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生活に青色の光がさすとき

僕の生活に事件は何も起きない

春の足音が聞こえてきそうな渋谷をひとり歩いていた。約3年、仕事で渋谷に通っている。「職場が渋谷なんて」と、最初はこころを躍らせていたが、最近はもうどうでもよくなっている。渋谷にいる人たちと群れてやっていける自信がない。なぜ人は渋谷に集うのか、僕にはわからない。

日々の刺激を追い求めて渋谷に行く人たちを「朱に交わる人々」だとするならば、僕はローンウルフなのである。誰かの刺激をうけて感化されるより、自分からなにかを求めて感化されるほうが僕は好きだ。そのようなことをしていると、日々の生活に事件は起きないのである。

好きなことを好きなだけやっていきたい。働かなくていいなら働きたくない。あわよくば高等遊民になりたい。時間があればずっと本を読んでいたい。時間があれば図書館にこもりたい。積ん読もたくさんある。働いているから時間がないのだ。まじめな学生時代をすごし、まじめに働き、税金もちゃんと納め、罪を犯さずにまじめに生きている大人には、たとえニートになっても生活していけるように支援をしてほしい。もしAIに負けるようなことがあれば、もう高等遊民でいい。それでも続けられなくなったらもうこの世界からいなくなってもいい。もうどうにでもなれとも思う。レーゾンデートルをここに問う。

齢29、独身、1人暮らし。平々凡々な日常をおくる中で、大人だって青春がしたい。いや、大人でも青春ができる。

たまに参加する読書会で本好きの人と交流し、最近では競技クイズを始めた。最近参加した早押しクイズ大会で

「足高の制、上米の制、目安箱の設置などの政策で知られる…」

という問題が出た。

僕は「これは!!!」と思い、自信満々に「享保の改革!!!」と答えるもブーッという不正解音がなり「残念!一回お休みで~す」といわれ、「なんで!?」と思った。ちなみに答えは「徳川吉宗」だった。

よくよく考えると答えを「享保の改革」にするならば

「江戸幕府8代将軍・徳川吉宗が行った政治改革で、」

から始まるのがクイズの構文としては正しい。そう分かった瞬間、「クイズっておもしろい!!!」とわかった。そのときはじめて、自分の生活に青色の光がさしたような気がした。新しいことをはじめたときのワクワクはここにある。言葉にならぬ瞬間に立ち会い、喜びをかみしめながら帰りの電車で、夕日に染まる茜色の車窓を眺めていた。久しぶりに新しい気分に浸れたのである。

将来への漠然とした不安を抱え、夢と希望にあふれながらも、どこか自分を見失っているような感覚に惑わされる。今もなお、強い自身がもてず、自己が確立されていない。漠然とした不安はありつつも、ひとつひとつ、ゆっくりと生きていたい。丁寧な暮らしはできないけれど、それなりに豊かな暮らしはできていると実感する。それは新しいなにかを見つけたときによく感じることだ。社会とかかわる有意義な生き方をすれば、もっと自分が見ている世界がかわるのではないか。そんなことを思う。

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