「ゆっくりできましたか」
真っ青な芝生の上に座って雲が反射して灰色に染まる琵琶湖を眺めながら黄昏ている僕は今、
“無”になっている。
大津駅から琵琶湖に向けて太く伸びる通りにある「gururi」というカフェでカレーとコーヒーをいただいた後、しばらくその場で考えごとをしていた。
経験も、正解もない問いと向き合う時間。
ここのカフェの店主の方は道産子。妻は岡山の出身。だから、勝手に運命を感じていて、本日は2度目の訪問だった。
前回の訪問で、札幌の話をしたから、注文をする際に、「次はいつ札幌に帰るんですか?」と聞かれた。「僕、来年から札幌なんです。」と答えた。
“そうだった。”
周りのお客さんは誰もいなくなっていた。
レジに向かうと店主の方に
「ゆっくりできましたか?」と笑顔で聞かれた。
おそらく、悟られていたのだろう。
「はい!長く滞在してしまってすみません。」
「とんでもないです。いつでも、待ってますよ。」
お店を出るとき、カレーを食べ終わってから既に4時間以上が経過していた。
「ゆっくりできましたか?」
あのゆっくりとしたあの口調は、まさに北海道民のものだった。
灰色に染まる芝生の上に座って真っ黒な琵琶湖を眺めながら黄昏ている僕は今、“無”のままである。
〈POPEYE構文に挑戦〉
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