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シネマ歌舞伎:風の谷のナウシカ

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を見てきた。めちゃくちゃ面白かった!

ナウシカ自体は、小学生か中学生くらいのときに原作の漫画に出会って、自分の人生に結構なインパクトをもらった作品だ。漫画だと7巻あって、映画だと1,2巻くらいまでしかカバーできていない。公開当時は完結してなかったからだ。今回の歌舞伎では7巻全部やるという。どのくらい表現できるのか、原作ファンとしてはとても気になったし、古典芸能の世界でチャレンジするってすごいなと純粋に思った。なかなか時間の都合が付きづらくて舞台には行けなかったのだが、ディレイビューイングとして映画館で見られると聞いてチケットを購入し、見ることがかなった。

テトとの対話「痛くない。」から始まって、あの映画のあの感じを再現してくれていた。これにはちょっとニヤけてしまった。個人的にはチャルカ、ケチャ、庭の主が演ずる方もかなり凝っていて、再現度合いにかなり気合いが入っているなと感じた。脚本では、力を入れるところと抜くべきところの緩急がすばらしかった。腐海や瘴気は重要な要素なのだが、瘴気マスクについては一度だけ導入で使い、後は省略していた。このあたり漫画や映画だと、粘菌がここまできていたら瘴気マスクなしでは血を吐いてしまうだろう、などと、いちいち考証が細かくなりがちだが、演劇ならではのやり方がうまいなと思った。

ただ、段々と物語が加速していって、省略部分も多くなり、台詞も増えて、かなり見る側の想像力が要求されたと思う。粘菌が大きくなりすぎて、一気に大海嘯が進むシーンなどは台詞や背景画で想像するほか無いし、場所についても和風な設えのためか、今、空の上だっけ?城だっけ?と一瞬場面がわからなくなったりした。正直、後編は脳みそが疲れたが、風の谷のナウシカ全7巻を忠実に再現できていたと思う。

お気に入りのシーン

前編
・ナウシカ少女の頃に王蟲を取り上げられるシーン・・・泣いた。
・マニ僧正が部族に語りかけるシーン・・・これも泣いた。
・ユパとアスベルがドルクと戦うシーン・・・歌舞伎ならではの立ち回り。かっこいい。
後編
・大海嘯の末、胞子が舞い降りるシーン・・・演出がすごい
・庭の主(中村芝のぶ)がナウシカの母に扮するも見破られるシーン・・・男と女の切り替わり方に驚いた。
・墓の主が道化に憑依しナウシカと問答するシーン・・・鬼気迫る演技!

とにかく、全編を通して風の谷のナウシカへの深い理解を感じられ、舞台装置、演出、音楽、踊りといった歌舞伎ならではの醍醐味を味わえた。これまで歌舞伎なんて見たことなかったけど、別の作品を見に行きたいなと思った。

約6時間の大作だが、まだご覧になってない方がいれば是非見てもらいたい作品だといえる。


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