ショートショート①

今日もあっという間に外が暗くなった。

時間の進み方は変わらないはずなのに、
時の流れは早くなっているようだ。

今日は湯船に浸かろう。
寒さに耐えかねて、湯船にお湯を張る。

時間が経ち、湯船を確認する。
左手をお湯につける。あまりに熱い。
あっという間に手は赤くなった。

諦めて体を洗う。
体を洗っているうちに程よい温度になったようだ。

湯船に浸かる。
体にぬくもりが染み渡る。
大きくため息をつきながら目を瞑った。

ふと、意識が遠のく。
眠たいのか、のぼせたのか、
それさえ考える暇もなかった。

ふと目の前が明るくなる。
ここがどこかは分からない。
分かるのは目の前にイルミネーションが見えるということ。

気がつくと、左手があたたかい。
左を向くと、一人の女性が自分の左手を握っていた。

どこかで会ったことがある気がする。
名前を聞こうと思ったが言葉が出てこない。

彼女も言葉を発することはない。
嬉しそうに笑っているだけ。

イルミネーションが急激に明るくなっていく。
それと同時に、一気に寒さが増す。

前が見えなくなってきた。
目を開けていられない。

体も冷えてきた。
このままじゃあ凍えてしまう。

もう耐えられない。
体を丸めるように右手で顔を覆ったときだった。

突然、視界が開けた。
意識が戻ったようだ。

あまりに一瞬の出来事だった。
何が起こったのかよく分からない。

しかし、湯船のお湯はかなりぬるくなっていた。
体もかなり冷えている。

なぜか、左手だけ浴槽の外に出ている。
浴槽の外に出ているのに、
左手はあたたかく赤くなっていた。

冷えた体を少しシャワーで温める。
体を拭き、着替え、髪を乾かす。

時計を見ると、2時間以上経っていた。

時間の進み方は変わらないはずなのに、
時の流れは早くなっているようだ。


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