環境音、教室、音割れ。

 教室の喧騒は、私にとってナイフのようなものだった。6時間目の後、掃除を終えてから帰りの会までの時間は、中学3年生の頃の私にとってあまりに苦しい、地獄のような時間だった。
 いつだって何か騒いでいる男子がいた。かん高い声で喚くように喋る女子がいた。そして、それらを意識から締め出すことができなくなった私がいた。受験のストレスなのか、他に原因があるのか。甲高い声も、騒いでいる声も、ずっと安物のイヤホンで音楽を聴いているような、音割れのような不快感に襲われる原因だった。
 いつしか、帰りの会までの十分ほどを特別教室棟で過ごすようになっていた。そうして一ヶ月経っただろうか。気がついたら人とうまく喋れなくなっていた。
 人の顔が見れない、目を合わせて話せない、どうしても早口になってしまう、相手の話に集中できない、手がソワソワする、不快そうな表情になってしまう。
 あの時あの音割れに向き合っていたら、もっと人とうまく喋れただろうか。

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