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適応障害になった日

世の中には一定数、
若い女に説教するのが好きなおじさんがいる。

上には媚びへつらい、下には横柄な態度を取る。
周囲に自分の権威をアピールするために、特定の個人を必要以上に“指導”する。

そういう説教おじさんのターゲットになると、
一挙一頭足を監視され、呼び出され、小言を言われ、反省の態度を求められるようになる。

別に一度や二度の事ならいい。
「すみません…(※申し訳なさそうな顔)」や
「あぁー!ごめんなさぁい!(※慌てた様子)」
で切り抜けられる。でも、直属の上司がそういうタイプだと最悪だ。一日中そいつの視線を気にして生活しないといけないのだから。

「今日も報告のとき嫌味言われるんだろうなぁ」
「こっちを先に終わらせないと呼び出されるかな」
「提案しても私(=女)の意見は採用しないだろうな」

など、頭の中が懸念事項でいっぱいになって、すごく疲れてしまう。「1」のエネルギーで済む仕事だったものが「1.7」くらいエネルギーを浪費しなきゃ片付かなくなってしまうイメージ。

さらに私は、頭の中で会話するタイプだから、筋の通らない説教を受けると脳内で大反論会が開催されてしまう。

「さっきの指摘は理不尽じゃないか?」
「なんで私が怒られないといけないんだ?」
「そもそもそっちの管理不足では?」
「それに言い方ってもんがあるだろ」
「というかこの前も…」
と脳内でずっとグルグル考える羽目になる。

悪循環。誰にも私の声は届かないのに、どんどん負のエネルギーが身体に溜まって、それを浄化するためにまたエネルギーを使わないといけない。「1」で済んだ仕事のために、最終的には「5」くらいエネルギーが無くなってしまっていた。

次第に、会社外でもイライラ・モヤモヤの気持ちが付き纏うようになった。「ストレス発散」で検索をかけて、帰りの車の中で大声で叫んでみたり、爆音でAdoを歌ってみたり、全力でジャンプしてみたり、お清めスプレーを撒いてみたり、あらゆる方法を試したけど、全然感情を処理しきれなかった。

処理できなかった分の感情は、涙になって出てきた。泣くしかなかった。

寝れない。頭が覚醒してしまう。
立場上、職場で本人に反論できなかったから、夜は脳内のそいつに向かってずっと言い返していた。

「嫌いな奴のことを考えるなんて馬鹿げてる」「気にするな」と自分に言い聞かせるけど、無理だった。「考えるのをやめよう」と思ってやめれる程人は単純にできていない。気持ちが昂って寝ていられずに、起き上がる事もあった。寝不足になった。

一通り怒りが落ち着くと、今度はショックがやってきた。どうせ何をやっても無駄。認められない。嫌われてるんだから仕方ない。こんなとこに勤めなきゃ生きていけない自分が不甲斐ない。テキトーにやって逃れなきゃ身が持たない。

私は仕事で手を抜き始めた。事務所に戻るのがイヤで、一度外勤に出たら1.5倍くらい時間をかけて戻る日もあった。でも、そんな風に仕事をがんばれない自分の事はもっとイヤで、自己嫌悪に陥って、真面目に働く以上に疲れてしまった。

それで今度は、帰宅後すぐ寝てしまうようになった。お風呂に入るのもしんどくて、朝慌ててシャワーを浴びる生活。目は腫れて、顔も浮腫んで、不細工だった。


休みたいなぁ…

いつもなら我慢できる衝動だけど、その日はなんだか身体が動かなかくて「本当に休んじゃおうか」と検討し始めてしまった。時計を見つめたまま、ベッドの上で、取り返しのつかない時間になるまで黙っていた。

私は会社をサボってしまった。
お腹が張って、頭が痛かったから「体調不良」という言葉に嘘は無いけど、体調だけで言えば全然がんばれる範囲だった。生理痛の時の方がよっぽど体調不良だった。

でも、一度「休む」を選択肢に入れたら、もう思い直すことができなかった。絶対休む、休む以外考えられない、休もう。

電話は説教おじさんじゃない人にした。
今声を聞いたら死んでしまうと思ったから。

その日は屍のように寝ていた。
「当日欠勤を謝らなきゃ…、なんて言われるかなぁ。」冷静な部分がずっと心配していた。説教おじさんに負けた事も、社会の歯車として上手くやれない事も、惨めだなーと思った。

明日になって、
エネルギーが戻ってきたら考えよう…

でも、エネルギーはまるで戻ってこなかった。
1日に必要なエネルギーをつくり出すはずのシステムが、故障したらしかった。涙腺だけが仕事をしていて、ずっとボロボロ泣いていた。
私は次の日も休んだ。

ここから半年、私は休職する事になる。

「適応障害」だった。

2024/04/23_15

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