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グラビア雑誌で脱ぐことを勝手に決められていた話。【ほんとうは、嫌だと言いたかった。】

私がまだグラビアや女優の仕事をしていた頃のこと。
ある日、事務所の社長(女性)から電話がかかってきた。

「(某有名グラビア雑誌)の袋とじグラビアが決まったよ。」

「え!嬉しいです!ありがとうございます!」

「その代わり…ね。露出の方はちょっと頑張ってもらうから。」

「…??」

「乳首を出すってことで、話つけてきたから。ヌード。もう決まったからね。」

なんとその乳首の持ち主である「私」のいないところで、
「私の乳首を全国誌で晒すこと」が決められていた。

社長からは

女優なら、ヌードができるくらい度胸があって当たり前。

本気で芸能界で活動していきたいなら、
脱ぐ覚悟があって当たり前よね。

そういう無言の圧を感じた。

ヌードグラビアの話をもらって数日間、私は悩み続けた。

当時私は、事務所での女優活動の他に、
個人でコスプレイヤーとして活動していた。

その中で
「ギリギリまで脱ぐけど、ヌードにはならないこと」
は私がずっと守ってきた砦だった。

当時、私は30代半ば。
そして胸が小さい。無名。

若くておっぱいが大きい女の子がもてはやされるグラビア業界で、正直そんなに需要があるタイプではない。

そんな私にようやく来た、全国誌のグラビア。これを逃したら、もう二度とこんなチャンスはないかもしれない。と思った。

でも自分の知らないところで決められた話に従ってヌードになるというのも、なんか騙されて売られたみたいでモヤモヤする。気持ちは揺れ続けた。

一番ショックだったのは、そもそも私がヌードになりたいかどうか、という「私の気持ち」が完全に無視されていたことだった。会社側が私をどう売るのかを勝手に決めていい「商品」のような扱いをされた気がした。

ぐるぐる考えたのちに意を決して、ヌードなしにしてほしい、と社長に伝えてみることにした。直接電話で言う勇気がなかったので、こんな感じの文章をメールで送った。

「雑誌でヌードになるということが私に相談なく勝手に決められていたことに、とても傷つきました。事務所からしたら私は商品かもしれないですが、モノではなく、心がある人間なのでどうしても色々感じてしまうし、自分の意思もあります。なんとか、ヌードなしの普通のグラビアにしてもらうことはできないでしょうか?」

社長にこんな感情的なメールを送るなんて今までの私ではありえなくて、送信ボタンを押す瞬間にひどく緊張したのを覚えている。

メールを読んだ社長から電話がかかってきて、彼女は、うーん、痛いところをつかれた、と言った。けれど、答えは「ヌードなしは難しい」だった。

うーん。事務所がOKを出したということは、
私もこの仕事を了承済みだ、と編集者も思っているだろう。

もう決まった企画に今更できませんと言うのは、
編集部にも迷惑がかかってしまう。

断るのは、

個人のワガママと思われるんじゃないか、
扱いにくいタレントだと思われるんじゃないか、
今後、仕事をもらえなくなるんじゃないか。

と怖くて、やめるとは言い出せなかった。

受け入れよう。と思った。

イヤなことを我慢する時に、
「感情をオフって感じないようにする」
のは私の得意技だった。

大丈夫、なんとかやり過ごせるだろう。
私は、仕事を受けることを決めた。

すぐに、編集部でカメラマンやスタッフを含めた打ち合わせがあった。

ほんとうはやりたくないんです、という気持ちはおくびにも出さずに、にこやかに和やかに打ち合わせを終えた。

グラビア撮影が終わって、写真が仕上がってきた。

写真に写った私は、怒りながら泣いてるみたいな、悲しいようにも反抗的にも見える、なんとも言えない表情をしていた。カメラマンとの相性もあり、100%前向きな気持ちではなかったのもあり、心を開ききれなかったそのままの私が、そこに写っていた。

それでも、コンビニや本屋で自分のグラビアが載ってる雑誌が売ってる!っていうことや、電車の中吊り広告に自分の名前が載ってるのを見た時は、すごく嬉しかった。

これをきっかけにもっと知名度が上がるかもしれない。

頑張ったかいがあった。そう思った。
グラビアアイドルとして、認められた気がした。

でもそれはたった一週間のことだった。

週刊誌は、新しい号が出たら
みんな前の号のことなんて忘れてしまう。

一週間後にはSNSのタイムラインでのお祭りムードも終わり、すっかり通常運転に戻っていた。

ヌードをきっかけにファンが増えるんじゃないかとか、他誌からもグラビアのお仕事がもらえるんじゃないかとか、そういう期待していたようなことは、特に何も起こらなかった。

ヌードになったことで知名度が上がったわけでもなかったし、フォロワーもほとんど増えなかった。そしてその後、グラビア雑誌からのオファーは来なかった。たぶん、アンケートの結果や売れ行きが芳しくなかったんだろう。

ヌードを全国に晒したのと引き換えに、
手元に来たのはたった「5万円」だった。

君のヌードの価値は5万円程度だよ。
そう言われた気がした。

断れない状況にして、脱ぐことを強要される事。
セクシー系の業界にはこういう事例は山ほどあると思う。

断ればいいじゃん、と思われるかもしれない。

でも、タレントが事務所にNOを言うことや、声を上げる事は

「仕事がもらえなくなるかもしれない」
「存在を潰されるかもしれない」

という恐怖に直結している。

だから私もなかなか言いたいことを言えなかったし、業界で頑張っていきたいと思う人ほど、声を上げにくい。でもこれって、恐怖政治じゃないか。

私たちは商品かもしれないけど、モノではない。
心がある。仕事を選ぶ権利もある。
やりたくないことにNOと言う権利がある。

当時は、相手の言うことを聞けない私がワガママなのかな?乳首を出すか出さないかなんて小さなことで、グダグダ言ってる私のプロ意識が足りないのかな?と自分を責めてた。

でも嫌なら嫌って言っていいんだよ!断っていいんだよ!だって私の体だもん!他の人に私の体を好きにする権利なんて、1ミリもない。


自分で脱いでる女なんだから、

他人が脱がせてもいい…

わけないだろ!!


私が「自分の意思で」自分の体を商品にすることと、
他人が、女性の体を商品にすることを「強要」するのは全然話が違う。


おれの乳首は、おれのもの!

エブリバディセイ!!

「おれの乳首は、おれのもの!」

怒っちゃいけない、と我慢してた、
相手よりも自分を責めてた、
当時の自分に伝えたい。

強要されたら、怒っていいんだよ。
NOと言うことは、ワガママじゃないよ。

自分の体をどうするか、あなたに決める権利があるんだよ。
あなたは、あなたの体を守っていいんだよ。

脱ぐことを強要されて、
辛い思いをする女性が少しでも減りますように。

自分の体をどう扱うかに関して
女の子本人の意思を尊重してもらえる環境に
なっていきますように。

祈りとラブをこめて!💝

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