「著作権侵害、セーフとアウトの境界線はどこ?」水野祐×加藤貞顕×深津貴之【第2回】

※本記事は、2019年1月28日に行われた対談・インタビューを記事化したものです。

情報の自由利用と著作者、著作権者の権利を守ることのバランスを図ることで、文化を発展させるために存在する著作権法(第1回)。著作権を侵害して訴えられたら、コンテンツの差し止め、損害賠償、場合によって逮捕・罰金を課せられることも。では、何をどこまでしたら「著作権侵害」になるのでしょうか。スマホのスクショ、リンク、パロディやオマージュ。具体的な事例を挙げて、“セーフとアウトの境界線”について、弁護士・水野祐さんに尋ねました。

スマホのスクショ送信はOK? NG?

加藤 前回に引き続き、著作権の話をうかがっていくんですが、今回はまず、どうしたら著作権侵害になるのか? ということを教えていただけますか?

水野 じゃあまず、みなさんは、ご自身が著作権を侵害したことがあると思いますか?

加藤 それ、道路交通法を破ったことがあるのか?と同じくらいの質問ですよね。

水野 そうなんです(笑)。僕もふくめて、「侵害したことはない」と胸を張って言える人は少ないのではないかと思います。

深津 現実的に、どのへんのラインがセーフで、どこからがアウトなのかが知りたいです。

水野 はい。線引きが難しいものもあると思いますが。

加藤 ではまず、スマホで、話題になった広告のビジュアルをスクリーンショットして友人に見せるというケースはどうですか?そのスクショをTwitterにツイートする場合はどうでしょうか?

水野 現在、著作権法の改正が騒動になっていますが、現状、スクショ自体は、「私的使用目的のための複製」であれば認められています。「法は家庭に入らず」という考え方です。(※1)

私的使用の範囲を、あくまで親子や兄弟などの関係が緊密な関係内に限定する考え方もありますが、友人数人くらいまではこれに含まれるという見解もあります。ただ、そのスクショをTwitterでツイートする行為は、私的使用目的とはいえないので、複製権侵害になり、公衆送信権の侵害にもなるのでNGです。

(※1)「私的使用目的のための複製」とは、個人的な使用または家庭内その他これに準ずる範囲内における使用を目的とするときは(権利者の許諾なく)著作物を使用できる、という著作権法の規定である(著作権法30条)。

LINEで送信するのはあり?

深津 有名ミュージシャンの新曲をコピーして、クラスの5〜6人にLINEで送るのはありですか?

水野 LINEで送信する前にコピーしている行為(※2)については、さきほど申し上げた「私的使用目的のための複製」にあたるかどうかが問題になります。

LINEで送信する行為については、「特定かつ少数」であれば「公衆送信」の「公衆」にあたらず、問題ありません。例えば、2〜3人のグループLINEに共有する行為は、そのグループLINEが非公開の限定グループであれば問題ない。5〜6人とかになってくると、たとえ非公開の限定グループであっても「少数」と言えるかどうか微妙なところですね。少数か、多数かの区別は、何人以上が多数になるという明確な線は引くことはできず、その著作物の種類、性質、利用態様に従って異なると考えられています。

(※2)厳密に言えば、LINEサーバへの複製行為もあるが、ここでは割愛。

加藤 クラウドに上げるときに、パスワードをつけても問題になるんですか?

水野 クラウド上のサーバに保存されるコンテンツを、利用者が自らのスマートフォンやタブレット等において利用できるようにするサービスを「ロッカー型クラウドサービス」などと呼んでいますが、これについてはややこしい法律論の話しがあって、見解が分かれています。

ただ、このようなサービスを利用するユーザーの行為は、基本的には、さきほど申し上げました「私的使用目的のための複製」と整理することができると思います。ただ、「公衆」に提示する目的や行為があればもちろんNGです。

深津 USBメモリに保存して渡すのはOKですか?

水野 USBメモリに保存するのは複製行為なので、「私的使用目的のための複製」といえる範囲であれば問題ありません。

一方で、私的使用目的を超えてUSBメモリに保存する場合には複製権の侵害になりますし、USBメモリに保存した後で第三者に対して譲渡する場合には、その譲渡が特定かつ少数の範囲にとどまる場合にはOKですが、不特定または多数になされれば譲渡権の侵害になります。

第三者にデータを渡すことを前提にするのであれば、法的に許される範囲はかなり限定的といえます。

リンクを張るのは?

加藤 すごく基本的な話ですが、自分のサイトに他のサイトのリンクを張ることは?

水野 基本的には問題ありません。リンク、特にリンク元のサーバにデータの複製や送信、蓄積を伴わない、いわゆる「インラインリンク」は著作権侵害にならないと考えられてきました。YouTubeの映像などを埋め込むエンベッドなどもこれですね。

ただ、インラインリンクによりトリミングが伴うような特殊なリンクについては著作者人格権侵害が成立しうると判断した知財高裁の判決が出て、若干実務や学説も混乱しています。

深津 え。インラインリンクでも著作権法違反に該当する場合があるんですか!?

水野 いや、この事件では、Twitterで他人の写真をリツイートした結果、その結果として送信されたHTML、CSSによって写真がトリミングされた行為について著作者人格権(同一性保持権)侵害を認めたんですが、インラインリンク自体ではなく、インラインリンクの結果として行われたトリミングが問題となった事案なんです。なので、インラインリンク自体について判断したものでもないので、そのように一般化はできないと考えています。

加藤 インラインリンクが著作権侵害になるとなったらネットサービスは総じて大変なことになりますからね。

水野 リンクをめぐっては、欧米でも、日本でも少しずつ裁判例が出てきていますが、リンクの種類にも様々なものがあり、リンクなら何でもOK、というわけではなく、リンク先が侵害コンテンツじゃないだろうか?とか、さきほどのトリミングのように勝手にリンク先のコンテンツの性質を変えてしまわないだろうか?とか、リンク行為の性質ごとに実質的に判断していく姿勢が大事になってきていると言えると思います。(※3)

(※3)「リーチサイト」と呼ばれるような侵害コンテンツへのリンクを集めたようなウェブサイトのリンク行為は、著作権侵害の「幇助」行為に該当し得ると言われている。刑法には「幇助」つまり「手助けした」者の刑事責任を問う概念がある。違法サイトに導線を張って誘導したとみなされる。ただし、幇助の責任を問われるのはリーチサイトのリンク行為であって、ユーザーの閲覧行為ではない。リーチサイトについても、現在、法規制が議論されている。

パロディとオマージュ、パクリと盗作の境界線は?

加藤 じゃあこれはどうでしょうか。noteなどの記事で、本の感想を紹介する際に、書影は載せていいんですか?

水野 書影の多くは著作物といえると思いますが、著作権法上認められている「引用」として載せられる場合はそれなりにあると思います。しかし、「引用」の要件を充足しない場合には、無断で利用すれば形式的には著作権侵害になってしまうでしょう。とはいえ、黙認されるケースも多いように思います。

加藤 編集者の立場として言うと、本の紹介は売り上げにつながるから、怒ることはまずないですよね。書影を使って紹介してくれたらそのほうがイメージもわくし、むしろうれしいだけですね。

深津 そういう状況を見た第三者が、あのひとが著作権を侵害しています、と訴えるのはどうですか?

水野 第三者は著作物に関して何の権利も有していないので、(装丁デザイナーから権利譲渡を受けた)著者や出版社などの権利者が怒って訴えるかどうか次第です。

加藤 ただ、さきほども言いましたが、作者側が指摘することは極めて稀ですよね。そうなると、書影の掲載が著作権侵害かどうかは、著者や出版社の気分を害するかどうかがポイントになるんですかね。

水野 そうですね。ただ、真面目な本の紹介であれば著作権法上認められている「引用」に該当する場合も多いと思いますし、おっしゃるとおり、著者や出版社も本の売上げにつながるような紹介であれば、基本的には文句を言うことはないと思います。

加藤 なるほどなあ。あと、ちょっと話を広げて、パロディやオマージュというのもありますよね。これも境界線が難しい問題です。本人はオマージュのつもりでも、盗作、つまり著作権侵害と言われたりもしますよね。

水野 パロディやオマージュは日本の著作権法上、直接的には認められていません。ですので、これらは基本的には発見されていないか、「放置」あるいは「黙認」されている状態といえます。「放置」あるいは「黙認」されるかどうかは、権利者が手間がかかるとか、損害がないのに止めるのにコストの方が高くついたり、あとは「リスペクト」を感じるかどうか、みたいな曖昧な基準で判断されているように思います。

加藤 しかし、原作者が怒るかどうかは、その時の気分や体調によっても変わってきかねないし、なんなら経済状況によっても変わってくる可能性がありますよね。難しいですねえ。

以前、新潟市の商店街に置かれた『ドカベン』の銅像の前で、バットに打たれて吹っ飛ぶふうの写真がSNSで流行って、作者の水島新司氏が怒って銅像を取り下げようとした事件がありました。

水野 そんな事件があったんですね。公開されている銅像は「公開の美術」なので、その前で撮影された写真等の利用については、水島先生は原則として著作権は行使できないんですが(※4)、水島先生は著作者人格権を主張されていたんですかね?いずれにしても銅像自体を取り下げ・撤去するかどうかは市や商店街と水島先生との契約次第だと思います。

(※4)屋外の設置された美術の著作物または建築の著作物は、誰もがアクセスできる状態にあることを考慮して、一部の例外を除いて、(権利者の許諾なく)利用できる(著作権法46条)。

つづく。

■弁護士・水野祐さんプロフィール
弁護士(シティライツ法律事務所)。Creative Commons Japan理事。Arts and Law理事。東京大学大学院人文社会系研究科・慶應義塾大学SFC非常勤講師。同SFC研究所上席所員(リーガルデザイン・ラボ)。グッドデザイン賞審査員。IT、クリエイティブ、まちづくり分野のスタートアップや大企業の新規事業、経営企画等に対するハンズオンのリーガルサービスや先端・戦略法務に従事。行政や自治体の委員、アドバイザー等も務めている。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』、共著に『0→1(ゼロトゥワン)を生み出す発想の極意』、『オープンデザイン参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」』など。
Twitter : @TasukuMizunonote
note:@tasukumizuno

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