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ため息ではなく、前向きな深呼吸ができる場を僕がつくった理由

nowhere inc.代表の酒井大輝です。

この記事では、nowhere inc.としては最初の事業であるBUTTER tokyo創業ストーリーを綴ってみようと思います。ミュージシャンとしての活動を終えてから今日までの日々を、赤裸々に吐露してみました。

というのも、先日の5月1日にBUTTER tokyoは一周年を迎えました。あっという間に駆け抜けた一年間でしたが、今日まで支えてくださった皆様、本当にありがとうございます。

そんな思い入れのある BUTTER tokyo の軌跡です。ついつい気合いを入れすぎて、約5000文字ほどの大作となってしまいましたが、最後まで読んでいただけますと幸いです◎


2020年、夏

学生時代から10年以上費やした "音楽活動" に区切りをつけたばかりの僕は、毎日が虚無だった。コロナ禍による外出自粛も相まって、一人暮らしのマンションで塞ぎ込み、ただただ絶望し続けた。

今までの人生は、音楽こそが自分のアイデンティティだった。ただ、これがラストチャンスだと意気込んで結成した音楽ユニットの解散もあり、また一から "日本を代表するアーティストになる" という夢を一心不乱に追いかけるだけのパワーは、30代の足音が近付いてきた僕にはもう残っていなかった。

でも、なぜかずっと続けてきた "音楽活動" を辞めることに対してはポジティブだった。音楽はそこに在るもの。辞める辞めないの次元で語れるようなものではない。またいつか、歌いたくなったら歌えばいい。

「これから何をしようかな。」
自らの意思で、自分のアイデンティティだったはずの音楽を手放した僕だったのに、色んなことを始めてみては「これじゃない。」とすぐに辞めてしまう無機質な日々を過ごしていた。


2020年、秋

外出自粛ムードも落ち着き、肌寒くなってきた秋頃、共同創業のパートナーとなるタイキと会うことになった。

彼のことは人間的にとても尊敬していた。優しさあふれる言葉選び、他者への想像力、そして、歩んできたキャリアが自分と正反対だったことによるビジネス感覚。なぜ彼はこんなに達観してるんだろうと、会うたびに惹かれていったのを覚えている。

久しぶりに会った彼は僕を肯定してくれた。何もかも音を立てて崩れていった僕の人生を面白がってくれた。

コロナによって、今までの当たり前が当たり前ではなくなった世界において、何を信じればいいのか。答えのない問いに悩み続けていた僕だったけれど、彼とならお互いの歩んできた人生を分かち合い、補い合い、共通のビジョンのもと歩んでいける。気付いたら僕はタイキに「一緒に仕事しようよ。」と声をかけていた。

「だいきくんと一緒にやるなら、場づくり一択だと思うんですよね。」

ほんの些細なきっかけだった。二つ返事で具体的な事業を提案してきたタイキとのその会話こそが、これから先、人生をかけて挑戦していくことになる場づくり事業の最初のプロジェクトであるBUTTER tokyoの始まりだった。

始まりは2020年10月28日


2020年、冬

そこからは怒涛だった。初の場づくり、初の店舗の立ち上げ。右も左も分からない中、ガムシャラに走り回った。

思い返せば、この頃からモノクロだった僕の毎日が少しずつ色づいていった。いつだって僕の原動力は人だ。好きな人と共に走ることこそが僕の全てなのだ。改めてそんなきっかけをくれたタイキには心から感謝している。

初の場づくりだったが、やりたいコンセプトだけは構想があった。詳しくは店舗立ち上げ時のクラウドファンディングに書いてあるので割愛するが「とける」という体験に価値をおいた店作りを進めた。

illustration by 河野心希


人生とは本当に分からないものだ。半年前まで歌を歌っていた僕が、場づくりに没頭しているなんて、思いもしなかった。

また、この時期はとにかく資金調達に奔走していた。自分の貯金を全てぶち込んだとしても、理想の店舗を作り上げるには初期費用が足りないのだ。店舗を作るのにはこんなにお金がかかるのかと愕然としながらも、もう身も心も走り出してしまっている。なんとか形にする道を模索していた。

そんな時も周りの仲間が助けてくれた。yutoriのカタイシやカズマを始めとした数人が、ダイキたちのためならとお金を融資してくれた。なんて感謝を伝えたらいいのか。いつだって僕は人に支えられている。

そして、Art director/Graphic designerのシンキ、PR Designのキルタ、設計士のタムラさん、他店のシーシャ屋さんの方々のお力を借り、少しずつBUTTER tokyoは輪郭を整えていった。まだ何もない僕らを支えてくれた彼らへの感謝は一生尽きないだろう。叶うなら、これからも共に走っていきたい。

シンキによるBUTTER tokyoのロゴ初稿。今でもこの日の感動は忘れられない。
初期のBUTTER tokyoのパース。当初はシックな内装をイメージしていた。©️ttt architect


2021年、春

春になり、ついに施工が始まった。今までパソコンの中だけで描かれていた僕らの理想郷がついに形になっていったのだ。

毎日のように現場に訪れては、店舗の変わりゆく表情に興奮していた。同時に、一つの店舗を作り上げるには、こんなにもたくさんの人の力があって出来上がっていくんだなと、起こしている波の大きさに覚悟が決まっていった。

大工さん。いつの日かこんなレベルでDIYができるお父さんになりたい。
BUTTER tokyoのシンボルである真ん中のモルタルをつくってくれた左官屋さん。
電気の配線を整えてくれた整備士さん。


店舗が形になっていく頃、僕らは店で働いてくれる仲間探しを進めた。店舗経営において、いつだって主役はオーナーではなく、店に立つスタッフだ。尊敬する経営者のそんな言葉を胸に、僕らは仲間を探し回った。

そこからもドラマの連続だった。当時まだ中学生だった頃から繋がっていたカズヤ、3カ国語を操る帰国子女のケント、バリキャリ女子大生のみさきちをはじめ、あれよあれよとユニークな仲間が集ってくれた。

photo by Kaito Shibata


自分たちが好きで立ち上げた店を愛してくれて、ここが居場所だと語ってくれるスタッフの存在は、僕にとって初めての守るべき存在で、大袈裟ではなく彼らのためならいくらでも頑張ることができた。また、そんな彼らのおかげで自分をさらに肯定することもできた。まだまだ未熟なオーナーだが、日々彼らに成長させてもらっている。

ここで言うのは照れくさいけれど、僕の初めての店舗の立ち上げに力を貸してくれてありがとう。10年後も20年後も、この頃の思い出話を肴に、焚き火を囲んで、シーシャを吸える関係でいたいと思う。

そして、2021年5月1日。BUTTER tokyoは数日のプレオープン期間を経て、ついにグランドオープンを迎えた。

BUTTER tokyoのキャッチコピー
出勤時間前に自主的に店舗改善のために集うスタッフたち
学生時代の音楽仲間
BUTTER tokyoで迎えた初の自分の誕生日
カズヤと父さんと店でセッション
大切な音楽仲間たち
銭湯とシーシャの境界線を溶かすことを目的としたイベント「U.」
クリスマス装飾ver.
大切なスタッフであるケント・ひなの・タイガの卒業式
社員第1号である店長カズヤの入社式
初の屋外イベント@福岡


…時は経ち、2022年、春

ついにBUTTER tokyoは一周年を迎えた。ありがたいことにオープンしてから全月黒字かつ、4月からは初の社員を雇用することができた。また、先日の会社設立リリースの通り、新たなメンバーが仲間になってくれた。

僕だけでは足りていない部分を補ってくれる才能あふれる大切な仲間だ。大好きな彼らと働き続けたいという想いが、僕の毎日の原動力になっている。何度も言うが、僕の原動力はいつだって人なのだ。

photo by Norikazu Hashimoto


思い返せば、二年前の春に僕は "音楽活動" を辞めて、無機質な日々を過ごしていた。当時、応援してくれていた方を傷付けてしまっただろう。何よりずっと夢を叶えられると信じていた過去の自分を裏切ってしまっただろう。

でも、大事なモノを捨てると、そこにスペースができる。そのスペースに新たな経験を投入すると、交わるはずがないと思っていた過去の点と現在の点がつながり、線になり、それが知らぬ間に面になっていた。

20代の僕は、音楽を通して自分を表現していた。これからの僕は、場づくりという五感を震わす体験を通して、自分を表現していく。選んだ道は、いかようにも正解にできるのだ。過去の自分を裏切ってしまったと思っていたけれど、間違ってはいなかった。

改めて、ここまで一緒に歩んできてくれた仲間たちと、BUTTER tokyoを好きでいてくれるあなたに感謝を伝えたい。本当にありがとう。

これから先、落ち込むこともあるだろう。でも大丈夫。僕には「人生に心地よさを。」もたらしてくれる会社と、大切な仲間がいる。そしていつの日か、これを読んで小っ恥ずかしい気持ちになっているあなたとも、一緒に働いているかもしれない。笑

二年前、モノクロな毎日を過ごし、くすぶっていた僕が、些細なきっかけで未来に向けて歩み始められたように、これを読んでくれた人に、ポジティブな想いが伝わったら嬉しい。改めて、BUTTER tokyoの一周年を迎えられたことに最大級の感謝を残し、この文章を終えたいと思う。

ため息ではなく、前向きな深呼吸を。

photo by hyogen


おわりに

希望に胸を膨らませ音楽活動していた日々、世界を旅する中でちっぽけな自分と向き合い続けた日々、夢を叶えられず自分は何もできない人間だと絶望し続けた日々。

どんな時も僕を肯定し、包み込んでくれたのは、そばにいてくれた仲間たちと、「本当の自分でいられる」と感じることができる居場所でした。今までの人生、たくさん与えてきてもらった分、今度はそんな仲間たちと一緒に、「自然体でいられる」「心地よい」場をつくり続けることこそが、あの時支えてくれた人たちへの恩返しでもあり、自分自身の人生に心地よさを生み出すことにもなるのだと信じています。

さて、そんなBUTTER tokyoの軌跡を綴ったわけですが、明日の5月7日より一周年weekを開催いたします。詳細は本日以降にBUTTER tokyo公式SNSにて随時更新予定なので、ぜひ見ていただけますと幸いです◎

BUTTER tokyo「1st anniversary week」

■期間:5/7(土)~5/15(日)
■コンテンツ:❶来店者限定プレゼント企画 ❷限定ミックス ❸and more
■住所:渋谷区円山町28-8 第18宮廷マンション104
■電話番号:03-6416-4018 

Twitter:https://twitter.com/butter_tokyo
Instagram:https://www.instagram.com/butter_tokyo/

改めて、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。ぜひ、これを読んだあなたと、大都会・渋谷にある焚き火のあるシーシャ屋さん「BUTTER tokyo」で、共にシーシャを吸える日を楽しみにしています。

そして、まだどこにもないものを、今ここに、自らの手でつくり出していく。そんな事業を軸に邁進していく僕らにご期待ください。

nowhere inc. Founder & CEO /  BUTTER tokyo オーナー
酒井大輝

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