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「愛媛県・八幡浜チーム」初回セッション(後半)

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局の湯浅です。

「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では、未来につながる食の循環をみんなでつくることをミッションに、食べられるのに使われていない(=未利用)資源を使って商品を開発する「未利用魚活用プラットフォーム」を立ち上げています。
 
2022年12月4日に「八幡浜チーム」の初回セッションを地域の方、流通の方、T会員の皆さまとオンラインで開催しました。午後の部は、オンラインフィールドワークで発見した魅力や課題をもとに「アイゴを活用した商品」を通じて、社会に対して発信したい「価値ストーリー」を考える共創セッションを実施しましたので、その様子をお届けいたします。(午前の部はコチラから

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●参加者
株式会社オーシャンドリーム 松浦さん
株式会社信濃屋食品 岩崎さん
ライター 山本さん
4名のT会員
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局メンバー
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1. 参加者の自己紹介

早速自己紹介と、「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由も添えてスタートです。

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◯信濃屋食品 岩崎さん
<自己紹介>
信濃屋食品は世田谷にスーパー3店舗、首都圏で13店舗のリカーショップを運営しており、商品部の部長をしております。私たちは、「生産者の想い・こだわり」で、消費者の方に価値をしっかり伝えていくことを大切にしながら活動しています。 

<「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由>
お米ですね。日本の誇れるお米ですが、非常に消費が落ちているので、水田稲作が元気じゃないと!ということも含めて、食べるようにしています。特に大好きなのは、宮城の自然栽培のササニシキで、おかずとのバランスも踏まえて大切に食べています。 

◯オーシャンドリーム 松浦さん
<自己紹介>
今回八幡浜チームのリーダーとして、アイゴを使った加工品の製造を担っています。 

<「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由>
愛媛県は自然豊かで、隣の大津市ではオーガニックの野菜を作っており、その野菜をいただいています。 

◯T会員 Hさん
<自己紹介>
ダイビングが趣味で海の変化に危機感を持っており、未利用魚にも興味があります。
午前のオンラインフィールドワークではA4の紙3枚ほどの発見があり、いろんな事を知り、とても楽しく参加させていただいています。 

<「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由>
普段というわけではありませんが、バレンタインのチョコレートは、環境や人権に配慮している商品を購入したり、コーヒーは比較的エシカルなものが多いので、なるべく買うようにしています。 

◯T会員 Sさん
<自己紹介>
山の生態系を大切にするための活動をしていますが、山から海の生態系の問題に共通点もあると思い、参加いたしました。午後も楽しみにしています。 

<「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由>
山の生態系の活動もあって、鹿や猪などジビエのお肉を取り寄せたり、スーパーで見かけたら買ったりしています。 

◯T会員 Nさん
<自己紹介>
午後からの参加です。小さい子供がいるので、仕事以外では育児に追われている毎日です。 

<「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由>
子育てを始める前から旅行が好きで、地産地消の考えで道の駅で地域のものを買って帰ったり、アンテナショップで地域の名産品を買うことが多いです。 

◯T会員 Fさん
<自己紹介>
同じく午後から参加します2児の母です。持続可能な地球資源に対して、消費者として何かできることがあればと思い参加しました。 

<「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由>
私も旅行が好きなので、道の駅で農家さんが出品されているものを買ったり、スーパーでは国産・オーガニックのものを選ぶようにしています。 

◯ライター 山本さん
<自己紹介>
編集・ライターをしており、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」ではホームページや、皆さんのセッションを記事化したり言語化したりしています。八幡浜の記事も作りました。 

<「エシカル」な魅力を感じて買っている商品と、その理由>
自然栽培のもの、お茶は日本の和紅茶を選ぶようになりました。
あとは食べ物ではないですが着物が好きで、着物をリサイクルで買うというのは、昔からあるエシカルなものかなと考えています。

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それぞれの人となりを知ったところで、今回「八幡浜チーム」として、商品開発から販売までご一緒いただく「信濃屋」さんがどんな企業なのか?を、信濃屋食品の岩崎さんよりお話いただきましたので概要をご紹介いたします。 

2. 信濃屋について

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  • 1930年創業、あと8年で創業100年

  • 世田谷中心にスーパー3店舗、首都圏にリカーショップ13店舗展開

  • 生産者の想いを大切に素材の味を活かした商品を推奨して、生産者と共に開発販売している商品が多数

  • 日本の誇れる伝統文化として、調味料をはじめとする木桶仕込みの商材や樽や熟成は得意分野

  • 木を大切にした部分ではウィスキーやワインなどじんわり熟成することで美味しくなる大量生産ではないものを推奨しながら、食品・お酒の自社開発を手がけている

生産者さんの想いや日本の伝統製法を大切にしながら、美味しく食べること、作ること、お店を通じて伝える大切さ、生活者として知る大切さ、それに関連する様々なお取り組みについてお話をしてくださいました。商品開発においてもプロフェッショナルな岩崎さんがチームに参加してくださり心強いです!

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 続いて「八幡浜チーム」で、アイゴの商品を実際に加工・製造するオーシャンドリームさんについても、代表かつチームリーダーでもある松浦さんより簡単にご紹介いただきました。

3. オーシャンドリームについて

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  •  父親の代につくった36年目の会社で、八幡浜の市場で揚がった魚を買付け、工場で加工

  • 未利用魚に関心があり、八幡浜で獲れた低利用魚・未利用魚を使った製品を作りたいと考えていた。最近では、コロナ禍で養殖真鯛の行き先がないと漁師さんから相談を受け、養殖真鯛の商品も開発中

  • 農業にも着手。「みかん」やフィンガーライムも無農薬で生産開始

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 さて、ここからは、オンラインフィールドワークを通じて発見した八幡浜の魅力と課題について、それぞれ皆さんが感じたことを2つのグループに分かれて共有していきます。

4. オンラインフィールドワークを通じて発見した八幡浜の魅力と課題

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<八幡浜の魅力と課題は?>
グループ1
●海もあって、山もある自然、温暖な気候
●水平線に沈む夕日がきれい
●リアス式海岸。瀬戸内海、宇和海、太平洋。
●もともと海の食物連鎖が循環していた地域
●魚種が豊富(年間200種類)
●アイゴが処理さえできれば、実は美味しい!
●松浦さんが骨切りが必要なハモを扱ってきたので、アイゴの棘の処理が負担にならない強み!
●段々のみかん畑
●天皇陛下に献上された日の丸みかん
●温暖な気候で人も穏やか
●魅力はあるが、うまく発信できていない?
●ブランド魚の発信は九州は上手だが、獲れている魚が同じ八幡浜はどうだろうか? 

グループ2
●石を積んだ段々畑と静かな湾、テロワールを表現できそう
●海と山、両方ある地域。両方のものが合わさった商品がまだない
●景色が素晴らしい、段々畑から海が見える
●みかんの花、香り、夕焼け、五感で魅力を感じる
●1つのテーマで観光客が来る時代(段々畑から夕日を見る)
●アイゴが実は美味しいこと。エシカルだから無理して使うではなく知らなかったけど美味しい魚がある
●魚種の豊富さ。スーパーにも多くの魚が並んでいる
●地元の方が地元の魅力を感じていない奥ゆかしさ
●アクセス、位置のイメージがわきにくい 

<八幡浜の漁業やアイゴの魅力と課題は?>
グループ1
●アイゴは棘のある魚で、放置すると臭くなるので、その場に血抜きが必要なことや、とげの処理などの手間がかかる。手間をかけただけ価格も含めて価値をつけられるか
●松浦さんは処理ができるが、他の地域だとアイゴの処理が大変だとすると、アイゴの処理の技術をブランディングしたらどうだろうか
●手間をかけて美味しいモノづくりをしているが、その価値を地域の人は気づいていない
●テロワール観点でそのエリアだからこその価値がいかに生み出せるか
●かっこいい漁業の発信
●マルシェで漁師さんがアイゴのフライを販売している。一手間かけて美味しくすることで現地の人にも受け入れられるのではないか
●年間で200種類の魚が獲れるとすると、アイゴ以外にも未利用魚があるのでは

グループ2
●瀬戸内海、宇和海、太平洋の恵まれた漁場で魚種量が多い
●実はアイゴは美味しい、冷凍しても美味しい
●イカやタコも美味しい、難しい作業なしで食べられる
●漁業が廃れてきており、漁獲量も減っている
●市場に並んでいる魚の処理の荒っぽさ

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オンラインフィールドワークや現地の視察を通じて、地域の観点と漁業の観点で八幡浜の魅力と課題について多様な視点で共有することができました。この発見を踏まえて、このあと商品を通じて伝えたい「価値ストーリー」について、深めていきます。 

5. あなたがこの商品を通じて伝えたい価値はどんなこと?

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◯T会員 Fさん
まずは「アイゴ」のおいしさを伝えたいです。それから、衰退しつつある漁業の従事者が、適正価格でアイゴを取引できるような状況を作れたらいいと思います。 

◯T会員 Hさん
同じく「アイゴ」が美味しいということを知ってほしい。「アイゴ」は今は0円かもしれませんが、美味しい魚といえば、お金を払う方もいると思います。未利用魚というネガティブなイメージではなく、みんな知らなかったけど、実はこんな美味しい魚があって、「アイゴ」という名前で、これを食べることによって海の生態系が守られるというような、後からそういうストーリーがついてくることで、ポジティブに取り上げていただいた方が良いと思いました。 

昆虫食も今キャッチーで話題ですが、その前に日本にはまだ未利用資源があってその一つがアイゴですというような、今話題になっているようなことと組み合わせるといいのでは?と。自給自足率が魚はまだ57%あると伺いましたが、タンパク質がなくなったら国民全員が困るので、関係ない人はいないし、そうして自分ごとと思わせることが必要かと思います。 

そういうことが若い世代に伝わると親にも伝わるので、そんな形で、「アイゴちゃん」に光が当たればいいなと思います。 

また自分自身が「エシカルだから買ってください。」と言われても、なかなか手を出しにくいですが、「美味しい!」と言われたら買いたいし、「みんなが知らなかった!」と言われると、時代の先端で買いたくなります。 

◯T会員 Sさん
今のHさんのご意見と同意で、私もまず「ポジティブ」なことで購買意欲が湧きます。私の場合は、ポジティブ=楽しそうから入るのですが、今回の「アイゴや未利用魚」は、響き的に地域活性とか「なんとかしなきゃ」というネガティブなところから入る気がするので、ポジティブな地域の魅力、例えば夫婦仲がいいとか、景観が素敵なところで獲れたお魚だよ、しかも美味しいよ!となると、買いたいな、食べてみたいなと思います。エシカルと言われると少し重いので、気楽に買おうという気持ちにはなかなかなれなくて。買うと楽しいことが起きる!というポジティブ感を表に出せるといいのかなと感じました。 

◯T会員 Nさん
私も、皆さんと重なります。いち消費者として自分ごとに考えられるのは子供の食事。子供の食生活にとってプラスになるようなキーワード、栄養価で言えば、「タンパク質」が魚が豊富、成長に必要な栄養素という事をうたいつつ、味は美味しく子供が食べやすい、かつ実は廃棄されている「アイゴ」というストーリーが後ろにあるとなるほどなと思い、購入したいし、また買いたくなります。
うちはまだ子供が1歳ですが、小学生は授業でSDGsもあるので、こういうストーリーを子供と話せると商品としても付加価値が上がるのかなと思いました。

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伝えたい価値だけではなく、その価値をどう伝えるか?どう自分ごと化できるか?という発展的な視点もいただきました。また小さな子供からお年寄りの方までみんなが魚が大好きだよね。というお話をきっかけにアイゴの商品アイデアとして、真空パックで簡単に食べられるアイゴの漬け丼、金沢のかぶら寿しアイゴ版、しめ鯖風にしたアイゴの上にみかんの皮を乗せて八幡浜の素材を生かす、うなぎのような蒲焼風など、調理アイデアまで。 

松浦さんは、アイゴの漬けはもう試されたようで絶品だったとのこと、蒲焼は皮が臭みが出る可能性がありそうですが、オイルコンフィ、昆布締め、コンフィ、焼き物、煮物、揚げ物などの試作にチャレンジされるようです! 

またT会員Hさんがアイゴを「アイちゃん」と呼んでいらっしゃったのですが、「アイゴ」は地域で色々な呼び方があるようで、実際に「アイ」と呼んでいたりするようです。 

岩崎さんからも皆さんのお話を踏まえてご意見をいただきました。 

漢字で書くかはわかりませんが、アイゴは「愛の子」、このみんなのネットワークも「愛」だと思うし、「アイゴ」をどうにかしたいというみんなの愛が溢れている魚なんだよという表現ができても価値としては上がるのかなと思います。

また「未利用魚」からのスタートは価値が下がったところからのスタートになりがちですが、先日松浦さんからの印象的な言葉で「鱧を捌いているからアイゴの棘は難しい処理ではないのになあ。」とおっしゃられていました。仕事柄、色んな地域に行く機会が多いですが、そんなことを言う方はいませんし、誰もやろうとしません。だからこそ、その技術も含めて価値ストーリーにどう組み込めるか?それが「アイゴ」だけではなく、八幡浜のテロワールや、技術の全部が繋がる商品になるのではないかと感じました。 

事務局の植草さんからも、「愛媛」なので「アイゴ」の愛は「愛」を使っていただけるといいのかな!と。ちなみに愛媛県のキャッチフレーズは「愛媛県産には愛がある!」のようです! 

最後に今日のセッションを通じて感じた最も伝えたい価値をお一人ずつ伺います。

6. あなたが最も伝えたい、この商品の「エシカルな価値」とは?

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◯岩崎さん
人を幸せにできる。食べて美味しく、環境に配慮しており、作り手もハッピーな気持ちになれる商品を作れたらいいなと思います。 

◯瀧田さん
エシカルなものは手がかけられ、愛がかけられている、愛に満ち溢れた土壌で、愛に満ち溢れた人々が作るっていいなと思いました。 

◯T会員 Hさん
今まで知らなかった美味しいもの。そして動物にも魚にも権利があり獲られて捨てられてしまうのではなく、すべてを美味しくいただくのは人間の義務だと思いました。 

◯松浦さん
漁業のためにも魚価をあげ、添加物を使わず消費者の方に安心かつアイゴの元々の味を活かしたものを作りたいと思います。 

◯山本さん
パッケージは可愛く、裏を見るとエシカルという入り方もいいなと思いました。 

◯T会員 Sさん
命の大切さ。人間の価値観で「アイゴ」の値段がつかないではなく、同じ生命で無駄なものはないと伝えたいです。アイゴの生きた意味=アニマルウェルフェア、生態系、愛媛の愛、すべてひっくるめて「愛」。 

◯T会員 Nさん
アイゴや愛媛など「愛」のイメージが湧いてしまっています。商品を通じて心も暖かくなるし、裏側では漁業を守っている、両方にハッピーなストーリーを伝えたい。 

◯T会員 Fさん
漁業を守る愛あるお魚に価値を見出せるといいと思いました。

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地域の方、流通の方、生活者の方、それぞれ違う観点を持った皆さまとの6時間のセッションを経て、このように方向性がまとまりました。

1. まずはポジティブな楽しいイメージで訴求する
愛:アイゴへの愛、漁師や作り手への愛、食べる人への愛、食べた人も作り手も幸せになる、安心できる素材
美味しさ:今まで知らなかった美味しさ、素材の味が活かされている
命の大切さ:動物のすべてを美味しくいただく、生態系や環境への配慮、アニマルウェルフェア

2. その上で、背景にある課題や意義を伝える
魚の適正な価格で、漁業や漁業従事者を守る

この後、松浦さんと岩崎さんを中心に商品の試作づくりがはじまります。
次回のセッションは、出来上がった試作品と今日の「価値ストーリー」を照らし合わせながら、イメージが重なっているかを皆さまと対話する予定です。

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