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おとぼけ日記 番外編

「平和とは無際限の未来に向けての日々の努力である。(中略)要するに平和は冴えない。みばえしない。派手さがない。」

中井久夫「関与と観察」(p.47)からの引用

やはり名文というのは一部を引用するだけであっても、文章の格を一段上へと高めてくれる。
そんな筆者のひとりごとはさておき、今回は平和な日常について考えてみたい。

疲れてしまうと、どうしても刺激的なものを欲してしまう。
自分でご飯を作る気にもならず、どこかで買って帰るかと言い訳を用意する。
このままズルズルと堕落していくことに対して後ろめたさを感じる。

粗末なものであれど、自らの手で食事を作ることに喜びを見出していたあの頃の自分をうらやましく感じる。
食パンにはちみつをかけて挟んだおやつでも満足できていたのだ。
塩おむすびのふやけた海苔も嫌いではなかったのに。

これは一種のノスタルジーなのか?
いや、強い刺激を求め続けた私のちょっとした懺悔である。

今となっては退屈だったあの日々。
それでもなお、こうして思い出すのは、そこに輝く何かがあったからだろう。
中井久夫の言う「冴えない。みばえしない。派手さがない。」ことを自分の生活に落とし込んでみると、ナイーブに感じている自分がいることに気が付くのだ。

この何の変哲もない日々を愛するということ。それは、退屈さを生きること。そう思う。

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