ショートショート②

ゴールデンウィーク最終日、
友人2人と私の3人でサイクリングに出かけた。


まだゴールデンウィークの時期だというのに、
午前中から真夏日。

予報では、今日は猛暑日になるらしい。


暑さ対策、水分補給には気をつけよう。

そう確認してから、街中、海沿い、山道と、
一日中自転車を漕ぎ続けた。


暑さと疲労でくたくたになりながらも、充実感が漂う夕暮れ。

ほんのり涼しさを感じる風に、体の火照りを感じる。


夜になり、友人宅で酒を交わす。

運動後のビールがいつになく体にしみる。

クーラーもかなり強く効かせ、体の内外から火照った体を冷やす。


普段より飲むペースが早い気がしたが、
「こんなものか。」と気にせず飲み続けた。

私より酒に強い2人は、相変わらずのペースで淡々と飲み続ける。


少し飲みすぎたな、ぼーっとする中トイレに向かった。




気づいたら家のベッドで寝ていた。

どうやら記憶をなくして、気づいたら家に帰っていたようだ。


初めての経験だったが、「こんなものか。」と思った。

外を見ると雲が広がっているが、夜が明けようとしているのが分かった。


少し体が熱い。昨日のサイクリングの影響か、体にはまだ火照りが残っているようだ。

朝はまだ涼しい。体を涼められるだろうと思い、散歩に出かけることにした。


なんとなく、川沿いに出るルートを歩く。

川沿いにたどり着くと、川には濁流が流れていた。


昨日は晴天で少し不思議にも感じたが、

「こんなものか。」と思い、気にせず散歩を続けた。


少し歩くと突然、大雨が降ってきた。

傘も何も持ち合わせていなかったが、体の火照りも取れるしどうせ着替えるし、こういう日があってもいいだろう。

「こんなものか。」と思いつつ、歩き続けた。


雨に打たれ少し寒さを感じていると、目の前に橋が見えた。

あんなところに橋なんかあったかな。今まで気づいてなかっただけかもしれない。

「こんなものか。」と思いつつ、橋に近づく。


最近できた橋でもなさそうだ。

かなり体も冷えてきたため引き返そうかと思ったが、初めて見る橋で興味も湧き、渡ってみようと思った。


その時突然、右腕を引っ張られた。

驚き後ろを振り返ると、誰かが私の腕を引っ張っている。

顔はよく見えない。しかし、見知らぬ人ではないような気がした。


橋を渡るなとでも言うのだろうか。

不思議にも思ったが、今橋を渡らなければならない理由もない。


体もかなり冷えてきたし、「まあいいか」と思い、

大人しくその人についていく。


その人は、私が歩いてきた道をさかのぼっていく。

気づいたら雨は止んでいた。少し寒さが和らいできた。


途中で、もう一人現れた人と合流した。

その人の顔もよく見えない。

よく見えないが、見知らぬ人ではないような気がした。


二人は知り合いのようだ。

二人の間で何かを話しているようだが、よく聞こえない。

「まあいいか」気にせず二人についていく。


私の家の付近にやってきた。

二人は私の家を知っているかのように、路地を曲がっていく。


少し不気味にも思ったが、そういう日もあるだろう。

「まあいいか」気にせず二人の後ろを歩く。


とうとう私の家に着いた。

また二人の間で何かを話しているようだが、またしてもよく聞こえない。

「まあいいか」二人と別れて家に入る。


そこまで歩いたつもりはなかったが、雨にも打たれて思いの外疲れたようだ。

まだ寝る時間もありそうだったので、服を着替えてそのままベッドに入った。


温もりを感じる中、気づいたら眠りに着いていた。




次に目が覚めると、心配そうな友人2人の顔が目の前にあった。


ここはどこだ。自分の部屋ではない。

状況が飲み込めないが、安心した様子の2人。


そしてその後ろに、白衣を着た医師と思われる人が立っていた。

どうやら病院の一室にいるようだ。


何があったのか友人から話を聞いた。

昨夜、トイレに行ってからなかなか帰ってこず心配して見に行くと、

トイレの隣の風呂場で倒れていたそうだ。


誤って出したのか冷水のシャワーに打たれ、

体がかなり冷えていたらしい。


意識もなく顔も青ざめていたので、慌てて救急車を呼んだとのこと。

低体温症でかなり危険だったそうだ。


2人は少し私と会話をして、医師にも確認を取ると、家に帰るとのこと。

支度をして、大学の授業に向かうらしい。

幸い、午前中の授業には間に合うそうだ。


2人が病室を後にした直後に、医師から言われた。

「今回一命を取り留めたのは奇跡と言っていいくらい、危険な状態だったよ。

もう少し遅かったら間に合わなかったかもしれない。ふたりに感謝しないとね。」


ほんとにその通りだ。

2人にも感謝しなければならないし、今後は酒の飲み方に気をつけなければ。


「よし、もう数日入院して、体調を元に戻そう。」

そう言われ、医師とともに違う病室に移動した。


移動中に、ふと思った。
あれは夢だったのだろうか。

眠っている間に見たのだから、夢と言ってよいのだろうか。


不思議な夢だと思ったが、

「まあいいか」気にしないことにした。


移動した病室でテレビをつけると、

朝の天気予報をしていた。


今日も一日、気温が高くなるそうだ。


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