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3月に観た展覧会。

2023年11月24日に開業した麻布台ヒルズ。
同施設内に設置されたギャラリーの杮落としとして開催中のオラファー・エリアソン展を観て来ました。


麻布台ヒルズギャラリー開館記念展 [オラファー・エリアソン展:相互に繋がり合う瞬間が協和する周期]

蛍の生物園(マグマの流星)
Firefly biospher(falling magma star)  2023

オラファー・エリアソンの作品、好きなんです。 

造形や光が有無を言わさず美しくて、幾何学的な構造や素材に対するアーティストの探求心に、なんというか、学研の付録とかにワクワクする小4男子の心が反応してしまうのだと思います。

現代アートに興味はあるけど、難しそうで何から観たらいいのか分からない。という人がいたら、1番にオススメしたい。

溶けゆく地球(カドミウム•イエロー、グレー)
The melting glove(cadmium yellow,grey)

また、彼の作品からは、自然への憧憬を感じます。
幼少期、お父さんの住んでいるアイスランドで見た大自然の風景が原体験にあるようです。

「溶けゆく地球」は、絵の具とともにグリーンランド沖で採取された氷河のかけらを置き、氷河が溶けるにつれ絵の具が流れ、その軌跡が紙に残された作品です。

水墨画のようでもあり、地図のようでもあり、水の流れが大地を形作るプロセスを想起させます。また、氷河の消失という事象から、気候変動への憂慮を含んだ作品でもあります。

終わりなき研究
The endless study

「終わりなき研究」は、ハーモノグラフという、振り子を用いて幾何学模様を生み出す装置を再現した物です。

紙を置く土台を支える柱、ベアリングを通じてペンを支持する2本の柱。この3本の柱は振り子になっていて、重りを調整することで振り子の周期を変化させることができます。異なる周期の相互作用によって、描かれる模様が変化していきます。

終わりなき研究のドローイング

異なる周期が重なり合い、多層的な周期を生成する。まるで音楽みたいだなと思いました。これ、仮にそれぞれの振り子の周期を「ド・ミ・ソ」の周波数に調整したら、「ド・ミ・ソ」の和音が視覚化されるっていうことになりますよね。え、ヤ・バ。
(ドの周波数はおよそ260Hzなので、1秒間に260回振れる振り子とか現実的にはあり得ませんが、、、、)

体験の価値とは

初めて行く場所だったので、グーグルマップでアクセスを確認した際、

・展示が少なくてすぐ終わる
・その割にチケットが高い

といった口コミが目立っていました。

さらにアートの専門メディアでも「この規模の展覧会としては強気な価格設定」と書かれていて、

正直な所、「1800円で高いとか何言ってんの?大丈夫?しかもメディアも言うんかい?」と思いましたが、ちょっとこの辺りについて考えて見ようと思います。

実際、展示の量は少なめです。私は事前にそうした口コミを見ていましたが、それを知らずにたくさんの作品を期待していたら、あくまで期待値と実際のギャップによって、がっかりすることはあるかもしれません。

でも、結果として大変満足しています。そのポイントを考えると、

1:好きなアーティストの作品の実物を間近に見れる
2:一つ一つの作品をじっくり観れる
3:最後にアーティストのインタビュー映像を持って来た

かなと思います。

1:好きなアーティストの作品の実物を間近に見れる
これは説明不要かもしれませんが、今回に限った話ではなく、実物を観れるのは最大の体験価値ですよね。

2:一つ一つの作品をじっくり観れる
短い展示、大いにありだと思っています。もちろん大規模な展覧会も好きですが、(2020年の東京都現代美術館でのオラファー展も本当に良かった。)
アート観るのってエネルギー要りますよね。日常使っていない部分の脳みそがブンブン稼働されるので、後半になると集中力がもう無い時も結構あります。
今回くらいの規模だとゆっくり、じっくり観る。ということになるので、自然と一つ一つの作品を深く楽めます。普段は買わないのですが、今回は図録も購入してじっくり読んでいます。

3:最後にアーティストのインタビュー映像を持って来た
この構成、良いなと思いました。もう終わりかな、もう少し観たいな、というところに映像を持ってくる。
大規模な展覧会で映像作品、あるいは映像を使ったインスタレーションが多いと、全てを観切るのはちょっとしんどく感じる事もあるので、短い構成の中にある程度尺の必要な映像を配するのは有効だと思います。

今回の映像は麻布台ヒルズ内のビルのロビーに展示されたパブリックアートについてのインタビューだったので、ここからロビーに観にいく導線づくりにもなりますし、私は映像を観た上で改めて関連作品を観に順路を戻ってみたりしたので、色々使い用がありそうだなと思いました。

麻布台ヒルズにはここの他にもギャラリースペースがあり、また、チームラボの常設展示施設もあるので、ヒルズ全体の回遊性を考えると、長尺の展覧会はかえって来場者の満足度を下げかねず、総じて、大切なのは体験の量ではなく設計かなと思いました。1日かけて堪能する展覧会ももちろん好きですが、短い時間で刺激を受け取って、その後の時間を有効に過ごすのも良い1日になると思います。

読んでくださってありがとうございました。


トップ画像「呼吸のための空気:The air we breath」




↓オラファー・エリアソンを取材したネットフリックスのドキュメンタリー番組






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