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「指名検索×ヒット商品を分析する」〜ピクミン篇〜



この度、ヒットしている商品やトレンドをノバセルならではの視点で語るコラム「ノバセル式 インサイトの見つけ方」を開始することになりました。執筆を担当させていただきます、ノバセルの戦略プランナー青山碧花《あおやまみか》です。

◆「自己紹介」

青山碧花(あおやまみか)/戦略プランナー @aoyama_mika_

2011年女性向け恋愛ゲームのゲームプロデューサー(3年)、広報・宣伝部(3年)を経験後、ふるさと納税事業会社で広報・宣伝部に転職。2018年ノバセルの創業メンバーとして参画。「指名検索データ」から「本音」を読み解き、指名検索を伸ばす、コンセプトを見つけ出す戦略プランナー。プライベートでは、2021年より「星野リゾート全制覇」に挑戦中。仕事と旅の両立に日々奮闘中✈ 

<主な支援実績>
・株式会社オプテージ「mineo」
・株式会社ビーケージャパンホールディングス「バーガーキング」
・株式会社 asken「あすけん」


▼昨年、会社帰りの目黒駅で、「家、ついて行ってイイですか?」に声を掛けられ出演する奇跡の出来事がありました。

引用:「家、ついて行ってイイですか?」

放映時間10分で、”星野リゾート”の指名検索を爆増させることに成功。

”星野リゾート全制覇を目指すOL”のnoteをきっかけに、5日間の密着取材のTV番組からのオファーも。

引用:Tver

星野リゾートのための”節約生活”を取材していただきました。


引用:Tver


▼宜しければこちらもぜひお時間ある時に。


◆「コラムをはじめるきっかけ」


弊社代表の田部が「指名検索マーケティング」という本を執筆させていただきました。このメソッドをベースに、マーケティング戦略を策定しているのが、戦略プランナーの仕事です。本当は具体的な事例を元に色々お話しできるのが一番なのですが、なかなか全ての事例をお見せするのは難しく、どうにか「ノバセル式マーケティング戦略」のノウハウ、戦略を考える際の思考の流れみたいなものをお話しできないか?と考えまして、ヒットしている商品やトレンドをノバセルならではの視点で語るコラムをはじめてみることにしました。

“マーケティング戦略”とは?みたいな堅苦しいものではなく、もっとラフに“ヒット分析”を軸に、エッセイのように日常とリンクさせた記事を綴っていきます。気軽にたのしんで読んでもらえると嬉しいです。


◆「ピクミンのヒット分析」


第一回は、大ヒットゲームの「ピクミン」を分析していきます。


「ピクミン」のぬいぐるみをサンタさんに頼んだ6歳の甥っ子

クリスマスに6歳の甥っ子が、ピクミンのぬいぐるみ5匹をサンタさんに貰っていた。サンタさんに聞くと、入手がとても大変であらゆるサイトを隈なく探し、クリスマスまでに届くかどうかヒヤヒヤだったらしい。「甥っ子がピクミンにハマっている」という最新情報を入手し、年末年始に自分からも何かプレゼントして甥っ子を喜ばせたいと思った私は、速攻”ピクミン_グッズ”で検索しまくった。母である妹から、「ピクミンのグミが人気で全くないらしく、もし見つけたら息子が喜びます」とLINEがきたので、すぐに「ピクミン_グミ」で検索したら、あらゆるネットショッピングモールで価格が超高騰していた。なんとか購入出来そうなサイトを見つけてカートに入れたが、発送日はなんと2月頭。確かに検索ワードのサジェストで、「ピクミン_グミ_どこで売ってる」 「ピクミン_再販_いつ」があったのは気になっていたが、ピクミンの人気は想像を超えていた。悔しい。興味本位でYahoo! JAPANのDSIのデータを見て、ハッとした。

 ※出所:ヤフー・データソリューション DS.INSIGHT
※エリア:全国
※期間:2023/1/30~2024/2/4
※指名検索数は推計値であり、Yahoo!検索での検索実数ではない

「ピクミン」を検索した人が同時に検索していたもの

同時検索の重複率の多いキーワードに、「ピクミン_グミ」

まさに、私の検索ワード。私はピクミンのゲームを探していたわけではなく、プレゼント用に、「ピクミン_グミ」を検索していた。やはり社会現象になるほどのヒット商品というのは、ゲームに興味のある人だけでなく、ゲームそのものには興味がない人まで巻き込んで、関心を惹くことなのだと、改めて実感した。それにしても凄い。ピクミンのグミで甥っ子を喜ばせる作戦は延期になってしまったが、サンタさんからもらったぬいぐるみ熱はまだまだ高く、甥っ子は楽しそうにそれぞれ5匹のピクミンの色ごとの違いを私に教えてくれた。「紫は力持ちだから、これ持ち上げられて、白は毒があるから、プゥゥーーーンって死んじゃうよ。」と。 聞きながら、「あれ?それ知ってる」と、記憶の奥の奥の引き出しに何かが入っている気がした。あの歌だ。

「ピクミン」を語るのにかかせないあの伝説のCMソング

「♪赤ピクミンは火に強い〜〜紫ピクミンは力持ち、白ピクミンには毒がある。」

ピクミンの初代の発売は、2001年。私の頭の中にリフレインしていたのは、中学生の時に聞いたピクミンのTVCMソング。特徴的な歌声とメロディーに、教室でみんな歌っていた。私もたぶん歌ってみたことがあるから、歌詞を鮮明に覚えている。ちなみに私はピクミンのゲームを全くプレイしたことがない。甥っ子がNintendo Switchで「ピクミン4」に興じ、横で見ていた時も「♪引っこ抜かれてあなただけについていく〜今日も運ぶ、戦う、増える、そして食べられる」が記憶にあったので、「あ、ピクミンってほんとに大量についてきて、増やして食べられるゲームなんだ」と歌とリンク。遊んだことがないのにピクミンのゲームの概要を把握してる自分が面白かった。マーケティング調査で取る、「ブランド認知」と「サービス内容認知」でいうと、私はピクミンを体験したことも調べたこともないのに、ブランド認知だけでなく、サービス内容認知もしていたことになる。このサービス内容認知までされるクリエイティブを作ることは容易いことではない。20年記憶に残る、非常に素晴らしいCM。このCMソング「愛のうた~ピクミンCMソング」はCDとして発売もされオリコンランキングに入るレベルの大ヒット。

「ピクミン」のCMソングは社会現象になったのに売れなかったゲーム

しかし、それと相反するようにゲームが難しく、歌の世界観とのギャップもあり、売上が伸びなかったらしい。

それでも開発チームはピクミンが面白いことを信じ、この心を惹きつけた曲とピクミンのキャラクターの可愛さを信じそこで「ピクミンのIP」の強化をし、ゲームとは別のピクミンの何気ない日常を描いた短編アニメ「PIKMIN Short Movies HD」や、スマホの位置情報を使ったウォーキングアプリ「PIKMIN BLOOM」、ピクミンのあの歌の世界観の可愛さを推し出した。その長い期間の下地があった上での、「ピクミン4」のリリース。

「ピクミン4」シリーズ最大のヒット、検索ボリュームも過去最高へ

ピクミン4の売上本数は2024年2月発表時点で333万本

https://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2024/240206_3.pdf

「ピクミン」シリーズとして過去最高の累計販売本数に達し、地域別にみても、すべての地域で過去タイトルを上回る初動販売となったそう

https://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2023/231108.pdf


Googleトレンドの数字を見ても、新シリーズの発売ごとに、大きな山が出来ているが、ピクミン4の発売のタイミングで、過去の検索ボリュームの3倍以上の伸び。

改めて先ほどの「ピクミン」の時系列キーワードを見てみると、「ピクミングミ」「ピクミングッズ」「ピクミンぬいぐるみ」「ピクミン折り紙」が、「ピクミン4攻略」よりも検索が早いのも特徴的だ。

 ※出所:ヤフー・データソリューション DS.INSIGHT
※エリア:全国
※期間:2023/1/30~2024/2/4
※指名検索数は推計値であり、Yahoo!検索での検索実数ではない
 ※出所:ヤフー・データソリューション DS.INSIGHT
※エリア:全国
※期間:2023/1/30~2024/2/4
※指名検索数は推計値であり、Yahoo!検索での検索実数ではない

他のロングランヒットのゲームタイトルと検索してみても、「ピクミン」だけ女性の割合が70%と10%比率が高い。

 ※出所:ヤフー・データソリューション DS.INSIGHT
※エリア:全国
※期間:2023/1/30~2024/2/4
※指名検索数は推計値であり、Yahoo!検索での検索実数ではない

年代を見ても、「ピクミン」初代シリーズを知っている、30代以上の割合が80%を占めている。やはり、いつものゲームのターゲット層とは異質の動きが、性別・年代別のデータからも見えてきた。あの当時、指名検索は伸びたが売り上げは伸びなかったピクミンが、商品の作り方・見せ方の改善で、“指名検索”も伸び、売上も伸びる最高の結果に。20年記憶に残るCMソングも、やっぱり同時に検索されている。

「ピクミン」の事前検索から見えてきたインサイト

”卒園式 服装 ママ”、”男の子髪型”、”ランドセル”から、卒園を迎える男の子ママが中心となり検索していることが推測できる。またピクミンの検索に至るまでは、「マリオ」「ポケモン」「スプラトゥーン」「星のカービィ」「マイクラ」「こびとづかん」などあらゆるキャラクターが特徴的なゲームの検索。さらにゲームだけでなく「折り紙の折り方」「スライムの作り方」「あやとり」「テープボール」「アクアビーズ」「アイロンビーズ」など様々な遊びの検索もしている。子どもがハマったゲームキャラクター、好きそうな遊びを隈なく検索し続けている。幼稚園や保育園でお友達から聞いてどんどん情報を吸収していく年代ならではの、ブームがどんどん変わっていく感じが検索行動にも顕著に現れている。

「ピクミン」の事後検索から見えてきたインサイト

事後検索も、「ピクミン」の熱は冷めることなく、ひたすらに「ピクミンのグッズ」や「光ピクミン」「岩ピクミン」「オッチン」「オリマー」とピクミンの関連ワードの検索だけを集中して続けている。検索の仕方からもピクミンに対する親子の熱量がひしひしと感じらえる。ちなみに、「ピクミン4 攻略」の検索ワードは男性の割合も4割と多めで、ゲームの攻略には、パパも参戦している可能性が高い。「マリオワンダー」のキーワードが検索されるまでの約2か月間、ピクミンに家族でハマり続けている。これから小学生になってしまい、親と一緒に遊ぶ時間もどんどん減っていく。そんなかけがいのない“尊い”今を、ピクミンが繋いでくれている。私もそろそろ、甥っ子のためのピクミングミが届く。お正月、「羽ピクミンのお人形をください」と神様にお願いしていたので、今度はお誕生日プレゼントに「羽ピクミン」の検索をそろそろはじめなければ。

ピクミンごっこで、”オッチン”役をやらされる私と、”オリマー”役の甥っ子。


◆「最後に…」

このように、“日常のふとした気づき”をフックに、「検索データ」から心の流れを読み解き、インサイトフルなマーケティング戦略を作るのが得意です。ぜひ「検索データ」も分析して欲しい。新しい切り口のマーケティング戦略を考えて欲しい。など新規のご依頼も随時受けております。
ノバセル」までお問合せください。


執筆:青山碧花(あおやまみか)