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【小説】四つ星男子のセンセーション!(1)

作品情報

種類   長編/一次創作小説
状況   連載中
ジャンル   青春小説・学園モノ(ファンタジー有)
注意   若干の残酷描写有
著者  
詞月希
表紙イラスト   詞月希
その他投稿先   Nolaノベル

あらすじ

「お前は、星が見つけた希望の子だ」
腐れ縁四人が、周りの大人たちに言われ続けた言葉だ。
生まれながらに星の加護を受け、魔法を扱うことのできる四人は、国中の憧れである『魔法騎士』のトップで、『四英星』と呼ばれている。

六花の星、コルンバ。
黍嵐の星、アリエス。
陽炎の星、アルフェラッカ。
芽吹の星、レオ。

そんな四人が最期に望んだのは、四人の軌跡を形にすることだった。
しかし、その願い虚しく四人は戦死。
四人は転生し、男子高校生デビューを果たす。
再び集った四つ星は、今度こそ望みを叶えるため、高校生活を謳歌する――!

登場人物紹介

・レオ

四英星が一人。冷静な主人公。左に流した黒髪に緑の瞳。

・コルンバ

四英星リーダー。穏やかな性格。少し長めの銀髪に紫色の瞳。

・アルフェラッカ

四英星のムードメーカー。バカ。毛先を遊ばせた赤髪に桃色の瞳。

・アリエス

四英星のシリアス担当。ちょっとバカ。黒髪を後ろで縛り、前髪を隠している。赤眼。

プロローグ

 どこまでも広がる星空は、油絵具を塗り重ねたキャンバスのようだった。
 青と黒のグラデーションが美しい夜空は、まさしく神の描いた名画と言えよう。
 ちりばめられた星々は、光り方も、大きさも、それぞれ違う。同じ星は、ひとつとしてないのだ。
 そう、人間と同じように。

「星が綺麗だ」
 王都にある酒場のテラス席。貸切なのに騒がしい飲み会の席でふと呟くと、一緒に飲んでいた三人が、揃って俺を見た。

「めっずらしい! 熱でもあるんじゃねえのぉ?」
 と、真向かいのテーブルから身を乗り出す、整った顔の赤髪の男。
「同意」
 赤髪の隣の、前髪で左目を隠した、黒髪の男は、酒を口に運びながら頷いた。
「あはは、酔ってるんじゃない?」
 もう一人の男は、俺の横で、銀髪の毛先を弄び、笑っている。
 
「酔っている訳ではない。俺とて星を愛でるときもあるさ」
 失礼だな、と眉をひそめ、酒を煽る。すると、銀髪の男が言った。
「レオ、もしかして、考え事をしていたんじゃない?」
「……どうしてそう思ったんだ、コルンバ」
 コルンバはふっと微笑んで、満天の星空を仰いだ。輝く沢山の星々を、その穏やかな瞳に、ひとつひとつ映して。
「私たちは、星のお眼鏡めがねにかなった人間だから。自分自身そうだけど、何か悩みがあると、無意識に星を見るんだよね」
 その穏やかな瞳のピントを、今度は俺に合わせる。
「だから、もしかして、同じなんじゃないかって。君が星をわざわざ見上げるなんて珍しいからね。ま、ほとんど勘に近いけど」
 そこまで言い切って、ニヤリと片方の口角を上げた。自信満々な目線は、「そうでしょ?」と答えを求めているようだ。
 
「……悩み、という程のものではないよ」
 短くそう答えると、真向かいからおおッ、と歓声が上がる。
 俺は見世物じゃないんだが? と気持ちを込めて睨むと、わざわざ俺の席まで移動して、肩を組んでくる。
「レオちゃん、悩みがあるのぉ? おにーさんに相談してみなぁい?」
「アルフェラッカ、いい加減にしろ。殴るぞ」
 アルフェラッカは、整った顔を両手で覆い、「きゃあこわぁい」と気色の悪い声をあげる。そのまま席に戻り、静かに酒を味わっていた隣の男の背に隠れた。
「アリエスぅ、助けてえ、殴られるぅ!」
「うむ。大丈夫だ、アルフェラッカ。我もレオに加担してキサマを殴るから」
 言葉通り、拳を握ってみせるアリエス。冷静に見えるが、頬は真っ赤に染まっていた。
 腐れ縁四人。いつも通りの光景だ。
 
 俺たちが生まれ育った故郷、クレセント王国は、小国ゆえに、他国から狙われることが多々ある。
 そんなクレセント王国を護るのが、俺たち『魔法騎士』の使命。
 星の加護を受け、生れながらに“魔法”を扱う力を持った者を、人々は『魔法士』と呼んだ。
 魔法士は、この小国へ降りかかる危機に立ち向かうため、『魔法舎』にて修行を積み、一人前の魔法士になると、国を支える仕事に就く。俺たち魔法騎士は、魔法士の中でも、王国を最前線で護り抜く戦士だ。
 俺たち四人は、幼少の頃から、魔法騎士の中で『四英星よんえいせい』と呼ばれるようになった今へ至るまで、ずっと共に過ごしてきた。

 どんな強敵をも凍てつかせる四英星リーダー、六花りっかの星、コルンバ。
 命をも散らす大鎌使い、黍嵐きびあらしの星、アリエス。
 狙った獲物は一人残らず焼き尽くす、陽炎かげろうの星、アルフェラッカ。
 
 三人は、俺が唯一信頼している仲間だ。

「それにしても、四英星屈指の剣士、芽吹めぶきの星のレオ様が、悩みを持つなんてね。どんな悩みなのさ?」
「ああ、それは我も気になっている。水臭いぞ、レオ。我等に聞かせろ」
「そうだそうだ! とっとと白状しろぉ!」

 五月蠅うるさい奴等が五月蠅い顔で五月蠅く聞いて来るから、思わずため息を吐く。しかし、このまま言わないでいると更に五月蠅くなるだろう。
 深くため息を吐き、話を切り出した。

「……今後のことだ」
『今後?』
 三人の声がシンクロする。小さく頷き、目線を王都に移した。

「今、この国の外では戦争まがいの衝突が起こっているのを知っているだろ? いずれこの国も巻き込まれ、本当の戦争が始まるかもしれない。そうなれば、平和にお前らと酒を飲むことも出来ないかもな、と考えていたんだ」
 夜の王都は、活気に満ち溢れている。そんな城下町を見ながら、話を続けた。
「……平和に馬鹿騒ぎができる今のうちに、何をやるか。それを考えていただけだ。下らないだろ?」
 目を、三人に戻す。それぞれ、真剣な眼差しを俺に向けていた。
 しかし、全員否定はしない。起こりうる話だ、というのは、魔法騎士トップの四英星である三人は解るのだろう。
 
「……じゃあさ、俺たち四英星が、いつの時代になっても語り継がれる準備、どうよ」
 アルフェラッカの呟きに、いち早く反応したのは、隣のアリエスだった。
「同意。我等の堂々たる伝説を形にするのだな? さすれば、コルンバ、レオ。お前たちの言葉遊びも活かせるのではないか?」
 成程、確かに俺たち二人は、詩を吟ずることを趣味としている。コルンバは、目を輝かせ、頷いた。
「詩人としての活躍にも興味があったんだ。それはいいかも」
「うん、悪くない」
 各々返事をする。その顔は、どんなときよりも生き生きとしていた。
 そして、「決まりだね」と呟き、リーダーが全員に目配せする。

「四英星、行くぞッ!」
了解イエッサー!』

 空の星々にも届くように響かせる、お決まりの掛け声。
 それは、俺たちが巻き起こす、馬鹿騒ぎセンセーションの始まりの合図だ――。

次回予告

「四英星」として名を馳せた星の子は、男子高校生として、再び生を受ける。
――前世での記憶と、引き換えに。
『四つ星男子のセンセーション!』、第1話は、4月27日、更新予定です。

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