワーとやらがあって、週に一回一時間ほど、先生の部屋に訪ねてきてもいい、ことになっています。
しかし、それじゃあ、よほどのことがない限り、学生は来ませんよ。
僕はこれは自慢話でも、自虐話でもないのですが、ここ8年位ぼくの研究室は学生にジャックされてました(笑)。
知らぬ間にそこは10人ほどの学生が入り浸り、主客転倒。
自治がいつのまにか成立。部屋にはカギがかかり入室は許可制、僕もノックしないと入れないような仕組みになっていました(笑)。
学内に止まり木がない学生たちは、「こいつのとこならいけるな」という嗅覚が発達していて、一度部屋に入ればしめたものという強い無意識をもって、獲物を(笑)狙っていたようなんです。
おやつや食料を常備したり、お誕生日やクリスマスパーティなどのルーティンもやらなければならず、研究どころじゃありません。
今も、そんな住民?がいるのか、って?
ええ。相変わらず管理されてます。
雑談を大事にする欧米の社会人教育
さて、雑談に戻ると、僕がこのことを痛感したのは、10年くらい前の
スロベニアで「世界経営学教授特訓合宿」に参加したことがきっかけでした。
このイベントは、世界中の経営学教授がスロベニアに集まって、2週間の地獄の特訓よろしく、びっちりスケジュールが組まれた授業+課題をこなすチャレンジだったのです。
「これは・・」と感じたのが、次の写真なんですよ。
これは、授業と授業の間のコーヒーブレイクなんですよ。
ちゃあんと教室外にコヒーカウンターがあって、プロが挽きたての美味しいコーヒーを淹れてくれるんです。クッキーなんかも揃っています。
ここでは、強制じゃないけれども、教師と学生、学生同士がコーヒーを飲んで歓談するんです。
僕は人見知りなんで、こういう仕組みは苦手で、イヤなんですが、そうも言ってられず、がんばりました(笑)
でも、こういう仕組みを作って、雑談を制度化している欧米のビジネス教育の、思慮深いことって言ったら・・。
日本って、ほんとにこういう雑談と言うか、遊びと言うか、自然なコミュニケーションする仕掛けがないですね。
だからうまく行かないんだ、とは言わないけれど、もっとこういう雑談のしくみを作れば、もっと物事がスムーズに行き、本音も飛び出し、お互いの関係も飛躍する、と思うんですよ。
その道具としてのコーヒーも、もっともっと価値が出てこないとおかしいですね。
ここですよ、コーヒーの新しいプロモーションは!
ユー、飲み会なんてやめちゃいなよ!
きのう、「ユー、飲み会なんてやめちゃいなよ!」って言いましたけれど、
(全然ウケがよくなくて、みなさんの「そんなの反対」!を感じたんですが)、欧米は考えてみれば、こういうコーヒーブレイクで代替してるんですね。
よる2,3時間の重たい飲み会より、ひる15分の軽いコーヒーブレイクのほうが、タイパがいいんじゃね、そう思うんだけれどなあ。
さて、来週月曜は剣道部10人くらい連れて、お昼ステーキです。
学生さんがいてくれて僕らも食べていかれるんですから、たまにはサービスもしなくちゃね。
もっとも、これからは「たまに」が「いつも」になりそうな勢いなんですが。
でも学生が嬉しいことを言ってくれたんですよ、「いっぱい食べて、いっぱい話したい」、と。
授業なんかより、雑談のほうがずっと学生も楽しいだろうし、ためにもなると思うんですがね。いやいや、僕の授業にかぎってのことですが。
野呂 一郎
清和大学教授
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