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リトアニア大学院950万円の自己投資で得る「情報生産の実践力」

大学院の授業が始まった。
まだ授業のオリエンテーション段階のため
課題に追われるのは
来週以降になる。

本格的に大学院の授業が始まる前に
修士課程の期間が
海外の大学院でどんな武器を
得られる可能性を秘めているか
自分への戒めを込めて
書きたい。

リトアニアの大学院期間1.5年で
おおよそ350万程度(授業料100万+生活費+諸経費250万)を自己投資している。
※生活費はかなり抑えられる予定だが
 円安の悪化を見越して想定の1.5倍で計画している。

さらに18ヶ月分フルタイムで前職の並みの仕事をしていたとすると、手取り約600万の機会損失がある。

機会損失と出費で950万円分の価値を
自己投資をしていることになる。

機会損失まで考える理由は
自分でしっかりコスト意識を持つためだ。

出費分の350万は、
5年間身を削って働いて得たものだ。
この自分への投資を絶対に無駄にしたくない
今後のキャリアに少しでも役立てたい

そんな断固たる思い、自分へのプレッシャーをかける意味でこのテーマについて取り上げる。

結論としては、学術分野での取り組みを通じて
「情報生産の実践力」という武器
手に入れられるのではないかと考えている。

この点について、下記目次の流れで具体的に
触れていく。


この「情報生産の実践力」については
上野千鶴子(2023)「情報生産者になる」と
刈谷剛彦(2009)「知的複眼思考法」を参照している。

なお、大学院の期間で得られる
英語力の向上や人的ネットワークの拡張などの副産物は
触れずに、あくまで学術的な取り組みで今後に
繋がると考えた点に焦点を当てる。

研究=情報生産者になるということ

まずは、情報生産とは何なのか?
上野(2023)の著作では下記の通り提示している。

研究とは、誰も問いたことのない問いを立てて
証拠を集めて、答えを示し、相手を説得する。
そのために、すでにある情報だけに頼っていては
十分ではなく、自らが新しい情報の生産者になること

この説明について卒論を書いた方々は
おおよそイメージがつくかもしれない。

昨今は、情報に溢れかえっている。

私達は、毎日あらゆるツールを使って
情報消費者になっているが、
価値があるのは情報生産者になること。

大学院の期間では、大量の先行文献を批判的に考えて
下記の情報生産のノウハウを徹底的に訓練していく。

上野千鶴子(2023)「情報生産者になる」から抜粋

「わかる」と「できる」には分厚い壁がある。

大学院期間でこのプロセスを徹底的に訓練し
実践出来ることが
後々の最強の武器となると信じている。

なぜ情報生産の実践力が役に立つか?~企業戦士時代の実例をもとに~

研究=情報生産になる
大学院は情報生産者になるとともに
その訓練をする場というのは理解できる。

しかし、研究者の道に進まない自分が
今後にどのように活かせるか?

この問いに対して上野さん著作のあとがきの一文で
私自身、非常に納得した。

情報生産になるための手法は
年齢、性別、立場、偏差値、、、の違いに関わらず
ひとが答えのない問いに立ち向かうための
だれにでもわかり、どこでも通用するノウハウ
です。


研究に関わらず価値を生み出し、対価を得る仕事
そしてキャリア選択や人間関係の悩みなど
これからは、答えのない問いと対峙していく。

その時に「情報生産者」のノウハウを吸収し
実践出来ば、きっと最強の矛となるのではないか。

例えば、私が2023年7月まで5年4ヵ月働いていた
民間企業の営業活動で
産業用設備20億円以上の契約交渉の際に
まさにこの実践力の不足を感じた。

私は、営業担当して
過去案件の実績値から価格の妥当性を
A4  1枚の資料を使って
見積提示価格で合意が取れるように
交渉をした。

一方で、お客様は価格を下げるように
あの手この手で、私の説明内容に反論していく。

お客様も「買うプロ」として
売り手側の痛いところを数多く突っ込んできた。

20億円の価格で注文書をいただくための
模範解答は存在しない。

先行研究として、
過去の受注額、市況変化のデータや
社内の知見者から情報を集め
分析し、自分で答えを見つけること

当時の私に求められていたことだ。

2回の単独交渉ではお客様(日本トップ企業の部長クラス)は全く納得されず、ボコボコにされた。

最終的には価格交渉の経験豊富な上司に
商談のサポートに入っていただき
4回目で何とかコストダウン無し、高利益で受注した。

私が出来たことは
ボコボコにされても
粘り強く続けたこと。

しかしこの時、明らかに情報生産の
実践力が欠如しており
事前にお客様の反論内容までを十分に
分析し、アウトプットする準備が出来ていなかった。

情報生産は、
価値を生み出す・成果を出す
とも言い換えられるだろう。


この情報生産の実践力をしっかり養うことが出来れば
大学院後のキャリアでも活かすことが出来るはず。

実務の場合は、情報生産のノウハウを身近な
課題に対して高速で精度高く回していく必要があるが
研究も実務も本質は変わらないと思う。

この企業戦士時代の事例に
情報生産のノウハウが実務でも活きることを
触れてみた。
この最強の武器を手に入れるために
最も大事な能力が
「そこにないものを見抜く知的複眼思考」
である。

そこにないものを見抜く知的複眼思考

知的複眼思考とは、刈谷(2009)によると
「単眼的な決まり切ったものの見方(ステレオタイプ)に捉われずに、ものごとを自分の力で複眼的、多面的に
考えること」である。

そこで必要になるのが
多くの人にとって一度は聞いたことがある
「批判的思考」である。

批判的に情報生産のプロセスを踏んでいくことが
情報生産者になるための必須条件だと思う。

大学院で批判的に研究=情報生産プロセスを踏んでいく。

大学院で研究に取り組む意義について 
刈谷(2009)や自身の経験をもとに下記のように触れている。

アメリカの大学時代、必死に勉強してこれだけの知識を獲得したのに、今の私には一体なにをどれだけ読んだか分からなくなっている。あれだけの文献を読んだことは役に立たなかったのかそうではない。知識に代わる「何か」が身についたのです。
それは、考える力、あるいは考え方のさまざまなパターンを身につけたのです。的確に批判的に情報を読み取る力、問題を探し出す能力、素朴な疑問からそれを明確に問いとして表現する方法。問いの立て方と展開の仕方。論理的に自分の考えを展開する力。そして問いをずらしていくことで隠された問題を探っていく方法を自分なりに身に付けたのです。(刈谷, 2009, 55-57頁)

大学院での学問するというのは、
まさに知識を得るのではなく
知的複眼思考を身につける「生きる力」を養うこと。

刈谷が(2009)触れている批判的とは
文字の通り誤解しそうになるが
上野(2023)の言葉を引用すると

「批判的」とはそこにあるものではなく、
そこにないものを見抜く力。
ただのないものねだりではなく、そこにないものを
見い出すには空白の上に足を置いて
新しい視野を創造するような構成力がいる。

少し私なりに
「表面的に見えていないものを見抜く力」と解釈した。

例えば、先ほどの企業での価格交渉の例のように
原価高騰に隠された表面的に見えない事実を見抜くこと
相手の立場から物事をとらえ、多面的にアウトプットを提示するなどだろう。

研究の過程でそこにないものを見抜く知的複眼思考を
身につける訓練を行い、情報生産のプロセスに沿って
価値を生み出す実践力が、自身のキャリアに役立つはずだ。

時間は限られている。元を取れるように覚悟を持って取り組め!


今回は、一貫して、「情報生産のための実践力」について2冊の本を参照しながら考えてみた。

1.5年といっても来年の12月に修士論文の提出期限があるため時間は限られている。

さらには、この秋からは早速卒業後の考えているキャリア選択の1つの採用試験も始まる。

自分の行動に価値を付けて
コスト意識をもって
大学院卒業後、数年~10年後に
大学院の期間が
「意味のあった期間、950万の投資効果が出た」
と思えるように勉学に励む。

学べることへの感謝と
大学院期間の断固たる覚悟を持とう。
(自分への戒め、プレッシャー)

さらに高く飛べると信じて。

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過去の類似記事

このNote で取り上げている哲学思考の考え方は、
まさに知的複眼思考だ。

大学院への進学経緯はこちら

参照文献
:上野千鶴子(2023),ちくま新書『情報生産者になる』


:刈谷剛彦(2009),講談社『知的複眼思考法』

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