運動麻痺と随意運動について
本日も臨床BATONへお越し頂き、ありがとうございます。
416日目担当のジュニアです。
★はじめに
何となく運動麻痺と聞くと非常に難しいイメージがありませんか?
臨床において運動麻痺・皮質脊髄路・筋緊張・随意運動というような言葉が乱立しています。
しかし、自分もそうでしたが1つ1つが曖昧な解釈しか出来ておらずにセラピスト同士の会話もわかっているようでわかっていなかったです。
なので、結果として話が嚙み合っていないので実際に考えていることと違和感が出てきます。
なぜなら、1人1人の言葉に明確な違いがあるからです。共通言語になっていないことが考えられます。
運動麻痺に限らず共通言語となるように理解することで、相手に対しても上手く説明出来るようになります。それがセラピストに対してフィードバックにも使えますし、患者さんや家族さんに説明する際にもいかしていけるのが大きなメリットだとぼく自身はすごく感じています。
★運動麻痺とはどのような状態なのか?
今回は臨床で特によく耳にします、運動麻痺についてです。
運動麻痺のイメージとしては
①動かないこと
②しびれている
③筋緊張が高い・低い
④良くならない
⑤治らない
などのイメージを持っていることが多いです。
しかも、みんなが同じようなイメージであれば良いですが上記だけでも5つの表現方法があります。
これが個人によってイメージが変わると運動麻痺という言葉が共通言語ではなくなってしまいます。
まず、この部分を共通言語にしていかなければセラピスト同士での話し合いでもズレが生じますが他職種となればもっと大きなズレを生じることになると感じています。
運動…物が動くこと。物体が時間経過とともに空間的位置をかえること
麻痺…一般的には四肢などが完全に機能を喪失していることや感覚が鈍って、もしくは完全に失われた状態を指す。
何となく意味は分かるけど…上記の内容だけではあまりイメージしにくくないですか?
脊髄損傷や末梢神経損傷による運動麻痺は想像がつくと思います。しかし、脳卒中後の患者さんでは全員に運動麻痺が起こるとぼく自身は思っていました。
なので、逆に運動麻痺がない患者さんではなぜそうなるのか分からない状態でした。
そこでよく聞く言葉として皮質脊髄路があります。
皮質脊髄路は大脳皮質の運動野から脊髄に至る軸索の伝導路で、身体を動かす運動機能の情報を伝達しています。
しかし、臨床上はどうでしょうか?上記のような部分に問題がないにも関わらず運動麻痺が起こっている事はないですか?
ぼく自身臨床上においてよく経験しましたし、学生のころや新人のころは意味がよくわからない言葉が多くて拒否してしまっていたように思います。
だから、すべての患者さんで麻痺があるというような解釈になっていたようにも感じています。
しかし、脳浮腫やディアスキシス(機能解離)のことを少し知るだけで今までとは全然違った視点で治療することが出来るようになりました。
そして、これら脳浮腫・ディアスキシスについて少し知識を得ることがなぜ視点が広がる要因となるのでしょうか?
なぜなら、優先順位を決定することが出来るからです。脳浮腫やディアスキシスは回復するのでその影響による運動麻痺であれば回復を待ちながら他の治療を優先することが出来ます。
しかし、運動麻痺に対して全く何もしなくていいという訳ではなく使っていない期間が長くなればなるほど脳からの情報が伝わらなくなってしまいます。そして使っていない部分に関しては神経が壊死してしまい、使えなくなることで代償動作が伴うことも十分に考えられます。
脳浮腫に関しても全くダメージを受けていない部分ではないことは理解しておく必要があると臨床上感じています。
これらのことから整理していくと徐々に運動麻痺とは何かということや何が原因かが少しは理解出来てきます。
★随意運動とは?
そして、運動麻痺という言葉を紐解いていく中でよく耳にするのが随意運動ではないでしょうか?
この言葉もよく使用するが実際のところどのような意味なのか理解出来ているでしょうか?
ぼく自身しっかり理解出来ていたかというと疑問は残ります。
なので、次は随意運動とは何かについて考えていきましょう。
だから、随意運動障害となると自分の意思通りに空間的位置変化させることが出来ないということになります。でも、これだけではまだ理解するには内容が乏しいと思います。なので、もう少し言葉を分解していくことで理解を深めることができると思います。
ここで出てくる自分の意思通りに動かせる=activeな動きとなります。activeに動かせないということは筋収縮が起こらないということになります。この筋収縮が必要となることが非常に重要な部分となります。
これらを踏まえて考えると随意運動障害がある場合ではpassiveの運動が必要ではないことがよく分かります。Passiveでは筋収縮は起こりませんし、自分の意志は関係なく動かされる形になるからです。
なぜなら、自分の意思通りに空間的位置変化を促していくためにはactiveに動かし筋収縮を促していくことが随意運動障害に対する治療アプローチになるからです。
また、自分の意思の通りに空間的位置変化では下記のようになります。
これらのことから運動麻痺によって随意運動障害が起こってしまった場合には随意運動を促していく必要があります。繰り返しになりますが、だからpassiveでの運動ではなくactiveでの運動によって筋収縮を促すことが重要となります。
何度も繰り返しになりますが運動麻痺に対しては『自分の意思通りに空間的位置変化させること』が非常に重要なポイントとなることを考えて治療にあたっていくことが大切だと考えています。
★臨床においては何を評価するのか?
ここまで一つ一つの言葉について分解してきました。その中である程度運動麻痺に対するイメージは変化してきたのではないでしょうか?
そして、新たな疑問が生まれてくると思います。それが『何を評価するのが良いか?』という疑問が沸いてきそうです。
そして、ぼく自身もずっと下記のような事ばかりを評価していたように思います。
この考えが間違っているということ言いたいのではなく、そこだけでは情報として少なすぎるのが問題だと感じたからです。
だから、下記のような現象に陥ってしまうのだと考えられます。
先ほどの運動麻痺においては随意運動を促すことが一番の治療となるとお伝えしてきましたが、臨床上は上記のようになっているのが現状だとぼく自身は感じています。
なので、Passiveでの運動は運動麻痺に対する治療としては優先順位が非常に低いことが想像できます。
だからこそ、関節が動くかの有無が一番ではなく、筋肉がピクッとなることを評価として見逃してはいけないと考えます。
上記のことを踏まえた上で評価することで、また新たな発見につながることも大いにあるので意識してやってみましょう。
今回は運動麻痺・随意運動についてお伝えしてきましたが、その他の言葉に関しても同様の整理が必要になってきます。当たり前に使っている言葉ほどあいまいで自分たちが使いやすいように使っていることが多いです。
なので、また自分自身でも言葉の整理をすることをお勧めします。
次回は運動麻痺の治療に関してお伝え出来たらと考えています。
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