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月刊かがくのとも7月号 『はっぱのかくれが』

☆mediopos-2395  2021.6.7

夏の野山に行けば
虫たちがたくさん観察できる
その見方を学ぶと
それまで気づけないまま
見過ごしていたものを
驚きをもって見ることができるようになる

たとえば今月の「かがくのとも」では
「はっぱのかくれが」が特集されている

とりあげられている「はっぱのかくれが」は
チョウの巣のことだけれど
そのじっさいを知ることで
チョウにかぎらず
たくさんの虫たちの生態を観察するための
たいせつな見方を学ぶきっかけにすることができる

日本には240種余りのチョウがいて
そのうちの3分の1以上が
幼虫時代に何らかの形の巣を作るのだという

その巣はいったいどこにあるのかというと
「はっぱ」を隠れ家にして巣にしていて
その巣の形や作り方は実に様々のようだ

チョウは種によって特定の食草があるので
そのはっぱを使って巣をつくるけれど
その巣の使い方も様々

幼虫のときだけ隠れ家にするチョウもいれば
大きくなると巣をつくらなくなるチョウもいる
巣を隠れ家兼食物としているため
巣の中が糞でいっぱいになるチョウもいれば
食餌のときは巣から出てまた巣に戻るように
巣を家専用に使うチョウもいる

種ごとに異なった様々な生態を知るにつけ
なぜそんな生態を選んで生きているのだろうと
興味は尽きることがない

虫たちは種それぞれごとに
似た生態を持っている集合的な存在だけれど
人間の場合は現在のように個別化が進むと(笑)
ひとそれぞれが異なった生態をもって
生きることが多くなるようだが
(家をつくるつくらないをはじめ人それぞれ)
まだ個別化が進んでいない人間もいて
生まれ育った環境や教えられたことそのままに
ほとんど似たようなかたちで生きていく人もいたりする

それはともかく
身近な野山に行くだけで
さまざまなものが豊かに観察できるとはいうものの
それを注意深く観ようとしないかぎり
その姿を実際に観ることはできない

それはどんなことについても言えることで
観ようとしないかぎり
世界はその姿を見せてくれることはない
もちろんじぶんの姿も同じことだ
鏡に映し観方を学ぶなりして観ようとしなければ
「あちこちに むしたちが
 かくれている」にもかかわらず
「はやしに やってき」ても
「だれもいなように みえ」ることになる

■月刊かがくのとも7
 井上大成・ぶん 松山円香・え
『はっぱのかくれが』
 (福音館書店 2021.7)

「はやしに やってきました。
 だれもいなように みえますが、
 じつは あちこちに むしたちが
 かくれているのです。」

「はっぱのうらを のぞくと
 みどりいろの むしが かくれていました。
 ムラサキシジミの ようちゅうです。
 やわらかい はっぱのさきを
 きりとるように たべて
 のこった ぶぶんを まるめています。

 ようちゅうは からだから
 あまい みつを だして
 アリを さそいます。
 だから ようちゅうの
 まわりには いつも アリがいます。
 もし てきの ハチに みつかっても、
 アリが ようちゅうを
 まもっているので
 ハチは ちかづけません。」

(井上大成「家を建てるチョウの幼虫」より)

「「昆虫の家」と聞いて、みなさんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか?
 軒下にぶら下がったアシナガバチの巣を知っている人や、地面の巣穴から出入りするアリを観察したことがある人もいるでしょう。では、「チョウの巣」を見たことのある人はどれくらいいるでしょうか。教科書にも登場し、チョウの代表のようなモンシロチョウやアゲハチョウは巣を作らないので、あまり知られていないかもしれませんが、日本にいる240種余りのチョウのうちの3分の1以上が、幼虫時代に何らかの形の巣を作ります。
 チョウは美しく優雅に舞う正中にスポットが当たりがちですが、それは卵から生まれた幼虫が、餌を食べて大きくなり、蛹を経てようやくたどりついたもので、その間に幾多の危険を乗り越えてきた姿です。武器も持たず飛ぶこともできない幼虫たちは、天敵から逃れるために様々な工夫をしています。緑色の保護色で見つかり難くしているものもあれば、敵が少ない夜に活動するものもいます。臭い匂いを出すものや、体に毒を蓄えて食べられないようにしているものもいます。そして、巣を作ってそこに隠れることも、敵への対抗手段の一つなのです。
 巣を作る習慣はグループによって偏っていて、例えばアゲハチョウの仲間には巣を作るものはいませんが。セセリチョウの仲間はみな巣を作ります。
 巣の形は実に様々です。イチモンジセセリやチャバネセセリは、細い葉を丸めたり集めたりして、糸でくっつけた筒状の巣を作ります。ダイミョウセセリは、葉の端に切れ込みを入れて折り返し、中に隠れています。ミドリシジミやアカタテハ、アオバセセリなどは、餃子や袋のような形の巣に住んでいます。エゾシロチョウは、糸を張り巡らせた巣を作って集団で暮らしています。スミナガシやコミスジは、巣の欠片をカーテンのように吊します。
 巣の使い方も様々です。セセリチョウの幼虫は大きくなっても巣を作りますが、スミナガシは大きくなると巣を作らなくなります。ムラサキシジミやイチモンジセセリは、巣の一部を食べてしまう。つまり巣を隠れ家兼食物としていますが、ダイミョウセセリは巣から出て近くの葉を食べてまた巣に戻る、つまり巣を家専用に使います。アオバセセリは糞を外に弾き飛ばすので巣の中はきれいですが、ヒメアカタテハの巣の底は糞でいっぱいです。
 成長に伴って巣を作りかえていく幼虫もいます。大きなダイミョウセセリの巣の近くには、小さい頃の巣が見つかるでしょう。アオバセセリの巣を開いて壊しても、幼虫はすぐに糸を使って元通りに修理します。(・・・)チョウの幼虫は、ハチやアリに負けないくらい立派な建築家なのです。皆さんが幼虫だったら、どんな家を建てるでしょうか?」

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