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『四月になれば彼女は』を読んで

「このキャストは間違いない」

 それがこの本を手に取った最初の理由だった。(映画と小説どっちがいいかというよりも、わたしは小説を読んでから映画を見たい派だ。)

 佐藤健、森七菜、長澤まさみさん、この本を読みながら彼らが演じている様子が浮かんだくらいだ。

そして、
「気づけば恋が人生から消えている」という新海誠の言葉。
「恋愛なき時代における異形の恋愛小説」というあさのあつこの解説。

 恋が始まってもいつか終わりが来るとか、一緒にいるとときめきがなくなって家族みたいになってくるとか、よく聞く言葉たち。

 その感情たちを知りたくて読み進めた。そして引き込まれた。

 究極「恋」、「愛」というのは何なのか答えは出てないだろう。夫婦間のセックスレスをテーマとしたドラマ『あなたがしてくれなくても』は話題になっていた。水面下で共感する人が多かったということなのかもしれない。そして、1番盛り上がるのは恋愛の話だったりする…。

 愛の形が多様化、いや本来は多様なはずなものが異性愛に縛り付けられていた時代から良くも悪くも多様性が叫ばれる時代になる中で、結婚を選ぶ人、選ばない人、がいる。周囲が結婚していく中で、仲間と会える時間を大切にしたい、けれどもそれは無理なのだろうと感じている人もいる。

結婚は、ただ1人のために他のすべての人を捨てることを言う。

 過激な言葉だが、その通りだと思った言葉だ。同棲している友人と久しぶりにあったが、彼氏との予定を第一に考えている姿に、行っていいよと言ったものの寂しさを覚えた。これからどんどんこの感情が増えていくのかと思うと正直苦しい。

 ただ、だからこそ川村元気の小説を美しいと思った。正解などない。けれども登場人物の言葉たちが響いた。私の知らない感情たちを教えてくれた。わたしは恋愛している人たちより1人でいる人たちに焦点を当ててしまうが、セックスをしなくなり相手が幸せかどうかわからない中で結婚へと進んでいるとき、人はどう思うのか。恋が消えている中で愛とは何なのか。

今の時代を生きる人たちに読んでほしい小説だった。川村元気、心揺さぶる作家だ…。

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