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散文日記「ナナフシは徹底してガリガリであって欲しい」

・会議中に仮装大賞の話になった。皆があまりにも仮装大賞についてぼんやりとした知識の応酬を決め込んでいたので痺れを切らして僕が一つ一つ正しい情報を放り込みながら軌道修正をはかっていたらまるで「仮装大賞フリーク」みたいなレッテルを貼られてしまい緩やかな屈辱を覚えた。あらゆるフリークの中でも仮装大賞フリークは滑稽すぎる。僕はバラエティ番組全般に造詣が深いだけだ。舐めないで頂きたい。

・そのうちの1人が「仮装大賞みんなで出てみたくない?」と言い出したけど、出てみたいねーみたいに軽くいなされてその会話は流れた。その一連の流れを見て、仮装大賞に会社のメンバーで出てる人たちのモチベーションって改めてとんでもないなと思った。わりとノリが良いウチの会社のメンバーでさえこんな感じに軽く話が流れていってしまうレベルなのに、えらい手の込んだ仮装作品を引っ提げて賞金掻っ攫っていく社会人チームはどんな結束力なんだ。毎朝朝礼で円陣でも組んでないと成立しないだろ。もしくはノリノリの社長と逆らえない社員の構図なのかもしれない。あの涙は「やっと解放される」の涙なのかもしれない。涙が顔のメイクで黒ずんでいるのはそういうメタファーなのか。その真実に気付いてしまった以上、私も貴方も、もう純粋な気持ちで仮装大賞を見ることはできないだろう。「○○でGO!」のネタを毎年やる三井さんだけを延々と見ていたい。

・この世は知りすぎてしまうと純粋に楽しめなくなることばかりなので気をつけなければならない。好きなことこそ深掘りしたくなるものだけど、どこで線引きし、その先をファンタジーとするかは自分次第だ。ハム工場の人はハムの加工工程を知っているからハムが食べられないという話を聞いたことがある(本当かどうかは知らないけど)。僕は子どもの頃からMr.ビーンのビデオをよく観ていて好きだったので、ローワン・アトキンソンがMr.ビーンを引退するときに「あんな幼稚なキャラクターをずっとやっているのはしんどい」的なことを語っていたのはなかなかにショックだった。ビーンは身体の芯までコメディアンであれよ!と叫んだ。

・トルコアイス屋の店員は普段からひょうきんであって欲しいし、銀だこの店員は普段から美味しく召し上がれることを願っていて欲しい。サザエさんは平場でも陽気であって欲しいし、藤木くんは平場でも卑怯であって欲しい。ナナフシは徹底してガリガリであって欲しい。サーターアンダギーは徹底してパサパサであって欲しい。森羅万象がそのキャラを徹底してくれることを願うばかりである。

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