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251.テレビドラマ「舞い上がれ」で近鉄バファローズが蘇った~2022年末に。

1.「プロ野球近鉄球団名」売却騒動、名も実も取れず、甘い見通し、議論もなく、ドタバタ五日間で白紙撤回!


 
 

命名権売却騒動にてイメージダウン
 「近鉄」は消えてしまう?


今の時代は、名前を貸す、ネーミングライツ(命名権)は当たり前となった時代ですが、20年前はまだ世の中の人にはなかなか理解されない時代があった。おそらく、ネーミングライツの初めてのトラブルかもしれない。


2004年(平成十六年)1月31日、プロ野球の近鉄球団 (永井充球団社長) は2005年度からチーム名にある「近鉄」を外し、別の企業に命名権「ネーミングライツ」を売り出すと発表した。

これは近鉄が球団を運営する会社名を「大阪近鉄バファローズ」から「大阪バファローズ」に2003年一月に変更。

企業や市民から広範な出資の可能性を探るのが目的で、同時にチーム名の変更も議題になっていた。
近鉄本社サイドはチーム名そのものの変更には難色を示していたが、それも球団経営の行き詰まりから、わずか一年での方針転換といえる。この命名権の売却を球団に存続させるための最後の切り札、と位置づけていた。
しかし、コミッショナー、他球団関係者・監督、ファンもこの驚きの発言に衝撃を与えた。

そもそも「命名権」とはネーミングライツと呼ばれ、社名や商品名を付ける権利のことをいい、米国プロスポーツ界で1970年代に生まれたもので、スポーツ施設の建設費や運営費を調達する手段として定着した。

施設などに固有名が付くことで企業は広告宣伝効果が狙える。
日本の競技場で導入されたのは「味の素スタジアム」(東京調布市)が初めて。

さて。近鉄球団が命名権を売り出すと発表したがどのぐらいの費用なのだろうか。
球団経営は近鉄が引き続き行い、バッファローズの名前は残し、本拠地は大阪市のまま。これらを条件に五年以上の期間で年間基本料を約6億円で別の企業に売却。
しかし、こんな甘い見通しで果たして本当に使用する企業は現れるのだろうか。
むしろイメージダウンになりかねない。

永井球団社長は「球団を持つのと同じ効果がある」と力説、その根拠を、2001年にリーグ優勝した時のメディア露出効果を約361億円と換算し、その10分の1の命名権の使用料とした、さらに日本一になれば10億円の上積み、プレーオフにも進出できないBクラス (4位以下)なら10億円差し引き、インセンティブ (出来高払い)契約の形をとるという自己本意、一方的な甘い見通しによる判断が目立った。


これまでプロ野球界では、オリックス本拠地球場「グリーンスタジアム神戸」を昨春「yahoo!(ヤフー)BBスタジアム」と改称した例があり、オリックスの二軍チームは穴吹工務店がスポンサーになり、同社の商標をチーム名にした例もある。

もし、賛同する企業があらわれれば一軍で親会社以外の企業名をつけるのが初めてとなる。

この命名権売却の背景は、球団が抱える赤字にあり、大阪ドームの年間使用料(約十億円)を加えると、球団は年間10億円の赤字になっているという。

また、地元大阪のファンや市民からは戸惑いや反発の声も上がっていた。

さて、命名権という手法で球団立て直しを図ろうとする近鉄だが、現実にはむずかしい問題も山積している。

それは命名権を売却するだけでとどまらず、売却することによって、球団経営にも関与してし、協約上の問題も浮上してくる。

例えば、今まではオーナー企業のビジネス上の特権だったユニホーム広告や選手らの肖像権を利用できる権限まで与えてしまうということは事実上の経営権の一部譲渡にあたってしまい、状況によっては株主的な存在にもなる可能性が高い。

さらに協約上、オーナーは株の保有割合で規定されているが、これは 抜け道 になる恐れもあり、どんな企業でも実質的な権限を持つオーナーに座ることができてしまうという点が残る。

横浜のマルハからTBSへの経営権譲渡やダイエー存続問題が起きた際、オーナー
会議は既存球団が安易に売却することのないよう一定の歯止めをかけた。

その一つが「譲り受け球団の加盟料」(野球協約第三十六条)の存続であり、経営権を譲り受けた企業は球界に30億円を支払わなければならない。
さらに協約三十二条に附随する内規(参加する審査基準)では「球団を単に企業の売名などを目的としている時は承認を拒否しなければならない」としている。

つまり、近鉄はこの手法はこれに反する。
野球協約で近鉄の球団名売却に関連する主な項目(抜粋)
『第三条 (協約の目的)この組織を構成する団体及び個人は不断の努力を通じてこの目的達成を目指すものとする。
①我が国の野球を不朽の国技にし、野球が社会の文化的公共財となるよう努める。
第十七条 (審議事項)実行委員会において審議すべき事項は次の通りとする。③地域権の設定または変更、および球団呼称、専用球場の変更④この組織の参加資格の取得、変更、譲渡、停止または喪失関する事項⑤野球協約、それに附随する諸規程に関する事項⑫その他、コミッショナーが必要と認めた事項。これらの重要な事項については、オーナー会議の承認を得なければならない。
第三十八条 (保護地域)それぞれの連盟の構成球団を次の通りとする。パシフィック野球連盟構成球団とその球団呼称「大阪近鉄バファローズ」
第一六七条 (ユニホームの標識)試合に着用するユニホームには、所属連盟会長により承認されたもの以外の文字または標識を用いてはならない。』とした。


日の2月1日各新聞紙上は大騒ぎ。
根来泰周コミッショナー
「・・・・野球協約上、問題があるかどうか検討して対処したい」

長谷川一雄コミッショナー事務局長
「・・・・もし事実なら実行委員会の審議、オーナー会議の承認が必要」

ロッテ・川北智一球団代表
「・・・・ありうる話だが、球団名に関しては考えたこともないし、“ロッテ”を外すとは(球団経営として)意味がない。

阪神・野崎勝義社長「・・・・収入を増やすための智恵だと思うが、うちは取り入れない。阪神の名前は捨てられない。」

ヤクルト・多菊善和球団社長
「芳しくない。命名権を売るのは身売りと同じだ。」

元近鉄監督の西本幸雄さん
「・・・・いずれこんな事態になるとは思っていたが、情けないこと甚だしい。・・・・時代といって片付けるには、あまり寂しすぎる」とそれぞれ球界関係者はコメントを残した。


しかし、なんとそれから5日後、近鉄バファローズは同計画を白紙撤回。

球団の永井充社長と小林哲也代表が同日、大阪市内のホテルで記者会見となる。
起死回生として最後は切り札を狙ったチーム経営改善策は、他球団のオーナーから反発を受け、根来泰周プロ野球コミッショナーからも指摘され、発表からわずか5日で頓挫した。

この日、永井社長は、「根来コミッショナーから原点に戻すべきとのご指摘があり、私どもとして原点に戻すことにしました。白紙です。」と苦渋の表情で会見した。

しかし、なんでこんな発表と終結ほ迎えてしまったのだろう。

構想発表では自信満々の記者会見だったが、こんなにも球界の反発の輪が広がるとは思ってもいなかったのではないだろうか。

命名権によって赤字解消を図るというアイデアに固執して、他のことすべて何も考えられなくなってしまっていたのではないだろうか。

野球協約違反、事前連絡なしの記者会見。
ましてや所属選手ですら知らされていなかった。
根来コミッショナーの「常識的にいって納得できない」という言葉から近鉄は撤回せざる得なくなってしまったのが実状。

まず、このアイデアが可能かどうか、その議論ができなかった、手順を誤り、球界への配慮や根回しもなく、構想だけが先走り、すべてが後手に回ってしまったという印象は拭えない。

「私の不徳です」と永井社長は話したが、このドタバタぶりを見る限り、見通しの甘さを際立たせてしまった。

あとに残るはイメージダウンとファンに不信感が残る。

そして、消滅していった…
 
 


※注 この著作権noteは1999年からの事件を取り上げ、2000年、2001年と取り上げ続け、現在は2002年に突入。今後はさらに2003年から2020年~2022年に向けて膨大な作業を続けています。その理由は、すべての事件やトラブルは過去の事実、過去の判例を元に裁判が行われているからです。そのため、過去の事件と現在を同時進行しながら比較していただければ幸いでございます。時代はどんどんとネットの普及と同時に様変わりしていますが、著作権や肖像権、プライバシー権、個人情報なども基本的なことは変わらないまでも判例を元に少しずつ変化していることがわかります。
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