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日本の大学教育を壊しているのは誰か

日本の大学教育が諸外国に比べて遅れている、中国韓国シンガポールに負けている、アメリカにはますます差が開くばかりという言説はいやというほど聞く。教育学のプロフェッショナリズムは軽視され続けているので、誰も彼も思いつきレベルの教育改革論を無責任にぶち上げて気持ちよくなっている(オナニー政治活動)。まず、OECD加盟国の中で公的支出が低いことが最大の問題であることは論をまたない。この大前提を無視して改革改革というのは「竹槍特攻論」でしかないことを頭に入れておいてほしいし、前提にしない議論は一切が無である。

日本は資源による収入がほとんど望めずに中東某国のようにオイルマネーのみでベーシックサービスを完全に装備し税金もほとんど徴収しないようなことは不可能である。これは仕方のないことだ。この中で日本国としては人材育成にどこよりも力をいれ、イノベーションを推進する底力を蓄え……とはなっていない。これは歴史的に大学教育を受ける権利が軽視されてきたと言わざるを得ない。大学進学率は近年やっと50%前後になった。大学進学率が100%になればいいという訳でもなく、その人が将来なにになりたいかを早いうちから考えさせてそれぞれの進路に割り振ってしまうドイツ教育システムのようなものもある。これは有権者の選択としか言いようがないが、日本は社会システムの多くをアメリカに倣っているためにアメリカ方式を目指しているのかと思う。これは破綻している。アメリカは超大国であるために、諸外国から留学生が大量に押し寄せディプロマミルのために数百万円を払っていく。また、大学院にも留学生がかなりの貢献をしていて、すでに留学生ゼロでは研究室が成立しないとまで言われるようになっている。

日本がこれをそっくりやろうとすると日本語による高等教育を完全に放棄し、大学教育を英語によるものと統一してアジア諸国から留学生を大量に獲得する競争に参入していく必要がある。これが現実的かはわからないが、少なくとも今の日本の政治的な可能性としてはこれだけ劇的な変更は不可能であり非現実的であることは明白である。なのでこれは空想として置いておくことにする。

さて、日本の限りある大学への公的支出だが、割合で言えば国立大学がほとんどを占めている。巷でよく言われるようにFランク大学が予算を浪費しているというのはかなりのデマであり、国立大学が占める割合は7割強になります。

私立大学の学生1人あたり補助金交付金は13万円程度で、これはOECD加盟国の平均の10分の1になります。一方、国立大学の平均は200万円になり、これはOECD加盟国の平均を遙かに超えることになります。国立大学学生は、一人一人にそれだけの税金が投入されているという事実を重く受け止めて、ノブレスオブリージュを感じてほしいと思います。少なくとも、国立大学の学生が暇な時間にツイッターや5chなんかを開いて「F欄大学なんてゴミww」と書くのは矛盾です。自身を私立大学の13倍の価値がある存在に高めるのに余暇は少ないはずだ。

さて、国立大学の中でも、教えられる学問はそれぞれ違う訳ですが、何が一番多いでしょうか。

工学で26%になります。もちろん医学部5000人への補助金交付金は工学部より高めになりますが、それでも平均では大きな差にはなりません。工学部は入学者が26000人とトップなので、日本で一番教育を重視されている学問は工学、一番予算を投入されているのも工学ということになります。

日本はかつてものつくり大国として名を馳せ、輸出企業が外貨を獲得してくる国家でしたが、ここ十数年で猛烈に中韓の追い上げを受けて崩壊、ものつくり企業として世界的な企業は極端に減り、また、重要な部品やパーツを供給するような企業も減っていきました。

この産業の変遷の中で大学の学部学科が硬直的であるまま工学部偏重であるのは社会の需要供給ギャップが激しいので大なたを振るい、理学部に転換していきものつくり偏重をなくしていくのが重要でないか。少なくとも現在の工学部偏重は、日本の現状とは大きく乖離した「異常事態である」予算の無駄使いであると考えます。並びに、私立大学への補助金交付金の少なさを是正していくこと、これも日本の大学教育の底上げにつながる重要政策でないでしょうか。これは消費税を増税してでもやる価値のある政策ではないか、個人的にはそう強く訴えるものであります。

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