「営業マンになりたくない」

僕にも営業マンだった時代がありました。そして営業マン時代は可もなく不可もない成績でした。毎年、年次目標を掲げ、毎月進捗を報告していく。たいていはノリノリで進捗しないから、善後策を報告する。その繰り返しに飽きました。
きっと営業が楽しいという人は、何かを攻略するとか直接に口説くのが好き、ということなのだと思います。企業の課題を聞いて、深堀し、自分の社内外の人脈を駆使して、時に接待なども織り交ぜながら、競合より先行し、受注する。そういう情報戦・立ち技寝技含めてゲームに勝っていく。これが楽しい人もいるとは思います。

ただ、僕としては「これをずっと続けたくはないな…。」と思いました。
きっと、世の若者にも「営業マンやりたくない」という人は多いでしょう。

でも僕自身としては営業マンだったことは本当に大切な経験だったと思います。営業を経験したことの一番の教訓は「自分がなくなること」と「全人格的に鍛えられる」という相反する2点です。

「自分がなくなる」とは

営業マンは会社の代表として顧客と会話します。顧客はあなた個人と取引するのではなく、会社と取引するからです。
取り扱う商品の仕様やターゲットだけではなく、その開発経緯、ひいては会社の歴史や社会的責任に至るまで、会社の代弁者になる必要があります。そこにあなた個人はいませんし、要りません。
分からないこと知らないことはたくさんありますが、すぐ答えられなくてもいいんです。会社の代弁者でいるかどうか。ここが大切です。

且つ、それを「演技でもいいから熱意をもって話す」ことが必要です。「うちの会社なんてどうでもいいんです」みたいな社員と付き合いたいとは取引先は思いませんよね。

全人格が鍛えられる

一方で、会社の代弁者となった営業マンは、その一挙手一投足を見られることになります。
別に高級ホテルの従業員のような見た目になれと言っているわけではないですが、要は
・見た目は不快感を与えるほどでなければ十分
・機嫌や明るさが大事
・見積書や請求書などの提出は早めに。普段大雑把でも、書類関係の動きはとにかくきちんとする
・メール文で品性や知性が出る
・ちゃんとクライアントのメリットを考える
・クライアントがその社内でどう動くかを気にする
・いろんな話題についていけるように普段から様々な情報に触れておく

ということです。

クライアントからすれば、営業マンの以下の点を見ているんです;
「この営業マンは当該案件および自社を気にしてくれているか」
「コミュニケーションしやすいか」
「進行管理はザルじゃないか」
「書類関連に不備が頻発する奴じゃないか」
「目的や意図を汲めない馬鹿な担当じゃないか」
「この業界や提案内容について関心や知識がある、もしくは得ようとしている人間か」

こういう点を平均点以上に持っている営業マンは顧客に好かれるでしょう。逆に言うと、これがしょうもないと、「次に良い会社がいればそこに鞍替えしよう」と思われます。

営業マンをやっていると、こういう点を気にする毎日なので、そうした筋力が身につくんです。そしてこれは、社会人としてかなりベースになる力です。くわえて、これを併せ持つ人というのは、実はそこまで多くありません。つまり、自分の市場価値を高めることに繋がるんです。

私も、営業マンであった経験があったからこそ、取引先がどのように動くか、どう感じるかなどを類推する力がついたため、企画職としてもやっていけていると感じています。

会社というのは、取引先があってこそ成り立つのです。相手が顧客だろうがサプライヤだろうが、こういう想像力やスピード感、共感力などを持っている人は信頼されます。

そして、それが身につくのが「営業マン」という仕事なのです。営業が嫌で嫌でしょうがなくても、自分のそういうスキルをレベルアップさせる機会だと捉えて、3年程度は没入して頑張りましょう。会社対会社とはこういうものだ、というのもよくわかりますし、社会の縮図を肌で知ることができますよ。

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