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身辺雑記19

東雲運河にかかる橋の上から垂直都市のパノラマを眺める。建ち並ぶタワーマンションがファイト・クラブのラストシーンのように次々と倒壊してゆく。窓の明かりが消え、真夜中の深海に砂埃が踊る。水玉模様の鱏がアインシュタインも舌を巻くスピードで夜空を泳いでいる。戦争がはじまった。スーツケース・ピアノが眉間に刺されば、ギムレットの雨が降り注ぎ、逃げ惑う猿がマズルの閃光に暴かれる。木っ端微塵に弾け飛んだ頭には、騒々しい音楽が流れつづけている。アイムファイン。きみはロックしか聞かない。そんなことはない。たまにはチック・コリアも聞きますよ? 目下戦争中。不思議と人が死んでいる感じがしない。人間いつかは死にます。病気で死ぬか、老いぼれて死ぬか、撃たれて死ぬか、刺されて死ぬか、脳味噌が爆発して死ぬか、春は眠い。春はね、無為。グラツィエ。来週、健康診断がある。きっとまた。あーやだやだ。

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