"オールドルーキー"小島聡

新日本プロレス所属の小島聡がプロレスリング・ノアに主戦場を移して2ヶ月以上が経過した。

ノア登場直後はファン、というより私自身が「天下り」のように感じていた。実際史上最高のXとして登場した小島の姿を観た両国国技館の二階席で友人に「コジ転職したの?」と思わず口にしていた。

我ながら非常に嫌らしい言い草だったが、直近のノアでは武藤敬司や藤田和之のように他団体で実績のあるベテラン選手がGHCヘビー級のベルトを獲得して入団、というケースが見られたのでまたこのパターンか、くらいに斜に構えた見方をしていた。

しかしながら潮崎豪からGHCヘビー級のベルトを奪取し、ノアで戦う小島聡のひたむきな姿に胸を打たれてしまい気付いたら応援をしてしまっていた。

では何故今コジの事が好きになったのかと考えてみる。

1.コンディションの良さ
2.武藤や藤田とは異なるノアでの立ち位置
等複数あるが矢張り1番強い要素はタイトルにも書いた3.オールドルーキーという部分だろうか。

1.のコンディションの良さについてはリング上でのスピード感とパワフルさを観てストレートに感じた。

2.の立ち位置について、武藤や藤田はノアに入団したものの天才や野獣というキャラクター性もあってか、ノアに上から目線で君臨し圧倒的な存在感で自由に振る舞う事で二人の魅力を引き出しているように感じられた。言うなれば団体に帰順せず、所属といえど他所からの価値観をノアに持ち込む外敵のような存在である。

ところが小島聡については、タッグを組んだ清宮にはメンターのように声をかけてやり、次期挑戦者として名乗りを上げた拳王とは肉体だけでなく言葉を駆使して抗争を繰り広げ、新日本参戦時にもGHCヘビー級の王者としてノアの団体Tシャツを着用して出場したりと、ノアに対する献身さが感じられる。

前置きが長くなったがそこで3.のオールドルーキーだろう。
これは今期の日曜劇場でスタートしたドラマのタイトルで、綾野剛演じる主人公のJリーガーがサッカーを辞めねばならなくなり、紆余曲折を経てスポーツマネジメントを行う会社にどうにか就職し、アスリート時代の経験や知識を活かして新たな仕事に打ち込んでいくという内容である。

新日本では活躍の場を失いながらもノアという新たな戦場で献身的にイキイキと全力で戦う小島の姿に、従来の外敵ではなくオールドルーキーのようなフレッシュさすら感じてしまうのだ。

勿論これは抗争相手となった拳王の存在が大きい。
拳王は小島に「ノアは新日本の天下り先ではない」「新日本が恋しいんだろ」等のネガティブだが私自身も少なからず感じていた疑問をぶつけている。

拳王の口から出る事で我々の感情は少なからず浄化され、自身の抱えていた言葉の棘や穿った見方に対する客観的な気付きを得る事が出来る。

更にはノア所属として至宝を奪還する立場にも関わらず「正論を振りかざす」ようにも見える拳王と、自団体のトップグループから離れたままの他団体参戦で当然葛藤はあるにも関わらず、それを感じさせないひたむきなファイトを繰り広げる小島の姿が対比され、特に本来は外敵である筈の「オールドルーキー」に感情移入しやすくなっているシチュエーションの組み立て方はお見事である。

特に拳王はyoutube上で昔のグラビア写真やコスケ時代の話まで持ち出してこき下ろしており、観客に小島のヒストリーを紹介しつつ全力で挑発する卒のなさが本当に素晴らしい。

最後に、二人の対立を見て、以前脚本のスクールに通った際に教師から「ドラマの基本は葛藤と対立」と口を酸っぱく教えられた事を思い出した。

7.16の日本武道館大会での対決が本当に楽しみであり、対立を経て二人のドラマが更に発展しそうな部分も非常に見どころである。


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